• 1月24日(土)深夜2:55〜3:55

  • 指 揮 オスモ・ヴァンスカ
    管弦楽 読売日本交響楽団
    司 会 古市幸子(日本テレビアナウンサー)
  • ベートーヴェン作曲 交響曲第6番「田園」

※2008年11月27日 東京芸術劇場にて収録


ベートーヴェン作曲 

《交響曲第6番「田園」》

『ヴァンスカ・ベートーヴェン交響曲シリーズ』のプログラムも含め、読響と幾度も共演を重ねてきた指揮者、オスモ・ヴァンスカさん。今回は、彼のこだわり抜いた音楽作りによって、今まで聴いたことのない、新しい魅力で溢れた「田園」を新発見することができました。
しかし一体、なぜ、「田園新発見!」なのでしょうか・・・?
今回の公演について、音楽評論家の奥田佳道さんにお話を伺いました。

〜  音楽評論家  奥田佳道 × 日テレアナウンサー 古市幸子  〜
古市:今回の指揮者、オスモ・ヴァンスカさんとは?
奥田:オスモ・ヴァンスカさんは、1953年フィンランド生まれ、北欧を代表する世界的指揮者
   です。 彼のキャリアで注目すべき点は、「ラハティ交響楽団」。フィンランドの小さな
   町の、知る人ぞ知るオーケストラだったんですけども、ヴァンスカさんがそのオケを鍛えて、
   レコード会社がそれを録音して世界に発売したら、「こんな素晴らしいシベリウス
   聴いたことない!」となったんです。彼はトレーナーとしての才能も発揮された
   わけですね。
   そして現在、我が読響常任指揮者スクロヴァチェフスキさんも過去に務めたという、
   アメリカ「ミネソタ管弦楽団」の音楽監督として大活躍しています。


ミネソタ管弦楽団
古市:「ミネソタ管弦楽団」ってどんなオーケストラなんですか?
奥田:アメリカのオーケストラの中では、ヨーロッパテイストを持っているオーケストラですね。本当にいい
   オーケストラです。激しさ、たくましさ、だけではなく、弦楽器の響きがとても豊かで特徴があるので、
   今までもいろんな指揮者が“弦を生かした音楽作り”をしてきたんですが、ヴァンスカさんがさらに
   「ミネソタ」をスケールアップしているというのは大変嬉しいです!

古市:そんなヴァンスカさんが今日指揮してくださるのは、今日ベートーヴェン交響曲第6番「田園」
   ですが・・・。

奥田:そうなんです。彼は今、ベートーヴェンに夢中なんです!ミネソタ管弦楽団とベートーヴェン
   交響曲全曲をCD録音し、そして、読響とも「ヴァンスカ・ベートーヴェン交響曲シリーズ」の
   プログラムを組んでいて、今日やっと第6番に来た!ということなんです!
   しかも、今回の「田園」はちょっと一味違うんですよ。

古市:えっ?具体的にどう違うんですか??
奥田:まず、オーケストラの配置が、普段と
   異なり、手前に1stヴァイオリン、指揮台を
   挟んで2ndヴァイオリン、そして舞台下手にコントラバス、ベートーヴェンの
   時代はこうだっただろう、ということで。弦楽器の音の流れに、ものすごく
   こだわっているんです。それに、ダイナミックレンジがとても広くて、
   ピアニッシモは限りなく小さく、激しい所は本当に激しく。今までに
   聴いたことない「田園」が聴けると思います。


《楽団員さんたちへインタビュー》
Q ヴァンスカさんの「田園」について・・・・・・

首席オーボエ奏者:辻 功
今回ヴァンスカさんは、「破壊と創造」ということをやっていると思います。
譜面を読み直して、余分な表現を排除し、その後にご自分のやりたいことを
やっているので、非常におもしろい、今までにない「田園」になりそうです。

ヴァイオリン奏者:小杉芳之
1番印象的なのは、メトロノームを使って、緻密なリズム練習をしたことですね。
硬い石から削り出したような精巧なベートーヴェンが聴けると思います。

