7月8日(水)深夜2:54〜3:54

指 揮 下野竜也
管弦楽 読売日本交響楽団
司 会 古市幸子(日本テレビアナウンサー)

シューマン作曲:
交響曲第4番
《下野竜也によるスペシャルレクチャー》
〜シューマンがスコアに託した想い〜

※2009年6月3日 すみだトリフォニーホールにて収録

《特別企画!下野竜也のスペシャルレクチャーコンサート開催!》
今回、番組特別企画として、「下野竜也によるレクチャーコンサート」を開催いたしました。シューマンの交響曲第4番を演奏する前に、読売日本交響楽団正指揮者・下野竜
也さんが、「この曲が作られた時のエピソード」や、「楽譜に記された音符や記号を、どのように演奏に反映させていくのか」といったことを、スクリーンを使って楽しく分かりやすく解説。会場のお客様も、初めて明かされる“マエストロ下野の音楽創りの裏側”を見ることができ、興味津々な様子で聞いていらっしゃいました。ここでは、その内容を少しだけご紹介しましょう。

〜 シューマン作曲 交響曲第4番 〜
《曲の背景》

ロベルト・シューマン

シューマン(1810-1856)が生涯2番目に作曲した交響曲で、妻・クララへのプレゼントとして書かれたものです。しかし初演の演奏会では、人気ピアニストだったクララとフランツ・リストも共演。その陰にすっかり隠れてしまったこの交響曲は、良い評価を得ることが出来ませんでした。さらに、指揮者は予定されていたメンデルスゾーンから代役に変更されるなど、悪条件が重なり、楽譜の出版は見送られることとなったのです。
しかし10年後、交響曲第2番・第3番「ライン」の成功を受け、シューマンはこの曲を改訂。ようやく出版に至り、世に送り出されました。

〜 楽譜の様々な箇所から、シューマンの心情を読み取る 〜
《第1楽章冒頭の旋律》・・・この曲のテーマ


この曲は、「第1楽章冒頭の旋律」が曲全編に渡って様々な形で登場してきます。
その変化から、シューマンの心情を読み取ってみよう。

●第1楽章は楽譜にクレッシェンド(<)・デクレッシェンド(>)がありますが、第2楽章にはついていません
  ⇒第2楽章は、「回想シーン」 ・・・・下野さんは、あえて淡々と演奏することで「夢の中」の現実味がない雰囲気を作り出し、
                          他の楽章との差別化を演出します。

●第2楽章半ばで、この旋律の別バージョン(長調)がコンサートマスターのソロで奏でられます。
  ⇒シューマンが素敵な女性をイメージして書いた=「クララの思い出」・・・・好きな女性のことを思い出しているかのような
                                                  キラキラとした旋律です。

《音の衝突》
第1楽章半ばで、チェロ、コントラバスの音(ラ)と、ヴァイオリンの音(シ♭)が重なる所がある。
これら2つの音は、音の差が半分しかないので「半音」であり、ぶつかってしまう・・・・気持ちのぶつかり合い!?
 ⇒チェロ・コントラバスの4部音符に、
  クララへの切ない想いが託されている!・・・・一筋縄では行かない恋心。シューマンのクララへの想いを楽譜の中に
                                    見つけながら、音楽は作られていきます。



〜 楽員の皆さんにも、この曲に対する様々な思いを聞いてみました! 〜
ティンパニ  菅原 淳さん
難しいところ:第1楽章 練習番号M(313小節〜) 
その理由:他楽器が16分音符であるのにティンパニだけが8分音符でさびしい。
1人だけ飛び出している感じがするが、ハマるとちょっと気持ち良かったりも!?

ヴィオラ  渡邉千春さん
好きなところ:第2楽章 392小節〜
その理由:ヴィオラのメロディが素敵だから!
主役ではないけれど、弾いていてとても
気持ちいいんです♪


同じ箇所を選んだお二人
トロンボーン 纉c(くわた) 晃さん
難しいところ:第2楽章 394小節〜
その理由:オーボエと一緒のメロディが弱奏で、 高音域の為難しい。いかにオーボエの邪魔に ならないように吹くか、が重要なので・・・。


ヴァイオリン 榎本吉孝さん

楽しいところ:第4楽章 練習番号AA(811小節〜)
その理由:木管楽器と1stヴァイオリンがメロディを弾き、ホルンと2ndヴァイオリンが
リズムを刻んでいる。その後打ちのリズムが、クライマックスに向けて躍動感を
与えているところなので。


下野竜也(Tatsuya Shimono) 読売日本交響楽団正指揮者
06年読売日本交響楽団正指揮者に就任。
鹿児島大学教育学部音楽科、桐朋学園大学音楽学部附属指揮教室、キジアーナ音楽院、ウィーン国立音楽大学で指揮を学ぶ。97年から99年まで大阪フィル指揮研究員として、故朝比奈隆氏の薫陶を受ける。以後国内外で数多くのオーケストラと共演。読売日響とは《下野竜也・ドヴォルザーク交響曲シリーズ》や《下野プロデュース・ヒンデミット・プログラム》など意欲的な活動を展開、後者の公演は文化庁芸術祭優秀賞を受賞している。
東京国際音楽コンクール<指揮>優勝、ブザンソン国際指揮者コンクール優勝、出光音楽賞、渡邉曉雄音楽基金音楽賞、新日鉄音楽賞・フレッシュアーティスト賞、齋藤秀雄メモリアル基金賞受賞。上野学園大学音楽文化学部教授。