検 索 無料配信 番組表

トピックス

「私たちはどうかしている」石川・金沢の伝統文化を取り入れた「高月家」の重厚感あふれる日本家屋セットを解説!

2020.09.09 公開

日本テレビ系水曜ドラマ「私たちはどうかしている」。原作は講談社「BE・LOVE」で連載中、累計発行部数300万部の「私たちはどうかしている」(安藤なつみ著、既刊13巻) 。浜辺美波演じる可憐で才能にあふれる和菓子職人、花岡七桜(はなおか・なお)と、横浜流星演じる創業400年の老舗和菓子屋「光月庵」のクールな跡取り息子、高月椿(たかつき・つばき)が、15年前に起こった「光月庵」の当主殺害事件を巡り、過酷な運命に翻弄されながらも、強く惹かれ合う物語だ。

石川県・金沢市の老舗和菓子屋が舞台のラブミステリーを彩るのが「高月家」日本家屋のセット。今回、セットの美術デザインを手掛けたデザイナーの内田哲也さんにインタビュー。金沢独自の伝統文化を取り入れた、重厚感あふれる和の空間作りのこだわりを聞きました。

―原作や台本から、どんな風にセットを制作されたんでしょうか。
原作の漫画を読むと、高月家と光月庵があって、離れの座敷や従業員の住み込みの部屋もあったりするかなり広大なお屋敷なんです。部屋の数も多いので、まずは台本に則って必要な場所を書き出して位置関係を繋げていく作業からでした。どうしても漫画のような動線にならなかったりするんですけど、全部を成立させるには広大なスペースのスタジオが必要になってしまうので、最初に全体の部屋の配置と構成を考えるのが随分苦労しましたね。

そこから各部屋の大きさを決めていきます。厨房であれば、従業員が何人働いていたらどのくらいのスペースなのか、この量の御菓子を一日に作るにはどのくらいのスペースが必要なのか、というのを実際に東京や金沢の和菓子屋さんに伺って参考にロケハンさせてもらって。それらを鑑みて、台本上の設定に合うようなプランに落とし込む作業をしていくんです。

ただ、スタジオの広さには制限があって全ての部屋を一度に作りこむのは難しいので、それぞれの部屋を別の場所にするために、全部で7パターンくらいの飾り変えを考えたんです。例えば、ふすまと障子をはめ変えたり、壁を入れて真っ直ぐな廊下を真ん中でL字に曲がれるようにしたり。それをいかに効率よくできるか、ブロック分けしてバリエーションのプランを描くのに随分費やしました。

―セットの中でもかなり珍しいパターンですか?
昔、時代劇を担当した時に、一つのセットをいろんな飾り変えで武家屋敷にしたり、医者の部屋や民家にした経験があったので、それを思い出しながら「ここを変えれば違うものに見えるな」とか、「庭を半分にして塀を立てれば変えられる」と最小限で最大限に見せられる工夫をしました。それでもセットを10部屋は組んでますね。大道具さんも1つのスタジオに全て和室でこれだけの部屋数があって、廊下で繋がってるセットは日本テレビでは20年以上ないねって言っていたくらいです(笑)。第1話の結婚式のシーンではふすまをとっぱらって広い部屋にして、仕切れば小さい部屋になる、それが日本家屋のいいところで。このご時世でロケもなかなか厳しい状況で、いろんな撮影に対応できたセットでもありました。美術部や装飾部のスタッフは、撮影中ずっと飾り変えの作業をしていましたね(笑)。

―年代を経た設定の建物をセットで作るときの大変な部分は?
汚しの加工ですね。セットは綺麗に立てて塗装してから、年月を経たような感じに古く見える汚しをするんです。でも400年といっても、老舗のお店はきちんと手入れが行き届いているんですよね。毎日拭き掃除もして磨きに磨いてるので、建物は古くてもあちこちピカピカ光っていて新品の時よりもっと深いツヤがあるというか。そういった黒光りするような年月の重みを出すために、ツヤは一番こだわった部分です。スタッフみんなで柱を磨いて、床もワックスかけしてさらに磨いたり、そうするとライトが映り込んでツヤツヤして重厚な感じに見えるんです。こすったり、ある時はバーナーで焼いて木目を出してワックスをかけたりもします。セットを建ててからのほうが、時間がかかりますね。

―椿の部屋をはじめ、各部屋の壁の色が綺麗で印象的です。
金沢の建築で使われている特有の壁の色があって、高貴なお座敷とかで見られる「群青色」や「紅柄色」という渋めの赤、この青と赤が金沢の古いお屋敷で使われる独自の色なので、どこかに取り入れたいと思いました。椿は青にしようと考えていたんですが、本当の群青色はウルトラマリンブルーのようなとても鮮やかな色なので、8畳間くらいだと鮮やかすぎて人物をくってしまうんです。そこで、撮影用に少し渋めの「青黛(せいたい)」を用いました。落ち着いててモダンでもある、ちょうどいいブルー加減になったかなと。

