「世界一受けたい授業」出演 建築家・谷尻誠に聞く、コロナ禍で快適に過ごすためのアイデア
1月23日(土)よる7時56分〜8時54分 日本テレビ系列で放送の「世界一受けたい授業」には、建築家/起業家の谷尻誠氏が登場。放送では、「街の気になる最新建物に学ぶ!おウチ時間が豊かになる㊙テク」の授業を行う。
谷尻氏が先生として、既成概念を裏切るユニークな発想に満ちた最新建築の数々を、建築に詳しい櫻井翔と共に紹介しおウチ時間の快適な過ごし方を提案する。建築にまったく興味のない人にも「新しいまなざし」が得られる新年最初の授業にふさわしい充実の内容となっている。
今回は、放送だけでは収まらない「授業」の面白さをインタビュー記事でお伝えする『「世界一受けたい授業」の課外授業』として、谷尻氏のインタビューをお届け。
建築家として住宅・ホテル店舗だけでなく、アニメ「未来のミライ」では主人公が暮らす住宅のデザインまで手掛け、既成概念にとらわれない柔軟な発想で、プロダクトデザインから働き方まで新たな価値を見い出し様々なプロジェクトで活躍する「起業家」としての顔も持つ。
谷尻氏から、そのユニークな発想術についてお話をうかがった。
──まず建築家/起業家という肩書きなんですが、ユニークですよね?
「建築家って仕事のやり方が昔と何も変わっていないんですよね。大先輩方のやり方をずっと継承していて、すごく確立された業界なんです。新しいことを考える人がいないというか、時代が変わっても昔のやり方で続けるのって素晴らしいかもしれないけれど、本当にそれでいいのかなという疑問もあって。ベンチャーという視点で設計事務所を捉えるとできることはもっとあって、自分も起業家と銘打てば、ものを見る新しいまなざしが手に入るんじゃないかと思って、肩書きにしました」
◾️大変なとき=「大きく」「変わる」とき
そんな「新しいまなざし」のひとつとして、設計事務所の社食を食堂として一般客にも開放している『社食堂』プロジェクトをあげた谷尻氏。始めるにあたって当初は、反対意見ばかりだったという。
「会社の食堂に知らない人が毎日来たり、匂いとか、うるさくて仕事にならないんじゃないかとか、守秘義務をどうするんだとか、お客さんがこなかったらどうするのとか、大変だからと反対意見がすごく多くて(笑)。でも、反対されればされるほど新しいってことですから価値化するチャンスだなと思ったんです」
──価値化とは?
「『価値観』って「すでにみんなが理解しているもの」。理解できるから『それ、いいね』って言われるんです。みんなが反対するのは理解できないからで、理解できるように形にすれば、そこに新しい価値が生まれるんです。社食堂も結局、オープンしたら匂いなんてすぐに慣れましたし(笑)。食器の音とか生活音はノイズとして捉えていない、心地良さなんですよね。そうじゃなかったら、みんななんでスタバで仕事してるの?ってことですよね」
──大変なこともやってみたら大変じゃなかった、と。新しい価値が生まれたんですね。
「大変ってネガティブな意味合いですけど、『大きく』『変われる』ことなんだよって言ってるんです。何か大きなパラダイムシフトが起きる瞬間というのは負荷がかかるものなので、その負荷を好む方が成長につながるんです。だから、僕はみんなが反対すると盛り上がってくるんですよね(笑)」
◾️シンプルに過ごす「豊かな時間」
既成概念にとらわれない取り組みを続けている谷尻氏。長びくコロナ禍での『価値化されていない快適な過ごし方』について質問すると、ユニークな答えが返ってきた。
「窓を開けることじゃないですか?シンプルに。窓を閉めてエアコンで温度調整するっていうのが当たり前ですけど、結局、コロナは室内に不安を覚えているわけですよね?窓を開けて、室内でダウンベストを着て、朝の冷たい風を感じながらコーヒー飲んだりとか気持ちいいじゃないですか。窓だけじゃなく精神ももっと開いていく、開放していくことのほうが豊かなんじゃないかなと思います」
──なるほど。ほかに、照明で部屋をオシャレな雰囲気に変えるとか、プロのコツのようなものがあったら、教えてもらえませんか?
「個人差ももちろんあるんですけど、室内は暗いほうが落ち着きませんか?夜になってもコンビニみたいに明るいと寝れないですよね。みんながカッコイイって言っている海外のレストランなんて、大体ろうそくとかで真っ暗です。読書するとか、何か書くとか必要な作業をするところだけ、光がちゃんとあればいいんですよね。無駄に天井の照明とかつけないほうがいいです。設計するときも、クレームが来ないギリギリまで照明は設置しないようにしてます(笑)」
──逆に、リモートなど在宅勤務が増えてきたいま、オフィスの今後の役割は何か変化していくと思われますか?
「オフィスも働く場所じゃなくて、『集まる場所』になってきましたよね。みんなに会うことによって新しいものが芽生えたりするものなので。だから、『集まりたい』『行きたい』オフィスにしないとダメです。今までオフィスは働くことを効率的にするため作られてきたんですけど、これからは休憩の場所をしっかり準備するとか、『休むことの提案』も重要だと思います。たとえば7時間労働なら、その間ずっと集中できるはずないんで。しっかり休んでいる間にボーッと考えたりっていうことができるようになるといいと思います。
あと、効率を求めて部署を細かくセグメントしていった結果、企業がいま僕らに求めているのは『違う部署間の交流をどうしたらいいですか?』ってことなんです。だから、LINEさんのオフィスを手掛けたときに『トイレの数を減らしたらどうですか?』って提案したんです」
──トイレを減らす?
「はい。トイレが各階にあるんじゃなくて、例えば10階建てなら3階に1階しかトイレがない。トイレに並ばせれば、違う部署の人と一緒になって、ちょっと待ってる間にコミュニケーションが生まれるじゃないですか。誰もやらせてくれないですけど(笑)」
◾️アイデアのスタートライン──『懐かしい未来』を探して
「新しいまなざし」から、次々と飛び出すアイデア。その源泉は一体何なのか?最後に質問した。
──どのお話しもユニークな視点に驚かされるんですが、何かアイデアを考えるとき、まず何から考えていらしゃるんですか?
「最近、『それを誰が決めたの?いつ?何時?何分?何秒?』ってよく言ってます。子供の頃、みんなよく言ってましたよね?いつ何時何分何秒っていうのは、『問い』を立てるすごく分かりやすいスタートラインです。そこから考えて、収斂していくわけです。
みんな既成概念の中で生きている、だからそれを裏切ったときビックリする。そんな『みんなが知っている知らないこと』──僕はそれを『懐かしい未来』って言っているんですが──をなんで?なんで?って探していく、小学生に戻ったらいいと思いますね。子どもみたいに、なんでなんでって聞く感じが一番いいと思います」