4月13日(水)深夜26:04〜27:04

指 揮 下野竜也
テノール 吉田浩之
男声合唱 新国立劇場合唱団
     (合唱指揮:冨平恭平)
管弦楽 読売日本交響楽団
司 会 古市幸子(日本テレビアナウンサー)

池辺晋一郎作曲:
多年生のプレリュード−オーケストラのために
(2010年度読売日響委嘱作品、世界初演)

リスト作曲:
ファウスト交響曲から

※2011年1月22日 サントリーホールにて収録



読売日本交響楽団は、東日本大震災で犠牲になった方々への哀悼の意を表するため、3月19日の演奏会の冒頭で、バッハ作曲「G線上のアリア」を演奏しました。

演奏会終了後の会場ロビーでは、正指揮者・下野竜也さんと読響の
メンバーが義援金の呼びかけを行い、翌日の演奏会と合わせ
157万978円の義援金が寄せられました。

震災で亡くなられた方々のご冥福と被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。


第500回記念定期演奏会
今回は、読響正指揮者・下野竜也さんをお迎えして、読響の記念すべき第500回目の定期演奏会の模様をお送りしました。

下野竜也
2006年 読響初代「正指揮者」に就任
ヒンデミットとドヴォルザークを軸に新作の初演や知られざる作品の紹介など意欲的なプログラミングに取り組んでいる

〜 下野竜也 × 古市幸子 〜

古市:読響の定期演奏会は1963年に始まったということですけれども、
   「定期演奏会」というシリーズにはどういう特色があるのでしょうか?

下野:いわゆる名曲や有名な曲だけではなく、珍しい曲、普段
   取り上げられない曲を取り組むという実験的な面もあり、あとは
   そのときの常任指揮者の方が決めたテーマに従って、色々な曲を
   演奏していく、オーケストラの顔となるような演奏会です。

古市:「定期演奏会」というのは、指揮者やオーケストラの方々にとっては
   どんな意味合いを持つ演奏会なのでしょうか?


下野:どの演奏会も一緒で、一生懸命演奏するんですけれども、例えば
   指揮者にとっては定期演奏会に呼んでいただくことは非常に名誉な
   ことなんですね。オーケストラがこの指揮者に、その場のすべてを
   懸けるというような、重要な意味合いを持つんですね。

古市:読響の定期演奏会では、数多くの委嘱作品を初演してきたと
   いうことですが、これまでにどんな曲を演奏されたのでしょうか?

下野:三善晃さんや西村朗さんの作品、あとアルブレヒトさんの時代の
   2001年からは若手の作曲家にどんどん委嘱するというシリーズを
   作っていらっしゃったので、そういう作品が定期演奏会に向けて
   委嘱されて演奏されています。


過去の委嘱作品
三善晃/アン・ソワ・ロアンタン 1982年12月8日 第191回定期演奏会
西村朗/星曼荼羅 1992年4月25日 第294回定期演奏会
伊東乾/交響楽 2001年7月6日 第396回定期演奏会
望月京/メテオリット 2002年6月28日 第406回定期演奏会
菱沼尚子/エルドラド2003年7月5日 第418回定期演奏会
斉木由美/アントモフォニーIII 2004年6月12日 第428回定期演奏会
猿谷紀郎/ここに慰めはない 2005年5月27日 第438回定期演奏会
原田敬子/アザー・サイドII 2006年7月1日 第450回定期演奏会
細川俊夫/ダンス・イマジネール 2007年10月22日 第464回定期演奏会
山根明季子/ヒトガタ 2008年5月19日 第471回定期演奏会
藤倉大/アトム 2009年4月7日 第481回定期演奏会

2010年度読売日響委嘱作品
池辺晋一郎作曲 多年生のプレリュード−オーケストラのために


古市:そして今回の第500回記念定期演奏会では、池辺晋一郎さんへの委嘱作品、「多年生のプレリュ ード」が
   世界初演されることとなりましたが、こちらはどんな曲なのでしょうか?


