≪読響オーボエセクション座談会≫
今回は、読響のオーボエセクション4名に勢揃いしていただき、オーボエについての素朴な疑問や、裏側について
色々お話を伺いました!
読響オーボエセクション紹介!
首席オーボエ奏者
蠣崎耕三
首席オーボエ奏者
辻 功
オーボエ奏者
北村貴子
オーボエ奏者
浦 丈彦
古市:オーボエセクションの皆さんが全員揃うというのは非常に珍しい
ことですよね?
蠣崎:そうですね。僕と辻さんが揃わないんですよね。一緒に吹くことが
ないので、仕事では全然会わないです。いつも出番を決めるため、
メールのやりとりはものすごく頻繁にやっているんですけど。
辻さんとのメールがすべての友達の中で一番多いくらいです。
古市:オーボエセクションの中でも紅一点の北村さんですが、
在籍2年ということで一番フレッシュなメンバーなんですよね。
北村:昔から憧れていた先輩オーボエ奏者の方々と一緒に仕事が
出来るという素晴らしい環境で、もう毎日本当に幸せです。
上を見ながら仕事が出来る感じで、なんとか追いつこうと頑張っている毎日です。
古市:オーボエセクションが一堂に会されるとどんな話をされるんですか?
浦 :オーボエの話と言いたいところですが、その話をすると意外と深刻になってしまいます。やはりみなさんリードを
各々抱えているので…。家に帰ってリードを作るのですが、曲によって色々と変えたりします。
蠣崎:例えば大きい音やしっかりした音中心の曲用に用意するリードと、繊細な曲用に用意するリードは違いますし、
オケで吹くリードとソロで吹くリードもちょっと違いますし、いつもナイフをもってチリチリと削っていないといけないんですよ。
古市:リードって何で出来ているんですか?
蠣崎:ケーンという植物の茎です。川辺に生えている、日本でいう葦の親戚なんですけど、直径10ミリくらいの細い茎を切って
3つに割って、長さを切って幅を揃えて1/100ミリ単位で削れるカンナで厚さを削って、説明するとキリがないような
工程を踏んでリードになります。
古市:そんな細かいリードの調整もお一人お一人がされるしかないんですよね?
辻 :そうですね。僕はリードの先端が9/100ミリくらいにしているんですけど、皆さんはどうですか?
全員:考えたことないです。
辻 :皆さんは測ってないんですか?
蠣崎:僕は光に透かして見ているだけなので…。
チューニングはなぜオーボエ?
古市:オーボエというとチューニングのA(アー)の音を最初に出す
楽器ですが、これは何故オーボエの役割なんですか?
蠣崎:例えば寒い日の朝のリハーサルに、他の楽器よりもオーボエが
一番温まりやすい、ピッチが早く安定するという意味で
オーボエになったというのが一番有力な説です。
古市:でもちょっと不満そうなお顔が…。
蠣崎:他の楽器だったらいいのにな、と思いますね。
チューニング嫌ですよね?
辻 :そうですね。
蠣崎:本当に嫌です。人より一番最初に音を出さなくてはいけないのがすごく苦痛なんです。
浦 :僕は読響に入る前は他のオケで1番を吹いていたんですけど、ここへ来てこのチューニングのAを吹かなくていいと思うと
ストレスの半分以上が減りました。
古市:そんなに心の負担だとは全然知らずに聴いていました!
イングリッシュホルンについて
ドヴォルザーク作曲
交響曲第9番「新世界から」
第2楽章
違うので両方掛け持ちするのは大変なんですよね?
浦 :そうですね。2ndオーボエというのは目立ってしまうと駄目というか、隠れてお仕事を
しなければいけないんですけど、イングリッシュホルンはほとんどがソロなんです。
それもあるので、メンタルの切り替えの方がきついですね。
楽器の方はオーボエの方が数段難しいと思うんですけど。
北村:普通は、新世界は持ち替えではなくやるんです。2ndとイングリッシュホルンとで
分けて演奏するんですけど、浦さんがわざわざ一緒にやりたいとおっしゃるので、
読響では持ち替えてやっています。
浦 :イングリッシュホルンは3楽章も4楽章もずっと吹かないので、失敗したときの
ことを考えるとずっと廊下に立たされている気分で3楽章・4楽章の間
座っていないといけないんですよ。吹いていれば気がまぎれるので…。
〜今回のプログラムについて〜
R.シュトラウス/13管楽器のためのセレナード
古市:この曲は管楽器だけのアンサンブルですが、いつもの
オーケストラの演奏と違ってどんな魅力がありますか?