ソロ・ヴィオラ:鈴木康浩
とりあえずテンポ、テンポ、テンポ。書いてないルバートは絶対しないですね。
ベートーヴェンの心情として、譜面をしっかり読んで、その通りに弾く、
というのが彼の信念で。書いてないリットは本当に全然しないです。

首席クラリネット奏者:藤井洋子
ヴァンスカさんは、元々クラリネット奏者なので、クラリネットのウィークポイントを
よくご存知で、厳しいですが鍛えられがいがありますね・・・。

首席トランペット奏者:田島 勤
今回私たちは、真っさらな楽譜を用意して望みました。ヴァンスカさんは、
それを設計図として見て、そこからベートーヴェン像を浮かび上がらせるような
練習方法をとっていました。

ソロ・コンサートマスター:藤原浜雄
ベートーヴェンの原譜にかなり近いであろうとされている“ベーレンライター版”の楽譜にかなり忠実に音楽作りをしています。我々の、長年の間に出来た習慣なのか伝統なのか、僕らが思い込んでいたものをかなり排除しているので、そういう意味では、本当に新鮮に感じています。


《指揮者オスモ・ヴァンスカ氏へインタビュー》
Q 「田園」の解釈について・・・・・
A 音楽に自然の音を取り入れるのは革命的なアイデアで、人間模様さえも、
  具体的に表現しています。力強い雷鳴の効果によって、人々は秋の訪れを
  感じるのです。
  しかし、忘れないでください。当時この曲は「うるさくて、まとまりがなく、
  聴いてはいられない」と思われていたのです。
Q 「ベーレンライター版の楽譜」の使用について・・・・・
A 作曲家が抱いていたオリジナルの構想に立ち返るのは、表現者の私にとって興味深いことであり、常にそれを
  捜し求めるようにしています。私はベーレンライター版をとても評価しています。原点に立ち返ることにより、
  ありのままのパワフルな考えを見出すことが出来ると思います。


《今回使用した、ベーレンライター版の楽譜》
ベートーヴェンが作曲したものに1番近いとされている、ベーレンライター版の楽譜に付けられている標題は以下の通り。これまでに言われてきたものとは少し違います。日本語訳は、奥田佳道さんに作成していただきました。

第1楽章
Angenehme,heitere Empfindungen,welche bei der Ankunft auf dem Lande im Menschen erwachen
田舎に到着した時に目覚める、喜ばしい快活な気持ち


ベーレンライター版の楽譜
第2楽章
Szene am Bach
小川のほとりの情景

第3楽章
Lustiges Zusammensein der Landleute
農夫の楽しい集い

第4楽章
Donner. Sturm
雷鳴、嵐

第5楽章
Hirtengesang Wohltatige,mit Dank an die Gottheit verbundene Gefuhle nach dem Sturm
羊飼いの歌、嵐の後の神への感謝に結びついた、慈愛の気持ち

オスモ・ヴァンスカ (指揮)
Osmo Vanska(conductor)
1953年生まれ。 シベリウス・アカデミーでヨルマ・パヌラに師事。1982年ブザンソン国際指揮者コンクール(フランス)での優勝を機に、活躍の場を世界に広げる。 1988年にラハティ響首席指揮者兼音楽監督に就任、以来タピオラ・シンフォニエッタ音楽監督、アイスランド響首席指揮者、BBCスコティッシュ響首席指揮者を歴任し、現在はミネソタ管音楽監督、ラハティ響桂冠指揮者の地位にある。客演指揮者としても、ボストン響、シカゴ響、クリーヴランド管、ニューヨーク・フィル、フィラデルフィア管、ベルリン・フィル、チェコ・フィル、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管、ロンドン・フィル、フランス国立管、ロイヤル・コンセルトヘボウ管など世界一流のオーケストラに招かれている。 これまで、BISレーベルにシベリウス及びニールセンの交響曲全集を残しており、ミネソタ管とのベートーヴェン交響曲全集もリリースされた。 2001年、クラシック音楽への貢献に対しロイヤル・フィルハーモニック協会賞を受賞。 読売日響には2002年、04年、05年、07年に続き、5度目の登場となる。