第102回全国高校サッカー選手権徳島県大会には合同チームを含む27校が出場。注目の決勝に進んだのは昨年の王者・徳島市立と初の決勝進出を果たした徳島科学技術。連覇か、それとも初優勝か、両校の意地がぶつかり合った徳島県大会決勝を振り返ります。
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爽やかな水色がトレードマークの徳島市立。全国大会出場19回、県内では言わずと知れた超名門校です。伝統的な堅守速攻を基礎に最終ラインからつなぐスタイルの徳島市立ですが、今年はパスサッカーに更に磨きをかけ、誰でも、どこからでも点を奪える攻撃的な戦術も魅力です。
運動量が豊富な主将・笠原颯太選手(3年)や、攻撃の起点をつくる『チームの心臓』山座拓達選手(3年)らを中心に準々決勝と準決勝の2試合で計14点を奪いました。徳島市立OBでもある河野博幸監督の就任以降、11年連続の決勝進出です。
対するは情熱的な赤のユニフォーム・徳島科学技術。創部15年目で選手権県大会決勝は初進出ながら、新人戦では過去3度の優勝。昨年の県総体では準優勝し開催地枠でインターハイに出場するなど、着々と実力を伸ばしてきた有力校です。ともにドリブルが武器の森生成選手(3年)と藤井太志選手(3年)らを起点としたサイド攻撃が魅力。粘り強いサッカーで準々決勝と準決勝はともに逆転勝利で勝ち上がってきました。
曇天の中行われた徳島県大会決勝。試合序盤からペースを握ったのは徳島市立でした。細かく正確なパスで相手ゴールに迫りますが、徳島科学技術も堅い守備で攻め込まれる場面を凌ぎます。
試合が動いたのは前半10分。山口凜太朗選手(2年)のパスを最前線の鈴木悠哉選手(2年)が背中でトラップして抜け出し、キーパーも落ち着いてかわしてゴール。河野監督も期待を寄せる次期エースの鈴木選手が巧みなテクニックを披露して先制点を奪います。さらにその5分後、ペナルティエリア内でパスを受けた山座選手がチームに弾みをつける追加点を奪い2対0で前半を終えます。
後半も徳島市立が主導権を握ります。開始早々の後半1分、山座選手のドリブル突破から原水智弘選手(2年)が押し込み3点差とします。後がない徳島科学技術も26分、ペナルティエリア手前で森選手からパスを受けた藤井選手が左足を振り抜きますが、わずかに枠の外。攻勢を強めるも得点とはなりません。
徳島市立は32分に笠原主将が突破してダメ押しの4点目。アディショナルタイムにも2点を追加し、6対0で徳島市立が2大会連続20回目の全国大会出場を決めました。「1点でも取りに行く」と最後まで走り続けた徳島科学技術ですが、全国初出場は次回以降に持ち越しとなりました。
試合終了のホイッスルが聞こえると徳島市立の笠原主将は大きなガッツポーズとともに弾けるような笑顔を見せました。「勝てて良かった」と勝利を喜ぶ一方で、全国大会に向けて「まだまだ甘いところがある、チーム一丸となって修正していきたい」と意気込みます。
河野監督も「全国で勝つためにはシュート1本で1点取らないといけない」と厳しい評価。ベスト4という目標を掲げて臨んだ去年の全国大会では初戦で福島県の強豪・尚志に1点も奪えず敗れました。少ないチャンスを確実にものにすることが、徳島市立の飛躍のカギになります。過去最高成績は98回大会のベスト8。チームの悲願、初の『国立の舞台』を目指す徳島市立の初戦は12月29日、今夏インターハイ王者の茨城県代表・明秀日立と対戦します。
(取材・文 高校サッカー選手権民放43社/四国放送)
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