作曲家
フェリックス・メンデルスゾーン
今回のキーパーソンは、メンデルスゾーン!
メンデルスゾーンといえば、「ヴァイオリン協奏曲」や《真夏の夜の夢》の「結婚行進曲」が有名ですが、実はこの方、音楽史上、様々な伝説を残してきた人物なのです!
ということで・・・、今回の指揮者でもある、読響正指揮者の下野竜也さんに、その真相について解説していただきました。
メンデルスゾーンといえば、「ヴァイオリン協奏曲」や《真夏の夜の夢》の「結婚行進曲」が有名ですが、実はこの方、音楽史上、様々な伝説を残してきた人物なのです!
ということで・・・、今回の指揮者でもある、読響正指揮者の下野竜也さんに、その真相について解説していただきました。
題して、
《メンデルスゾーン伝説》
下野:彼のお父様は、ものすごいお金持ちの大変有名な銀行家で、
それに、おじいさんはカントにまで影響を与えたことが
あるぐらい有名な哲学者だったり。お金持ちの上に、
由緒ある家柄だったんです。
ライプツィヒの家にある音楽サロン(復元)
古市:お金持ちの度合いというのは?
下野:メンデルスゾーン一家がベルリンに移った時の家は、庭に
コンサートホール級の広間があって、週に1回“日曜コンサート”
といって、お父さんが音楽家、オーケストラを雇って、
毎週のようにコンサートを開いていたんです。趣味も多くて、
乗馬、チェス、ビリヤード、絵画などがあり、中でも、
彼が描いた水彩画が幾つか残ってるんですが、もうプロ級ですね。
下野:時代も環境も違うし、一概に「早熟」と言い切っていいのか分からないですが、モーツァルトより早熟だった面は、
いっぱいあったと思います。たとえば、「交響曲第1番」をモーツァルトは10歳に満たない時に書いていて、
メンデルスゾーンは15歳で書いています。ですが!!その曲の“規模”というのは、メンデルスゾーンの作品のほうが
非常に本格的で、完成されているんです。しかも交響曲第1番の前に、さらに十何曲か、「弦楽器のための交響曲」を
書いているので、早熟ぶりと天才ぶりは、押して図るべし、という感じです。
古市:バッハは、メンデルスゾーンよりも、100年以上前の作曲家ですよね?
下野:当時としては、自分たちが生きている時代よりも昔の作品を演奏する、
という習慣があまり無かったんだそうです。
古市:ええっ!!小学校の音楽で、1番最初に習うぐらいなのに・・・!
下野:バッハという名前は知られていたとしても、バッハの作品を鑑賞する、
ということは当時無かったみたいです。そして、確かメンデルスゾーンが
14歳ぐらいの時に、おばあさんに「マタイ受難曲」のスコアを
プレゼントされたんです。そのスコアを見て、メンデルスゾーン少年は
「これはいい曲だ!なぜ演奏されないんだろう?」と。そして
20歳ぐらいの時、演奏が実現しました。そしたらそれがとっても素晴らしい演奏で、バッハが見直されたんです。
古市:その演奏をきっかけに、多くの人がバッハの素晴らしさを知ることになった、と・・・?
下野:そうです。だから、彼は音楽史上最大の功績を残してくれた、ということですね。
下野:現代の指揮者の基を作った方、と言っていいと思います。
古市:昔は、いなかったんですか?
下野:はい。昔はコンサートマスターが率先して、音楽家が自主的に演奏していたんです。そんな中、音を出さない人物が
出てきて、スコアを前に置き、何やら腕を振り始めた。その第1号、と言って良いと思います。
昔の作品は演奏しない、という習慣を止めたのもメンデルスゾーン。難しいだけ、と認識されていたベートーヴェン作品を、
素晴らしい作品だといってプログラムにどんどん取り入れたのもメンデルスゾーン。そして、ゲヴァントハウス管弦楽団の
基のオーケストラの指揮者になり、オーケストラの運営や音楽的な指導も始めました。
それから、“指揮棒”を最初に使った人がメンデルスゾーンだ、と言われています。
古市:え??昔は指揮棒を持たずに?
下野:無かったんです。だから、ヴァイオリンの弓で指揮したり、
楽譜を丸めて振ってたらしいんです。当時の指揮棒は、
骨になめし皮を巻いたり、象牙で作られていたりしたそうですが。
古市:ずいぶん高価な感じですね・・・!
下野:“咳払い”もあるんですが、実は彼は、楽章と楽章の間の拍手を避けたかった、らしいです。
古市:え??でも、現代のクラシックコンサートを考えると、楽章と楽章の間に拍手をする方はあんまりいらっしゃらないですよね?
下野:今でこそ、最後まで聴いて拍手してくださる、というのが定着していますが、当時は、演奏が良かったら楽章が終わって
すぐ、皆で拍手するわけです。今みたいに、CDがあったりしないので、「良かったから(今の楽章を)もう一度やって!」と、
アンコールなどしてたらしいです。
古市:ええーっ??気持ちは分からなくは無いですが。
下野:だから、メンデルスゾーンは、その楽章ごとに拍手が来るよりも、曲全体を1つの作品として捉えてほしかった、
だから間に何かが入って中断されるのが嫌いだった、らしいんです。なので、彼の曲は全部繋げて演奏するような
仕組みになっている曲が多いですね。
♪交響曲第5番「宗教改革」
「第5番」と付けられているが、実際にはメンデルスゾーンが、2番目に作った交響曲。
作品冒頭に登場する、ドイツの賛美歌「ドレスデン・アーメン」と呼ばれる音形が印象的。これは、ワーグナーの《パルジファル》にも「聖杯の動機」として用いられている。
メンデルスゾーン
交響曲第5番のスコア
ワーグナー
「パルジファル」のスコア
♪ピアノ協奏曲第1番
ファンファーレなどを繋ぎに用いて、楽章間に休みを無くしているのが大きな特徴であり、ロマン派の協奏曲らしい、情感豊かで華やかな作品。
今回のピアニスト、小菅優の美しいピアノの音色が、どこをとっても美しいメンデルスゾーンの音楽と、相乗効果を生み出している。