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【アジア2次予選 北朝鮮戦】かつての“熱戦”を知る2人がその舞台裏から北朝鮮を分析(前編)

2024.03.21 公開

 FIFAワールドカップ26出場をかけたアジア2次予選。日本代表は3月21日(木)ホーム、そして26日(火)にアウェーで北朝鮮との連戦を迎える。両チームがW杯予選で対戦するのはブラジルW杯出場をかけた2011年のアジア3次予選以来となる。今回は、その戦いを知る元日本代表槙野智章さん、元北朝鮮代表鄭大世さんに当時を振り返ってもらい、北朝鮮の「力の根源」そして日本が勝ち抜くために国立競技場での戦いがいかに重要な一戦となるか、話を聞いた。
※26年W杯は、2次予選に続いて最終予選が行われ、出場国が決定。最終予選後、プレーオフが行われる。14年W杯は、3次予選の次に最終予選が行われ、AFCプレーオフ、大陸間プレーオフが行われた。

  

 ブラジルW杯を目指すアジア3次予選。日本は北朝鮮、ウズベキスタン、タジキスタンと同じグループCに入った。2011年9月2日 埼玉スタジアム2OO2での北朝鮮との戦いが初戦となった。アルベルト・ザッケローニ監督率いる日本のメンバーはキーパー川島、4バックに内田、吉田、今野、駒野、ボランチは長谷部と遠藤保仁、2列目に岡崎、柏木、香川、1トップ李忠成の布陣。

Q.北朝鮮代表は前年南アフリカW杯に出場。2大会連続での本大会出場を狙うアジア予選。3次予選で日本と同じグループになった時の気持ちは?
鄭大世
 東アジアのライバルなんで、どうしても歴史的背景もあったりして…お互い負けたくないわけですよ、日本、韓国、北朝鮮に関しては。韓国戦もそうだったんですけど、特に日本戦も同じように『絶対にそこは負けたくない』っていう感じでしたね。日本と同じグループに入ったのを知った時は<嬉しさ半分、不安半分>みたいな感じでしたね。やっぱり日本代表と対戦するというのは僕の中でもすごく大きな意義があることなんで。日本で生まれて日本代表相手にどれだけ自分ができるか。「自分という人間を日本代表に選出しなかったことを後悔させてやろう」っていう。そういう陰の部分のそのモチベーションっていうのがあったりして。でも3次予選で当たりたくなかったっていうところの2つでしたね。

 

Q.3次予選で当たりたくなかった理由は?
鄭大世
 やっぱりワールドカップに出るっていうのが目標なんで、3次予選で日本代表と当たってしまったら絶対そこが勝ち点が約束できないところになってくるんで、勝つのももちろん至難の業になってくるっていうところでは当たりたくなかったなって思いました。

Q.北朝鮮チーム内で日本代表についてどんな話をした?
鄭大世
 当時、ボランチに遠藤さんが入ってましたよね?例えば、長谷部とかもいたり、香川真司とかあの時一番輝いてた時の選手とかいて…「正直、分かってても止められないよ」っていう話をしましたね。そこはもう対策とかじゃなくて、香川真司はあの時もうブンデスリーガ(ドイツ)でMVP取るくらいの活躍だったし、「攻撃の選手たちは分かってても止められないし、ボランチの選手たちにもどう対応してもやられることはやられる。」ただ、この間のアジアカップで露見されたように【パワープレーには弱いよ】という話はしてましたね。Jリーグの試合でも(2006-2010川崎Fでプレー)僕がパワーで圧倒できるぐらいなんで、ロングボールだとか、シンプルな部分の戦いに弱いよっていう話はしてましたね。

Q.北朝鮮代表として埼玉スタジアムのピッチに立つことはどんな気持ちだった?
鄭大世
 2005年に埼スタでドイツワールドカップの最終予選が行われて、僕はその時スタジアムの観客席にいたんですよね。そこで北朝鮮代表には安英学さんだとか、李漢宰さんがプレーする姿を見て、その試合も2-1で日本の勝利だったんですけど、ああこれだけ互角に渡り合えるのかと思って。その時、観客席にいた自分がこんな代表としてそのピッチに立ててることがすごく嬉しかったですね。

試合は日本代表がペースを握り何度もチャンスを作る。前半31分。柏木の柔らかいクロスに李忠成がゴール前に絶妙な抜け出しを見せバックヘッドで合わせるがこれは相手キーパー正面。その直後、中盤におりてきた岡崎がサイドから絞ってきた香川に落とす。香川はスピードに乗ったドリブルから右足を振り抜く。惜しくも枠を外すと満員の埼玉スタジアムはため息に包まれた。

 0-0で迎えた後半。途中出場の清武が立て続けに北朝鮮ゴールに迫る。後半17分。ゴール前のこぼれ球を強烈なミドルシュート。これはディフェンダーがブロック。日本はその後も決定的なチャンスを何度となく作るものの北朝鮮代表の懸命な守備の前に得点を上げることができない。すると0-0で迎えた後半アディショナルタイム。ショートコーナーから清武がゴール前に上げたクロスボールに待ち構えていた吉田麻也がヘディングで合わせついにゴールをこじ開けた。

 