下野:今回どの作曲家の方にお願いするかオーケストラの中で
   話し合いがあったのですが、ここはひとつ日本の大ベテランの方に
   お願いしようということになりました。
   それで池辺先生にお願いしたんですけれども、
   「第500回という記念の演奏会なので、打ち上げ花火みたいな
   スカッとかっこいい曲を書いてください」
   と僕が勝手に言ったんですね。それで
   「じゃあ、ドロドロ〜とした曲ではなくて華やかな曲を書いてみよう」
   ということで書いてくださいました。
   今回オーケストラもすごく池辺先生の曲に乗って弾いていると思います。
   日本のテイストが少し聞こえてきてとても暖かい部分もありますけれど、颯爽としたかっこいい曲だと思います。


池辺晋一郎インタビュー
Q.「多年生」というキーワードについて
僕は個人的な思い出がひとつあって、読響の第1回目のコンサートのための非公開の練習を高校生のときに聞いているんです。読響のそもそもの出発点を知っているので、思いが集まってそこから思いついたタイトルですね。そこに芽や穂があったとすれば、そこから延々と繋がってきて、植物といえば1年ごとに繰り返す1年草とか2年草とかいう草花がありますが、それに比べれば毎年必ず花が咲く多年草なわけですよね。その間にももちろん寒い冬もあるし、苦しいこともあるし大変なこともあっただろうけど、ずっと繰り返し繰り返し演奏を続けてきたということは、まさに多年生だなという感じですね。読売日本交響楽団に関する僕の感覚や思いが「多年生」という言葉を思いつかせたんだと思います。


リスト作曲 ファウスト交響曲

古市:読響の定期演奏会の抱負をお聞かせいただけますでしょうか。
下野:定期演奏会というのは、オーケストラが「私たちは定期的に
   こういうことを取り組んでいます」と報告するような場でもありますし、
   報告と同時に、読響が日本中・世界中に音楽的なメッセージを発信する
   というとても重要な演奏会のシリーズだと思います。定期演奏会には
   定期会員の方がいらっしゃるのですが、そのお客様にとって
   「今日は何を聞かせてくれるの?」という感じです。
   例えばなじみのレストランにいくようなもので、
   「じゃぁ今日はシェフのおまかせで」という感じ。
   「今日はこんなものがありますよ。いつも食べているのとちょっと違った
   アレンジのお料理ですが」みたいな。
   「こういう曲もありますよ。聞いてみてください。でもこういうのばかりだと嫌でしょうから名曲もどうぞ」というようなバランスも
   考えていますが、読響の正指揮者としての自分の役割としては、秘曲というか今まで知られていない曲、滅多に
   取り上げられていない曲をオーケストラと一緒に取り組んでお客さんに聞いていただくという、ある意味前衛的な面と、
   そしてオーケストラがいつもレパートリーとして繰り返す、例えばスクロヴァチェフスキ先生のブルックナーのような曲を
   何回も取り上げて深く掘り下げていく、というような色んな面があると思うんですね。

古市:では下野さんが指揮をされる日は下野シェフのお任せ料理が出てくると思って行ったらいいでしょ うか?
下野:僕はほとんど珍味担当ですね。「まぁ食べてごらんね。騙されたと思って」みたいな曲ですけれども。
   そういう気持ちでお客さんの好奇心をくすぐるようなプログラムをご提供できればいいなと思っています。

古市:定期演奏会500回記念のクライマックスを飾る曲は何でしょうか?

下野:今年メモリアルイヤーのリスト作曲ファウスト交響曲を取り上げました。
   第500回ということなので、ひとつの節目として、今までの歴史と
   これからの将来への夢を描いたりする機会としてはとても良いと
   思い、何か大きい祝祭的な曲がいいんじゃないかと思って。
   それで今年はリストのメモリアルイヤーなのでなかなか取り上げられない
   ファウスト交響曲という、ゲーテ・シラー・ヴィーラントの記念碑除幕式の
   祝典で初演されていて、第500回を記念するにふさわしい規模の
   曲かなということでこの曲を選びました。


