第1話
出版社の編集者、ヤブこと薮田秀彦は、外光が一切遮断されたその真っ赤な部屋で、22歳の美人女流小説家・柏葉ミカと対峙していた。
18歳で衝撃デビューしたミカは、第1作、第2作ともに超ベストセラーを記録。しかし、第3作目で失速したミカは、勝負といわれる4作目が書けなくなってしまった。そんなミカの担当になったのが、頭頂部がさみしいダメ中年編集者・ヤブだったのだ。
ヤブは、会社でのことをミカに話し始める。ある日、出社すると机の上に花がいけてあったのをみて、「綺麗だなぁ~誰が私のこと好きなのかなぁ」と女性編集者を見るが、みんなに顔を背けられてしまう。そして、机の引き出しをあけると中にカレーがびっしりあったというエピソードを披露。自分はミカには及ばないが人気者なのでは? と、ひとり爆笑するヤブ。
それを聞いてミカは、新刊の売れ行きが悪かったり自分の人気のかげりをヤブに問い詰める。罵倒されても、蹴られても、書いて欲しい、とミカにすがるヤブ。そんな姿を見たミカは、ヤブを自分の部屋に監禁する、と宣言して??。
第2話
ヤブ(温水洋一)を監禁することにしたものの、全く原稿が書けないミカ(吉高由里子)は、笑える話をするようヤブに言う。
しかし、ヤブの話を笑えないとだめだしするミカ。イジメられたときの話をリクエストされたヤブは、高校時代の話をし始める。海の近くに住んでいたヤブは、同級生たちに港にあるイカリに縛り付けられて放置されてしまう。一人残され、潮が満ちてきておぼれそうになる。朦朧とした意識の中で助けを呼んでいると、水兵さんが通りかかり間一髪助けられた。
といって、笑い転げるヤブ。
しかし、ミカはまったく笑えない。なぜ笑えるのかという疑問に対し、ヤブは、「生きるためのコツ」という。
それを聞いたミカは、幼いころに父親に言われた言葉を思い出して…。
第3話
テレビでは、同じく女子高生作家としてデビューした久留米舞(加護亜依)が出演している。それを見たミカ(吉高由里子)は、原稿がほしいというヤブ(温水洋一)に“笑える話”をするまで書かないという。すると、ヤブが話し始めたのは、恋バナ。
ヤブによると可愛いという、去年編集部に入った小木直美(五月女ケイ子)のこと。編集長の小森(粟根まこと)に命じられて教育係になったヤブは、イネムリをしながらも直美を指導。その甲斐あってか、直美は1週間ほどで全ての仕事を覚えた。そんな直美に好意を抱いたヤブは、研修期間が終わった後、直美に交際を申し込んだ。ところが、この噂が社内に広まったため、小木は、翌日、“生きていけない”と言い残し、会社を辞めてしまった。という話。
爆笑するヤブに対し、笑えないとミカ。
そして、現在、恋人がいるのかどうかを聞いてみると、ヤブは、ブスで厚化粧の、豊臣妙子というディスプレー屋の女性にストーカーされている、という。妙子は、毎晩のように、バイク便まで使って手作り弁当を届け、ケータイにもひんぱんに連絡してくる。だが、ヤブは、生理的にブスな女はダメだ、と話した。
そんな中、ヤブにメールが入り、妙子が直接ミカの部屋に弁当を届けに来ることが分かった。まもなく、チャイムが鳴り、妙子が到着。玄関で妙子を迎えたミカは、妙子の姿をみて――。
第4話
ミカ(吉高由里子)は監禁している意味がないからとヤブ(温水洋一)に部屋から出て行くようにいう。ガックリうなだれて、持ち込んだ荷物をまとめて玄関へと向かうヤブ。
ちょうどその時、ヤブの携帯に兄という人物から連絡が入る。この部屋に一卵性の双子の兄がやって来るという。
ヤブによると、お兄さんは、ヤブとは正反対のキャラの前科者で、刑務所を出たばかり。弟が人気作家のミカに監禁されていると知った兄は、そのオトシマエを付けに来るというのだ。ヤブは、大変なことになる、と言い残し、そのまま行ってしまう。
鍵をかけ忘れたことに気づき、玄関に向かったミカだったが、すでに玄関にはヤブそっくりの男が。
雪次郎と名乗るその男は安物のスウェットの上下とサンダルを着ていた。あわてて逃げたミカだったが、雪次郎がヤブにそっくりだったので、変装しているに違いないと突っかかる。だが、突き飛ばされ、頭をハタかれたミカは、半泣き。それでも信じられないミカは、入れたばかりのコーヒーを雪次郎の頭からかけてみる。が、逆にロープでソファーに縛られてしまう。
まもなく、雪次郎は、弟がさいころトークで笑える話をさせられていたと知り、同じことをミカにやらせ始める。恥ずかしい過去を明かすよう迫られたミカは、高校の時に痔だったことがクラス全員に知れたことを話す。
そして、ミカのサイフを奪い、暗証番号を聞きだした雪次郎は、そのまま出て行ってしまう。
