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【アジア予選 激闘の歴史③】ドイツW杯予選 ジーコジャパンを救った「アブダビの夜」

2019.08.29 公開

※このインタビューは2019年に行われたものです

 ドイツW杯予選。バラバラになりかけたチームの分岐点となった「アブダビの夜」の真相に迫る。

 2002年、自国開催となった日韓大会で初の決勝トーナメント進出を果たした日本代表。大会後、日本を快挙に導いたトルシエ監督の後任には、世界的レジェンドでもあるジーコが就任。中田英寿、中村俊輔、小野伸二、稲本潤一という豪華なMF陣は「黄金のカルテット」と呼ばれ、攻撃的なサッカーで2006年ドイツW杯でのさらなる躍進を目指した。2004年にはアジアカップで優勝を果たしたジーコジャパンだったが、W杯への道のりは平たんではなかった。

 2次予選は全勝で通過した日本だが、最終予選の初戦、ホームでの北朝鮮戦は思わぬ苦戦を強いられ、最終的にアディショナルタイムのFW大黒将志の劇的なゴールで辛くも勝利したが、続くアウェーでのイラン戦は、1-2の敗戦を喫してしまう。

 日本代表として2度のFIFAワールドカップ出場を経験した中澤佑二さんは当時のチームについて話してくれた。

Q. 初戦の北朝鮮戦は思わぬ苦戦となりました。

- 心のどこかに、「ホームでやるときには勝たなきゃいけない」とか「サポーターの前だから、いい内容でたくさん点を取って完勝しなきゃいけない」みたいな、少し余計な気持ちが出てきてしまうのが、W杯予選の難しさ、ホームでやる難しさとしてはあります。あの北朝鮮戦も、相手の守備が固くてなかなか点が取れない中で、「早く点を取れよ!」「こういうサッカーしてたらW杯で勝てないよ!」というサポーターの声が聞こえてきて、選手同士でもそれぞれ気持ちが違う方向にいってしまった結果だったのかな、と思います。

Q. 続く第2戦、アウェーでイランに1-2の敗戦。チームの雰囲気は?

- そこまで雰囲気が悪い、ということはなかったですね。どちらかというと、次に向けて切り替えよう、という声が多く出ていました。
 何万人という物凄い相手サポーターの前でプレーをして、相手の勢いをそのまま受けてしまったという状況があったので、そこまで悲観はしてなかったです。ただ、周囲から「どうするんだ!」とか「黄色信号だ」とか声が上がったので、選手もいろんな余計なことを考えてしまったのかな、というのはありますね。
 イランは、高地ですごく空気が薄かったり、ボールが伸びて落下地点を見極めるのがなかなか難しかったり、普段慣れない環境での試合でしたし、女性の入場が禁止ということでスタジアム全体が男性しかいない、男の声しか聞こえないという異様な雰囲気だったということもあり、物凄くアウェー感を感じた試合でした。

 第3戦、ホームでのバーレーン戦は1-0で勝利するも、その後のキリンカップでUAEとペルーに2連敗。チーム状態が不安視される中、バーレーンでのアウェー戦を前に、UAE・アブダビでの事前合宿に向かった日本代表。ここで、大きな転機となる出来事が起きる。

Q.  アブダビでの事前合宿で、選手だけでミーティングを行ったと聞きました。

- あの時は、試合でうまく結果が出なくて、このままで大丈夫なのか、という雰囲気の中、三浦アツ(淳寛)さんが音頭を取ってミーティングをすることになりました。僕自身も日本代表で、こういう状況に陥った時のミーティングというのは初めてでしたね。
アツさんとか上の年代の人たちが、「日本は勝たなきゃいけない、日本が勝つためにみんながプレーをしなきゃいけない」ということを話していました。「自分はスタメンで出れないけれど、日本が勝つためには、なんでもやりたいと思うし、それぐらいW杯に出たい、という気持ちがあるんだ」という話をして。チームが勝つために気持ちを1つにしよう、という言葉が、他の選手からも出ていました。
 その前は、それぞれが頑張ろう、という個の頑張りが強かったんですけれど、このミーティングをきっかけにチームが1つになったし、その結果、次の試合は勝てたんじゃないかな、と思います。

Q. このミーティングが行われていなかったら?

- もしあの夜に、アツさんたちがミーティングをやろうって言わなかったら、もしかしたらですよ。予選突破できなかった可能性もある、っていうくらい、あの夜のミーティングはチームにとって大きな分岐点だったのかなと思います。

 「アブダビの夜」を経て、アウェーでのバーレーン戦に、MF小笠原満男のゴールで1-0と勝利し、続く北朝鮮戦に勝てばW杯出場が決まるという状況に。北朝鮮へのFIFAの制裁により、第3国での無観客試合となった試合は、FW柳沢敦、大黒将志のゴールで2-0の快勝。苦戦の末、ジーコジャパンは、“世界最速”でのW杯出場を決めた。
 個性豊かな選手が集まる代表チームが、厳しい予選を勝ち抜きW杯の出場権を獲得するには、チームが1つになることが重要だと、中澤さんは語る。

Q.  アジア予選を突破するために、チームが1つになることの重要性とは?

- プロ選手たちの集まりで、代表選手にもなってくると、それぞれがポリシーを持っていますから、それがチームとして1つになるって非常に難しいんです。それを、経験のある選手たちが、自分たちの思いとかそういったものを一旦閉じ込めて、チームが勝つため、日本代表がW杯に行くために、何をしなくてはいけないか、ということに導いてくれることが一番大事だなと思います。
 そういう存在が日本代表にいることは、ものすごく大事だと思います。ベテランの選手がいるからこそ、やっぱり歴代の日本代表は1つにまとまって、いろんな難しい試合にも勝ててこれたのかな、というのはありますね。

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