古市:交響曲にテノールと合唱が入っているということですが・・・
下野:まるで第九みたいに思われるかもしれませんが第九とは
   ちょっと趣が違います。元々この曲にはテノールと合唱は入って
   いなかったんですけど、後でリストが加えました。

古市:どういう意図があったのでしょうか?
下野:ファウストという物語のメフィストフェレスという悪魔の音楽で
   終わるのですが、「救済」されるというのがあってやっと気持ちが
   落ち着きます。この物語の部分を後で付けることによってバランスを
   とったんだと思います。



今回から新コーナーが始まりました!
その名も・・・

首席ファゴット奏者 吉田将さん
教えて読響!ココが聴きどころ!!
〜メンバーが語る演奏会のツボ〜


4月23日(土)PM6:00 東京オペラシティ 
   24日(日)PM2:00 横浜みなとみらいホール
   25日(月)PM7:00 サントリーホール


指揮:シルヴァン・カンブルラン(読売日響常任指揮者)
モーツァルト/交響曲第38番 ニ長調 K.504〈プラハ〉
ヤナーチェク/狂詩曲〈タラス・ブーリバ〉
スメタナ/連作交響詩〈わが祖国〉より 交響詩〈モルダウ〉
ヤナーチェク/シンフォニエッタ

モーツァルトの交響曲第38番は、すごく充実した和声感とファゴットも内声を吹く喜びのようなものを最大限に感じられる名曲です。ヤナーチェクのシンフォニエッタは、ほとんど吹くところがないという意味でファゴット吹きの間では非常に有名な曲です。ですから舞台の上でどのような格好で、吹いていないところを待つかということを今から考えているところです。


コンサートの詳細は読売日響ホームページ http://yomikyo.or.jp/をご覧下さい。

下野竜也(読売日響正指揮者)Tatsuya Shimono(conductor)
06年読売日本交響楽団正指揮者に就任。
鹿児島大学教育学部音楽科、桐朋学園大学音楽学部附属指揮教室、キジアーナ音楽院、ウィーン国立音楽大学で指揮を学ぶ。97年から99年まで大阪フィル指揮研究員として、故朝比奈隆氏の薫陶を受ける。以後国内外で数多くのオーケストラと共演。読売日響とは《下野竜也・ドヴォルザーク交響曲シリーズ》や《下野プロデュース・ヒンデミット・プログラム》など意欲的な活動を展開、後者の公演は文化庁芸術祭優秀賞を受賞している。
東京国際音楽コンクール<指揮>優勝、ブザンソン国際指揮者コンクール優勝、出光音楽賞、渡邉曉雄音楽基金音楽賞、新日鉄音楽賞・フレッシュアーティスト賞、齋藤秀雄メモリアル基金賞受賞。上野学園大学音楽文化学部教授。
吉田浩之(テノール) Hiroyuki Yoshida(Tenor)
瑞々しく伸びやかな美声と叙情性豊かな表現力で聴衆を魅了し、高い評価を受けている我が国期待のリリコ・レッジェーロ・テノール。〈こうもり〉アルフレード役でオペラ・デビュー以来、新国立劇場、東京フィル・オペラコンチェルタンテ、二期会、日生劇場、びわ湖ホールなどの数々の公演に出演。ミサ曲、オラトリオ等のソリストとしても卓越した歌唱に定評があり、小澤征爾、大野和士、チョン・ミョンフン、クリスティアン・アルミンク等の指揮のもと、国内外のオーケストラと共演している。国立音楽大学声楽科卒業。東京芸術大学大学院オペラ科修了。二期会オペラスタジオを優秀賞で修了。松村勇、布施隆治、渡辺誠、渡邊高之助、高橋大海、故山路芳久、M.コラチッキ、S.ローチ、A.ポーラの各氏に師事。1990年、モーツァルト没後200年記念国際モーツァルト声楽コンコルソ本選入賞。翌91年、文化庁派遣芸術家在外研修員としてローマに留学。97年には第25回ジロー・オペラ賞新人賞受賞。東京芸術大学音楽学部声楽科准教授。福井県敦賀市出身。