2021.1.10その19 福島県飯舘村 成人式オンライン交流会
鈴江奈々(編成局アナウンス部)
2011年原発事故により全村避難となった飯舘村。その翌年、よみひと知らずの活動で出会った当時小学6年生の子供達が、今年、成人式を迎える!ということで、コロナ禍でできる支援を飯舘村と話し合ってきました。
そうした中、感染拡大が深刻となり、成人式は中止に。そこで、オンライン上だけでも、久しぶりに集える機会を作れたらと、「新成人オンライン交流会」を開催することになりました。
小中学校生活の記録の中では、将来の夢についても語っていました。その夢の続きの話を、今回の「新成人オンライン交流会」で、大人になった彼らから聞くことができました。
当時から変わらぬ夢に向かって大学で勉強する子や、資格取得を目指して学んでいる子。そして、福島の復興に携わりたい、飯舘村に恩返ししたいという声も多く聞かれました。
「震災から10年たった飯舘村は、徐々に明るい元気な村になってきたけれど、まだまだ若い世代の力が足りていないと思う。自分たちが発信源となって、飯舘村を盛り上げられる存在になれたら」飯舘村の新成人のみなさんは、約10年、村外で暮らし、それぞれの道を歩んできましたが、変わらず、ふるさとを思う気持ちがありました。
新成人の言葉をYouTube配信で視聴していた役場の方からは、「村の新成人一人一人が、力を付けて大人の仲間入りをしてくれたことは、大きな喜びであり、希望でもあります。そして、多くの新成人が将来、村のために何かしたいと語ってくれたこと、感動しました。村、村民にとってもこのオンライン交流会はとても意味のある交流会だったと思います」と、御礼のメールを頂きました。
中止となってしまった成人式の代わりにはなりませんが、ささやかながら、私たちテレビ局員ができることを結集し、飯舘村の方や恩師の先生方にスマホで撮影など多大なるご協力いただき、新成人をお祝いするオンライン交流の場を作ることができました。
テレビの仕事は、思いのリレーでもあると常々感じます。そうした中で、約9年の交流から、今回、村外に住む新成人と村との思いの架け橋になれたことが、私たちにとっても大きな喜びを感じられる時間でもありました。
新成人のみなさんには、引き続き、絆を力にかえて、それぞれの夢に向かって力強く歩んでほしいと思います。
井上大輔(報道局映像取材部)
「よみひと知らず 福島飯舘村」の活動では4名のカメラマンが撮影を担当しており、当時小学6年生だった彼らの修学旅行や卒業式、さらに中学生となってからは文化祭をはじめとする学校生活に加え仮設住宅で暮らす避難者の方との交流などを経て立派に卒業するまでを記録してきました。
レンズ越しにまだ幼さの残る笑顔を見せてくれる中で、彼らが特に向き合うこととなった放射線への理解を深める授業や、それぞれの将来を語り合う座談会ではこの短い期間の中での彼らの成長を実感できる真剣な表情も。彼ら自身が残してくれたのは、全村避難を余儀なくされた青春時代の貴重な記録です。
我々が経験してきた成人式というのは、懐かしい顔ぶれがともに過ごしたふるさとで再会し、思い出や近況を語り合いながら人生一度の晴れ姿でともに新成人を祝いあう幸せな時間であったはずです。
このたび開催されました「新成人オンライン交流会」で少しでもその空気を作ることは出来ないかとの思いから、あの頃の景色がつまったVTRの上映をプロジェクトメンバーで企画しました。
編集を進める上では、新成人のみなさんが過ごした仮設校舎、土地、空気を思い出して欲しい、ということを大事にしました。深く刻まれているはずの、村の伝統芸能「田植え踊り」を披露した文化祭などに加え、季節感のある校舎の外観、学校生活の中のふとした表情や部活や地域活動に励む初々しい手足など、大切に表現したのは彼らの過ごした日常です。
交流会では、動く卒業アルバムをイメージした恩師からのお祝いの言葉も含め、喜んでいただけたようでした。コロナ禍を象徴する「オンライン」での再会となった新成人の、心をつなぐモノとなったとすれば、改めてカメラマンのやりがいを感じます。
- 参加者(日本テレビ)
- 鈴江奈々(アナウンス)
- 久野崇文(配信)
- 星川英紀・岩間俊・井上大輔 (カメラ)
- 高柳裕美・加藤聡・室伏周平(報道)