女将の今日子(観月ありさ)の部屋は、キャラクターが迫力たっぷりなので渋めの「暗紅色」に。大旦那(佐野史郎)の部屋は、少しグリーンにも見える「利久鼠」。実際は黄緑がかった灰色なんです。この3つの色は、最初に漠然と決めていたイメージ通りです。逆に、茶室はベーシックな「じゅらく色」、他の場所もオーソドックスなベージュの「あま色」に抑えました。最初は客間とかにも色を考えていたんですが、飾り変えが多くなることが想定されたので、ベーシックな色を使っています。

―障子のデザインも特徴がありますね。
椿や今日子の部屋は、組子という桟が3本あるものでちょっと粋ですよね。料亭やお茶屋さんとか遊び心がある場所は、野暮ったくならないようにこういうラインの使い方をしています。大旦那の部屋は桟が縦に細かい「縦繁障子」で、武家屋敷とか少し身分の高い人の部屋で使われるタイプです。大きいマスの障子は庶民的なもので、細かくなると位が高くなるみたいな。僕は時代劇で育ったので、そういう風習が染みついていて(笑)。それから、今日子と大旦那の部屋は、障子の外回りの枠を黒縁にしてるんです。黒だと格式が上がった印象を受けるもので、北陸の家では黒縁の障子が多かったりするので、こういうところでも雰囲気を出しています。

―「釘隠し」もオリジナルで制作されているとか?
高級な和室は、長押の上に打った釘を隠すために「釘隠し」というデザインされた化粧の飾りを付けているんです。金沢特有の釘隠しもあるんですが、今回は光月庵くらいの老舗であればオリジナルの釘隠しがあってもいいなと、月を模ったものを僕がオリジナルでデザインして制作しました。鋳物に見えますが実は樹脂製で、100個くらい作ったと思います。あとは客間に壁をくりぬいて竹が入った下地窓があるんですが、そこも三日月型にしてみたりとひそかに月のモチーフをあしらっています。

―厨房も老舗ならではの雰囲気が感じられます。
建物の枠自体が古いので、作業台なども全部新品に汚しの加工をして雰囲気を出しています。古い電球もあって、蛍光灯を後から足した感じになるよう配線を全部むき出しにして見せていたり。グリーンの餅つき機や餡練り機は、装飾部のスタッフがトラックを出して岐阜から借りてきたものなんです。御菓子作りの機械は、古い物はそのままある中に新しい物も混ざっているというのが狙いでした。セットだけを古くしても、今どきのステンレス製の機械だけではちょっと違うんですよね。こういう時代を感じられる本物の道具があるとグッと老舗感が出るので、こだわりのポイントです。

―第1話で登場した「電話室」については?
電話がまだ一般的に普及してない頃、大店には近所の人も借りに来るような電話室があったんですね。金沢のロケハンで見た料亭でも、もう実際には使われていない電話室が残っていたりして。光月庵くらいの店になると、あったほうがより老舗感や年代が出せるなと思いました。

―こだわりのセットで、特にお気に入りの場所を教えてください。
厨房の事務室の向こう側にひっそりとある「通り土間」です。「通り庭」ともいうんですが、石畳で天井が高くて吹き抜け空間になっているんです。今回は厨房の脇で、通路というよりはお菓子の材料や包装紙などの保管場所として利用しています。特に台本にはなかったんですが、町家建築の特徴的な通路なのでどうしても組み込みたくて。例えば誰かが内緒話をするシーンにでも使われたらいいなと思って作った場所です。実を言うとここが一番好きですね(笑)。

―随所に金沢の伝統文化が取り入れられているんですね。
仏間にある樹(鈴木伸之)の仏壇も「金沢仏壇」で、かなり高価なものなんです。セットにさりげなく置かれている飾り棚の絵皿や花瓶、床の間の飾り物も実際に金沢から工芸品を借りてきているんですよ。

金沢はやっぱり金箔と漆という工芸の文化があるのでとても絢爛豪華な感じで、なかなか東京では手に入らないんです。あとは、庭にかかってる瓦の色も雪国の北陸特有の真っ黒な瓦に塗装しています。金沢の街並みを見ると屋根が真っ黒だったのが印象的で、セットの屋根もそれをひそかにこだわっています。結婚式の時に出てきた「花嫁のれん」も石川の文化なので、仏間との間仕切りに飾ったりしました。金沢の歴史を勉強してご当地の人なら分かるものもしっかり取り入れて、江戸や京都とは違う和の文化も表現しているので、ぜひそんなところにも注目していただければと思います。

 

「私たちはどうかしている」公式サイト
https://www.ntv.co.jp/watadou/

この記事を
シェアする
こちらの記事もオススメ!

TVer 視聴ランキング(日テレ)

2025年3月31日 時点

※TVer内の画面表示と異なる場合があります。

このページをシェアする
日テレドラマ
LINEアカウント
  • LINEの友だち追加
  • QRコードを起動
  • 友だちを追加!
QR
©Nippon Television Network Corporation