浦 :そうですね。やはり弦楽器というのは弓を使って弦を擦るので、
発音体が同じなんですよね。ところが管楽器というのは金管と
木管はもちろん違いますし、木管の中でもリード楽器があり、
リードもシングルリードとダブルリードとがあって音源が違います。
ダイレクトに呼吸・息の感覚が出てくるというのが聴いていて
楽しいですね。
ソリスト蠣崎耕三 オーボエ協奏曲
古市:蠣崎さんのオーボエの魅力というと改めてどんなところになりますか?
辻 :まずとても美しい音色だと思います。それからビブラートがたくさんかかった豊かな表現力と表情だと思います。
今日は彼がR.シュトラウスのオーボエ協奏曲を、どのような表情をつけて吹くのか非常に楽しみにしています。
古市:さてこの「オーボエ協奏曲」ですが、オーケストラの中にオーボエではなくてイングリッシュホルンだけが
入っているということなんですけど、今回そのご担当は北村さんですね。いかがですか?
北村:オーケストラの中でイングリッシュホルン一人で吹くということが少ないので、
一番最初にチューニングのAをイングリッシュホルンで出さないといけないんです。
普段はオーボエの一番の方が嫌々ながらも吹いて下さっているんですけど、
今回それを私がやらなければいけないんです。しかもイングリッシュホルンで…。
吹くと大体弦楽器の方がバっとこちらを向いて「何か変な音がする」という感じで
すごく見られるので、いつもそこで一番緊張します。
古市:曲よりもチューニングの方が緊張するんですか?
北村:はい。まずそこですごく緊張します。ソロのオーボエと普段の距離感が全然
違うので、いつもの感覚で吹いてしまうとすごく遅れてしまうので、なるべく
前に前にと気をつけて吹いています。
古市:この曲の全体的な魅力というとどんなところでしょうか?
蠣崎:R.シュトラウスは僕の大好きな作曲家なんですけど、すべての作品を
ひっくるめて彼の人生を表しているような作曲家です。
「男から見た人生」とかそういったものを曲にしたものばかりです。
「ドン・ファン」「ドン・キホーテ」などみんな男目線からの曲なんです。
一般的には言われていないかもしれませんが、このコンチェルトも男の人生を
語っているような、男の優しさや愛がにじみ出ているような曲だと思います。
その辺が格好良いなと思っています。
木管アンサンブル
ヨハン・シュトラウスII世作曲
ポルカ「観光列車」
首席フルート:一戸敦 オーボエ:浦 丈彦ヨハン・シュトラウスII世作曲
ポルカ「観光列車」
クラリネット:鎌田 広 首席ファゴット:井上俊次
ホルン:伴野涼介 打楽器:野本洋介
古市:去年の11月に読響首席ファゴット奏者・井上俊次さんの出身地、
宮城県石巻市で行われた、現地の吹奏楽部に所属する中高生を
招いての室内楽コンサート。
この演奏会には浦さんも参加してくださったのですが、
東日本大震災の被災地・石巻でのコンサートはいかがでしたか?
浦 :まず仙台からバスで現地に入ったときに、更地になっていたのと
瓦礫を見てすごくショックでした。会場に入ると高校生・中学生の顔が、
「生きている」という「生」の部分をすごく見せられて、あの時の顔は
すごく覚えていますね。皆生き生きとその日を一生懸命生きている
という感じがして、思い出深いコンサートになりました。
読響コンサートへの誘い!!〜 from 小森谷 巧(コンサートマスター)
コンサートマスター
小森谷 巧
7月11日(水)PM7:00 東京オペラシティ コンサートホール
7月12日(木)PM7:00 サントリーホール
武満 徹/トゥイル・バイ・トワイライト
(読響1988年 創立25周年記念委嘱作品)
バルトーク/ヴィオラ協奏曲
リムスキー=コルサコフ/交響組曲「シェエラザード」作品35
指揮:広上淳一
ヴィオラ:清水直子
今度の「シェエラザード」に期待していただきたいと思います。「シェエラザード」というのはご存知の通り素晴らしい曲なんですけれども、指揮者が指示を出すということが意外と少ないのがヴァイオリンのソロパートです。コンサートマスターによって随分違った演奏になることもあります。どうぞご期待ください。
コンサートの詳細は読売日響ホームページ http://yomikyo.or.jp/をご覧下さい。