ところが、その直後、玄関の外で、ヤブと雪次郎が怒鳴りあう声が聞こえ――。
第5話
ミカ(吉高由里子)のアイスを勝手に食べたヤブ(温水洋一)が、言い訳をする中で「盗作」と口走ったため、逆鱗に触れて部屋から叩き出される。食べてしまったアイスの棒がもう1本もらえる当たりだったので、コンビニにもらいに行くことにする。
しかし、“当たり”が読めないからと追い返されるヤブ。コンビニの中である夫婦のただならぬ会話を聞いてしまう。さらにコンビニを出るとアイスを食べていた中学生・サトシがイジメられていた。サトシの落としたアイスが当たりだと気づいたヤブは棒をひろう。
しかし、サトシがかわいそうになり、当たり棒を渡そうとすると先ほどコンビニの中にいた夫婦がサトシに声をかけてしまう。そのころヤブは、ミカから戻るようにとのメールを受けていたが、返信できぬまま、サトシから目が離せず、親子が向かうという危険なバイト行きのバスに乗ってしまう。
古びた工場に運ばれたヤブらの仕事は、危険な清掃作業。工場内部には、高圧電流が通る巨大なトランスが設置されている。トランスは、管理責任者が絶対に近づくな、という危険な装置。
これに触れたネズミが黒こげになるのを見たヤブらは、ア然。管理責任者の注意の後、ヤブらは、指示に従って働き始める。
なんとなく親子を気にしながら働いていると…。
第6話
ミカ(吉高由里子)は、父・健一(羽場裕一)のことを思い出していた。子供の頃に誕生日プレゼントとしてもらったごまアザラシの人形以来16年間、プレゼントをくれなくなった。
そして、2年前のこの日=ミカの誕生日に家を飛び出した。誕生日に辛い思い出しか残っていないというミカは、慶(山根和馬)に携帯メールをするが、返信はない。腹いせにヤブ(温水洋一)をたたき起こすミカ。
そのころ、健一は、ある宗教法人で活動していた。新たに信者を獲得しようと、教祖(柳憂怜)と教団の企画室長(中川礼二)が考えていると、ある幹部が、ミカの本を持ってくる。
そして、ミカをPRのために協力させるよう、健一に迫る。ヤブがいつものように笑エル話をしているところに、健一と教祖、室長が現れた。ミカに協力を依頼するも、怒って部屋を飛び出してしまう。
その頃、ミカの部屋では、ヤブの笑エル話で教祖らを大笑いさせていた。ヤブのトークが金儲けにつながるとにらんだ教祖らは、信者たちの前で話して欲しい、と依頼。ヤブは教祖らに半ば強制的に連れ出されてしまい、ミカは一人になってしまう…。
第7話
ミカ(吉高由里子)は、ヤブ(温水洋一)を叩き起こし、風邪薬を買ってきて欲しいと言って倒れてしまう。
すぐに薬を買いに出かけたヤブは、途中、粗大ゴミを路上のゴミ捨て場に捨てていると、そこにいた女・久美子が、ヤブをルール違反だと熱湯入りの水鉄砲で襲ってきた。ヤブは、慌てて逃げ回るが、ついに捕まり、一軒の家に連れ込まれてしまう。
高熱のミカは元カレ・慶の幻覚を見ている頃、ヤブは、久美子の求めに応じ、笑エル話を披露していた。ヤブの話のあまりのおかしさに、久美子は大爆笑。まもなく帰宅した久美子の夫・幸一も笑わせたヤブは、ついに神が遣わした天使だとまで言われる。
まもなく、ミカのことを思い出したヤブは帰ろうとするが、2人は、ヤブを帰さなかった。玄関の扉は板で打ち付けられており、家からの出口はどこにもない。
そして、勉強部屋らしい場所で、足を鎖でつながれた神父とベッドの上の50歳くらいの男を見つける。
幸一と久美子の話によると、ベッドの上の人物は、一人息子で18歳の貴幸。2年前に心を閉ざして引きこもりになった貴幸を見て、2人は、悪魔に取り付かれたと思い、神父に頼んで悪魔祓いをしてもらった。だが、効果が全くなかったらしい。
ヤブは、笑エル話で貴幸の悪魔祓いをして欲しい、と頼まれて――。
第8話
ベッドで眠っていたミカ(吉高由里子)は、再び慶(山根和馬)の幻覚を見たと思っていた。しかし、それが本物であることに気づく。
そのころ、幸一(国広富之)と久美子(池谷のぶえ)の部屋に監禁されたヤブは、貴幸に笑エル話を披露していた。だが、貴幸を笑わせることが出来ず、お仕置きされてしまう。
悪魔祓いをしたという神父とヤブは交互に話をするが、一向に笑わせられない。そこで、神父が貴幸を笑わせる取っておきの方法をヤブに教え、ヤブはそれを実行する。
一方、ミカの部屋には、慶と一緒に婚約者の裕子が来ていて、ミカの看病をしているが、ミカは複雑な思いをしていた。
台所で婚約指輪を見たミカは…
SP(スピンアウト)
「吉高由里子がお風呂で××!!