Q.得点の瞬間のことを覚えていますか?
鄭大世
 (既に交代して)僕はベンチで見てたんですよね。やっぱりやられたなって思いましたね。技術の高い日本代表がホームの利を使ってああいう風に完全に押し込む状況の90分間だった。そうならざるを得ないなと思っていたんですけど、あそこまで引っ張れたんで、どうにかそこで勝点1を持って帰りたかったんですけど…その時の映像見たら僕がペットボトルを投げたりしてましたね。

 

 アジア3次予選の初戦を劇的ゴールの末、1-0で勝利した日本代表は、4試合を終えて3勝1分。2試合を残し最終予選進出を決めていた。一方の北朝鮮は4試合を終えて1勝3敗この時点で予選敗退が決まっていた。11月15日。舞台は北朝鮮の平壌。5万人収容の金日成スタジアムは超満員。

 

Q.当時のスタジアムの雰囲気はどうでした?
鄭大世
 僕はこのスタジアムで試合をしたことはなかったんですけど、サッカーだったらゴール裏で声を出すと思うんですけど、それをスタジアム全体5万人がやるんですよね。半端じゃなかったですね、雰囲気は。応援は多分世界一だなと思いましたね。もう雷が落ちるぐらいピリピリした、電撃が走るような力が加えられたって感じですかね。もう体験したことないレベルの力が溢れてくるのを僕は感じましたね。

Q.鄭大世さんから見て日本代表選手たちはどんな様子でした?
鄭大世
 会場の雰囲気にだいぶのまれてたと思います。見てたら、やっぱりメンバー自体も完全な1軍というよりも、少し経験を積ませるぐらいの選手だったとは思うんですけど、それでもやっぱりあの雰囲気には驚いてて、なかなか自分たちのプレーはできないっていう風に映ってましたね、僕の目には。

 

 大観衆の応援を背にした北朝鮮代表は2か月前、埼玉スタジアムで試合をした同じチームとは思えないほどアグレッシブにそしてハードにプレー。ピッチで躍動した。

鄭大世
 正直、マジで感動しましたあの時は。埼玉スタジアムの時はもう防戦一方で、全くできなかったのに、ホームになった途端にみんなが目を覚ましたかのように走り回って、プレスかけまくって、球際激しくいって。そのみんなの気迫を見た時に「ああ、このチームには本当に可能性が溢れているな」って。その【気迫とか気合い】に関しては、僕らの想像を完全に絶するレベルのものを持ってたんで、すごいなと思いましたね。

 日本は鋭い出足と球際の激しさで圧倒する北朝鮮に序盤からペースを握られる。すると後半5分。フリーキックからゴール前に放り込まれたハイボールを頭でつながれ失点。この1点が決勝点となりザックジャパン初黒星を喫することとなった。

鄭大世
 当時の北朝鮮の選手たちは、今まさにトレンドのサッカーをあの時やってたと思うんですよね。どんどん選手が追い越してリスクを恐れずに守備のことを考えないで、どんどん相手を追い越して、裏をとり続けて、クロスを上げて、体を投げ出してシュートを打つっていう。その最後のところでゴールが入ったんで、それで僕は感動を覚えましたね。これは凄い。これは絶対止められないわと思いました。

Q.現在の北朝鮮代表に何か伝えるなら?
鄭大世
 僕が何かを伝えるっていうのはおこがましいですね。それぐらい彼らの能力は高いので。戦術的な部分っていうよりもどちらかというと、【根性論】ていうか。もう古い考えって言うけど、でも「そうじゃないよ」って思わせてくれたのが彼らだったんで。根性論でここまでできるのかっていうところだったんで、そのまま続けてほしいですね。

Q.一方の日本代表に何か伝えるなら?
鄭大世
 やはり成長してますよね、選手たちも。時代も変わって、いいクラブに行けるようになったし、あれだけトップオブトップのクラブで、優勝争いをしてるチームでスタメンを張ってるっていう。昔は考えられないことが今起こってるわけじゃないですか。それで選手のクオリティーとしても今は確実に過去最高だと思うし。でも一方でアジアカップみたいに変わってないところは変わってない。日本の短所は短所で残ってるっていうところだとは思うんですけど、やっぱり日本代表がホームでは圧倒する試合になると思います。それでアウェーではまだ全く違う試合になると思いますね。これが面白いところだと思います。

Q.最後に北朝鮮代表OBとして日本代表にアドバイスを
鄭大世
 多分想像したことないぐらいの迫力のプレッシングを掛けてくると思うんで、もうその球際の強さもそうだし、そこが一番ですよね。【運動量と球際の強さ】っていうのは絶対そこで勝負してくるんで、そこをどうかいくぐっていくか。遠藤航選手みたいな、そこでは負けない選手がいたり、ロングボールを放り込んできた時にどう跳ね返すかっていうところは、そういう日本代表の弱点というところをしっかり自分達が整えなきゃいけないと思います。

 確かなポテンシャルを持ちながら、ホームとアウェーでしたたかに戦い方も変えてくる北朝鮮代表。アウェー平壌ではその力をいつも以上に発揮し襲いかかってくる。過去最強とも言われる日本代表にとって決して簡単な試合にはならない。2011年を貴重な経験として学ぶのであれば3月21日(木)に国立競技場で行われるホームでの試合が連戦のカギを握ることは間違いない。
 (後編)では当時の戦いを知る元日本代表槙野智章さんに「北朝鮮戦の難しさ」そして日本代表勝利へのポイントを伺います。

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