【解説】トランプ大統領崖っぷち 陣営内に焦り
なかなか決着がつかないアメリカ大統領選挙。トランプ大統領が今、崖っぷちに追い込まれています。2日ぶりに開いた会見では終始うつむき、いつもの勢いはなく、陣営内でも、ほころびと焦りが露呈しているといいます。大統領選の最新情報と今後の展開を解説します。
■バイデン候補 優勢な状況変わらず
日本時間6日夕方までに獲得した選挙人の数は、トランプ大統領が214人、バイデン候補が253人で、バイデン候補が優勢な状況なのは変わっていません。
■トランプ大統領 郵便投票認めず連邦最高裁まで争うと明言 バイデン陣営は反発
日本時間6日朝、会見を開いたトランプ大統領は、「合法的な投票を集計すれば、私が楽に勝利できる。不法な投票を集計すれば、彼らは選挙を盗むことができる」「数多くの疑惑がある。多くの証拠も持っている。おそらく最終的に連邦最高裁に行くことになる」と発言しました。
トランプ大統領は、今回の大統領選挙を「アメリカの歴史上、例がないひどいものだ」と表現して、郵便投票を認めず、最終的に連邦最高裁で争うと明言しました。
この会見を受けてバイデン陣営は、「トランプ大統領の主張は根拠がなく、トランプ大統領が負けていることを示すものだ」などと反発しています。
これに先だってバイデン候補は、日本時間の5日に行われた会見で、「集計が終わったとき、私たちが勝者になっていると信じている」「選挙が終われば傷を癒やし、団結する必要がある」「前に進むために相手を敵として扱うべきではない」と発言し、選挙後の団結を訴えて国民に平静を保つよう呼びかけました。すでに勝利後を見据えた、大統領らしさを意識したような発言でした。
■トランプ大統領「数多くの疑惑があり」と発言も、明確な証拠は出さず
投票日から2日以上経ちますが、トランプ大統領は「不法な投票で選挙が盗まれている」と繰り返し、「数多くの疑惑があり、その証拠もある」と言っています。ただ、どの疑惑も今のところ明確な証拠は出てきていません。
■トランプ陣営 各地で訴訟
整理してみると、トランプ陣営は、票の集計作業の差し止めなどを求めてウィスコンシン、ミシガン、ペンシルベニア、ジョージア、ネバダの各州で、訴訟を起こしています。
■トランプ陣営が主張する"不正"とは?
・ジョージア州では、郵便投票で締め切り前に届いた票と締め切り後に届いた票を分別せずに混ぜていると批判しています。選挙監視員が「実際に票を混ぜている現場を目撃した」という証言があると言いますが、ジョージア州の裁判所は証拠不十分として、却下しました。
・ネバダ州では、「投票所に行ったら、自分がすでに投票したことになっていた」という住民を会見に同席させ、「住民以外の人が投票している」として不適切な票の集計を差し止めるよう求めています。
・ミシガン州では、選挙監視員がしっかり監視できる体制が取れていないとして、トランプ陣営は集計作業の差し止めを求めました。するとトランプ支持者らが開票所に押しかけ「中に入れて監視させろ」と訴えるなど、警察が出動する騒ぎになりました。ミシガン州知事は「開票作業は完了した」としてトランプ陣営の訴えを却下しました。
■グレタさん トランプ大統領に皮肉ツィート
アメリカ大統領選をめぐっては、スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさん(17)も苦言を呈しました。以前、地球温暖化に消極的なトランプ大統領と批判合戦を繰り広げたとき、トランプ大統領から「友人と古き良き映画を見に行くべきだ! 落ち着け、グレタ。落ち着け! 」とツイートをされていました。
これを引用して、グレタさんは、今のトランプ大統領の状況を見て、「友人と古き良き映画を見に行くべきだ! 落ち着け、ドナルド。落ち着け! 」とツイートしました。
■トランプ陣営内にほころびと焦り
トランプ大統領のなりふり構わない様子に対しては、身内から不協和音も聞こえています。
トランプ陣営からは「法廷闘争は止めないが、成功するとは思っていない」との声が出ていると、地元メディアで報じられたほか、共和党内からも「トランプ大統領の根拠のない主張への我慢が限界に近づいている」という声もあがっています。トランプ大統領も陣営の選挙戦略に懐疑的になっている、ともされていて、トランプ陣営内のほころびと焦りが露呈しています。
■会見で終始うつむくトランプ大統領 質疑応答にも応じず
11月6日の会見でのトランプ大統領の様子が、少し普段と異なっていました。
いつものような大きな身振り手振りがなく、ずっと下を向いていました。大統領を毎日取材している矢岡亮一郎支局長は、この会見を見て、「終始、手元の紙を見ながら慎重に発言していて、勢いがなかった。会見の時間も、長いときは1時間でも2時間でもやるのに、今回は約17分。トランプ大統領は会見に出席した記者からのたくさんの質問に答えず、背を向けて会場を後にした」とのこと。
■最高裁まで闘うと主張するトランプ大統領、その狙いとは?
しかし、このまま引き下がるトランプ大統領ではありません。「最高裁までとことん戦う」と言っています。
アメリカの最高裁には、9人の判事がいます。10月、トランプ大統領が指名した保守派のバレット判事が新たに選ばれたことによって、トランプ大統領の共和党と考え方が近い「保守派」が6人、「リベラル派」が3人となる。このためトランプ大統領は、最高裁判事が圧倒的多数で自らに有利な判断をしてくれることを期待しているため、なんとしてでも最高裁まで持ち込みたいと考えています。
開票が進むにつれて、どんどん分が悪くなっているトランプ大統領。自らも、それをわかっているからこそ、何とか訴訟を続ける理由を探しているようにも見えます。かつてなく分断が深まっているアメリカで、さらに分断を加速するような法廷闘争をいつまで続けるのか。世界中の目が注がれています。
(2020年11月6日16時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)