温水洋一の乳首が増えちゃった!?
トンスラがもっと楽しくなる! ドラマの裏側全部見せちゃう特別篇」
第9話
勝手に郵便物のあて先をミカ(吉高由里子)の部屋に変更していたヤブ(温水洋一)に、父親の譲治(大和田伸也)から見合い写真が届く。見合いの相手は、真城寺財閥の一人娘・朱美(中野公美子)。讓治との電話でヤブは断わるが、真城寺財閥が大の得意先だと言って納得しない。そこで、ヤブは、婚約者と同居している、と言ってしまう。ミカに口裏を合わせるように頼むヤブ。そんな中、家を知るはずがない父親・讓治がミカの家にやってきてしまう。
ミカに、別れて欲しい、と頼む譲治。これに対し、ミカは、ヤブに頼まれた通り、ヤブを愛しているし、将来を約束している、と答えるが、ミカは、ヤブのどこを愛しているか答えられない。そして、見合い場所と時間を告げ、来なければ勘当すると言い残して帰ってしまう。
逆玉に乗るのも人生とミカに説得され、その気になって見合い場所に行ったヤブだったが…。
第10話
ミカ(吉高由里子)は、東京近郊で発生した立て篭もり事件のテレビ中継を見つめていた。両親と19歳の長女、祖母の4人を人質に取った長男が、包丁を手に自宅に立て篭もったというもので、長男は、ミカと同じ年の22歳だった。
これを見ていたヤブ(温水洋一)は、この事件を題材に書いてはどうか、とミカに提案。今風の若者だから、ミカにも立て篭もり犯の気持ちがわかるのではないか、というのだ。ミカは、自分の部屋へ行き、立て篭もり事件を題材に書き始めた。イメージを膨らませキーを打つミカだったが、行き詰ってしまう。
リビングに戻ったミカは、タバコを吸いながらアルバムを見始める。南の島の写真が目に留まったミカは、新たな物語を思いつく。再びパソコンに向かい、キーを打つ。
今度は、レイコ(坂井真紀)が南国に着いたところから始まる。南国の男(タヘリ)に一目ぼれしたレイコ。やがてそこに、人食い部族や侍が現れ二人を襲う。それを助けようと、その世界に入っていくミカだったが…。
第11話
家族人質立て籠もり事件が続く中、ミカ(吉高由里子)は、本気で作品を書きたいと思い、パソコンに向かう。ミカがヤル気になり、応援するヤブ(温水洋一)だったが、パソコンの、画面は相変わらず真っ白のまま。
そんな中、ヤブの携帯に編集長の小森(粟根まこと)から電話が入る。出ようとしないヤブに代わってミカが電話に取ると、担当記者として正木賞の候補になっている舞(加護亜依)と一緒に受賞の連絡を待つように、という内容だった。その電話によって、ヤブが舞の担当でもあったとバレてしまう。
ミカは舞のところに行くように言うが、ヤブは自分に掛かって来た連絡を舞に伝えればいい、と弁解する。そこへ、突然、舞がミカの部屋にやってきた。そして、受賞の連絡をここで待つ、と宣言する。あたふたするヤブに対し、ミカは、気丈に振る舞い、受賞したら担当のヤブを解放する、と舞と約束してしまう。
さらに、舞は、書けなくなった作家の話を次回作の題材にする、と言い、パソコンのキーボードを叩き始める。たまらずテレビをつけたミカは、人質事件の犯人と自分をシンクロさせて、動揺。そんなミカを見て、舞はさらにキーボードを打ち、ヤブもそれを盛り上げ、オルガンで伴奏をする。最高潮に達したとき、ミカの忍耐が限界に…。
そして、そのとき、ヤブの携帯鳴り、舞の結果が知らされる…。
第12話
ヤブ(温水洋一)が去った後、いつの間にか同志のような存在になっていたように思い、孤独を感じるミカ(吉高由里子)。
家族人質事件が続く中、テレビから聞こえてきたのは、深夜0時に家族を皆殺しにして自殺する、という声明だった。これを聞いたミカは、同じ時間に自殺しようと心に決める。
その頃、舞の受賞の祝勝会場にいたヤブは、ミカのことが心配になり、部屋に戻ろうと考える。隠し芸のため貝殻のビキニを着せられていたヤブは、その姿のまま会場から脱出。途中、そば屋にあった白衣を借用するが、中国人のアルバイト店員と間違えられ、そばの出前をすることになってしまう。
ところが、その配達先は、なんと人質立て籠もり事件の現場。そばを要求しているのは犯人らしい。現場の指揮官・五十嵐(津田寛治)から、そば屋の白衣を貸して欲しい、と頼まれたヤブは、貝殻ビキニのことを思い出し、自分が配達すると志願。
包囲する警官隊や多くのマスコミが注視する中、ヤブは、事件現場となっている家に入り込むことに。
一方、ミカは、テレビをつけながら、首吊り用のロープに首を入れて、自殺をする体勢に。そして、午前0時。ミカは、テレビ画面のヤブの姿に気付かないまま、立っていた椅子を蹴り飛ばすが――。