2013.5.14その11 飯舘村プロジェクト #最終回 福島県飯舘村立飯舘中学校
ようやく、子どもたちに “動く卒業アルバム”を届ける日がやってきました。
向かったのは福島市飯野町にある飯舘中学校の仮設校舎。我々のバスが到着すると、一緒に1年間活動を行ってきた子どもたちが窓から顔を出して笑顔で迎えてくれました。中学生になって、その表情は、少し大人びたように見えました。
去年、飯舘村の3つの小学校(草野、臼石、飯樋)で学んでいた6年生は40人。そのうち、33人が飯舘中学校に進学しています。特別教室で行った贈呈式には、子どもたちだけでなく、小学校時代の担任の先生方や中学校の先生も参加してくださいました。
“動く卒業アルバム”は、子どもたち自身がテーマを決めて撮影し編集したものと、日本テレビが子どもたちの仮設校舎での生活を記録したもののDVD2枚組。子どもたちは、小学校卒業の日ギリギリまで編集作業を続けて完成させました。そんな1枚を、ほんの少しだけ上映すると、恥ずかしいのか懐かしいのか、子どもたちは歓声を上げて食い入るように画面を見続けていました。DVDを手にした子どもたちからは、「一生大切にしたい」「みんなで作った最高の思い出」などの言葉をもらえました。
映像には、素晴らしい力があります。撮影当時の自分の姿を忠実に映し出すだけでなく、その時にどんなことを考えどんな思いでいたのか記憶を呼び戻してくれます。子どもたちも、1年前は何気なく撮影したかもしれない教室でのiPadの映像に、仲間たちと過ごした日々をリアルに思い出したはずです。
これから年齢を重ねるにつれ、一緒に過ごした仲間たちと離れ、自立しそれぞれ別の道を歩んでいく子どもたち。そんな大人になった彼らが“動く卒業アルバム”を再び見返すとき、「あのとき、村の仲間たちと一緒に仲良く過ごしていたな」と思い出してくれれば、私はとても嬉しく思います。
今、福島第一原発の事故によりふるさとを離れて暮らす人々の中で、地域コミュニティの崩壊は切実な問題となりつつあります。飯舘村を離れて暮らしている人々にとっても、それは決して他人事ではありません。もちろん、これから大人になる子どもたちにとっても。
このDVDには、大人になってどの場所で暮らしていても、子どもたちが飯舘村の一員であることを忘れず、村とのつながりを思い返す道具になればとの思いも込めています。“動く卒業アルバム”を見かえすとき、「飯舘村があったからこそ、仮設校舎での生活があったからこそ、今の自分がいる」と感じてもらえたらいいなと思っています。その思いが、村の絆となり、復興の原動力ともなるのではないかと信じています。
震災から2年あまり。子どもたちが再び飯舘村で暮らせる日はまだ分かりません。その日が1日でも早く訪れ、飯舘村の自宅で“動く卒業アルバム”を見られる日が来ることを願っています。
報道局 ニュースセンター 佐野正法
大人の想像を超える“創造力”と“たくましさ”
飯舘村の小学6年生が作る“動く卒業アルバム”。子供達があくまでも主役という中で、どこまで、どうやってサポートするべきか、約1年、手探りで悩みながらの活動でした。
完成した“動く卒業アルバム”には、原発事故によって変わってしまった現実も記録されています。3校からもちよったバラバラの机。マスクをしながら学校生活を送る子。そして、先生にお願いして撮影してきてもらったという原発事故前まで通っていた小学校の校舎も。みんなで勉強をした思い出の教室。壁や机の上には、授業で使っていたものがそのまま残されていました。
その一方で、映像には、とっても生き生きとした、明るい子供達の姿が溢れていました。チームごとに制作した“動く卒業アルバム”は、様々な個性がキラリと輝くものになっています。
例えば…、「エア授業」と題して、子供達が授業を再現!国語、算数、図工…。恐らく、それぞれの授業のシチュエーションをみんなで話し合って、撮影する人、先生役をする人、生徒役をする人を決めたのでしょう。見事にそれぞれが役割を演じていて、授業の様子がリアルに伝わってきました。
先生にインタビューしたチームは、先生が自分たちの成長をどうみていたのかを質問。先生は、「みんなの前でもしっかり声が出せるようになった」「みんなのこと考えてクラスをまとめられるようになった」「金魚鉢を使って実験していたように、将来研究者になって世のために活躍できる人になってください」と、成長ぶりや子供達へのエールも。先生の愛情が感じられる作品でした。
他には、家族への感謝の言葉をまとめたチームも。「お父さん、お母さん、私を生んでくれて、ありがとうございます」「困ったときに話を聞いてくれてありがとう」「11年間ここまで育ててくれてありがとう」と、子供の頃からの写真を撮影しながら説明し、家族への感謝の気持ちを言葉に。また、お友達同士をインタビューして、お互いのいいところを記録したり、未来の自分に向けてエールを送ったりと、”動く卒業アルバム“には、沢山の“思い出”と“想い”が込められていました。
この作品をまとめるまで、「撮影の仕方」「リポートの仕方」「編集の仕方」について何度か特別授業を行いましたが、テレビ局員の大人の想像を超える“創造力”に出会う事が出来ました。
そして、子供達は、仮設小学校、避難生活…と窮屈さをしいられる環境下でも、前を向いて成長する“たくましさ”をもっている…。この活動を通じて、一番、強く感じたことです。
子供達を見てきた大内教頭先生は、「飯舘村にいた時は、放課後にサッカーや田んぼなどでのびのび遊べる環境があったのが、今は避難場所がバラバラで近所に友達がいない分、みんなが集まる“学校”という場で楽しく過ごしたいという想いもあったのでは。そういう中でも、前向きに成長できる子供達のたくましさもある。子供達のいいところをどんどんのばして行ってほしい」とおっしゃっていました。
この活動をするにあたって、飯舘村立草野・臼石・飯樋小学校の先生、飯舘村教育委員会の皆様の多大なるご協力があって、形にすることができました。この場をかりて、御礼申し上げます。これからも、テレビ局員の私たちが、子供達のやる気を形にするお手伝いができればと思います。
編成局 アナウンス部 鈴江奈々
- 参加者
- 鈴江奈々(日本テレビ)
- 須賀宣之(福島中央テレビ)ほか