演奏レビュー

日時

2016年4月14日(木)午前2:44~3:44(水曜深夜)
BS日テレでは2016年4月23日(土)朝7:00~8:00に放送

出演

指揮 シルヴァン・カンブルラン
トリスタン エリン・ケイヴス
イゾルデ レイチェル・ニコルズ
マルケ アッティラ・ユン
ブランゲーネ クラウディア・マーンケ
クルヴェナル 石野繁生
メロート アンドレ・モルシュ
牧童・舵手 与儀 巧
管弦楽 読売日本交響楽団
司会 松井咲子

曲目

♪ワーグナー作曲
楽劇「トリスタンとイゾルデ」(演奏会形式)第3幕
※2015年9月6日サントリーホール

マエストロ・カンブルラン×読響 待望のオペラ公演!!

今回は昨年9月に行われ、大絶賛されたマエストロ・カンブルランと読響のオペラ公演、ワーグナー作曲、楽劇「トリスタンとイゾルデ」(演奏会形式)から後編をお送りしました。

シルヴァン・カンブルラン
幅広いレパートリーと躍動感あふれる緻密な演奏で人気を博している読響常任指揮者。現在シュトゥットガルト歌劇場の音楽総監督を務めており、昨年7月に同歌劇場で成功を収めた「トリスタンとイゾルデ」を日本でも演奏会形式で披露することとなった。

ワーグナー作曲
楽劇「トリスタンとイゾルデ」

全編約4時間にも及ぶワーグナーの超大作。全3幕構成であり、今回はその中から第3幕の名場面を抜粋してお送りいたしました。

「それは何より詩と感じられるものだった」― (読売新聞)
「傑作は音だけで総てを描き尽くせるのだという自明の理をカンブルランは堂々と主張して見せた」― (モーストリー・クラシック)
かねてから期待を寄せられていたカンブルランさんと読響のオペラ公演。その期待に応えたステージには盛大な拍手が送られ、新聞や専門誌にも今回の公演を絶賛する言葉が綴られました。

~楽劇「トリスタンとイゾルデ」これまでと第3幕のあらすじ~

マルケ王の妃になるはずのイゾルデは、王の使者トリスタンと恋に落ちてしまいました。二人は、侍女ブランゲーネから与えられた愛の媚薬を飲み城の中でお互いを求め合います。二人が最高潮に達した時、マルケ王が到着。裏切りに愕然とするマルケ王を見て、家臣メロートはトリスタンを剣で刺します。深い傷を負ったトリスタンは故郷の城でイゾルデを待っているのでした。

愛について問いかけ続けるこの作品。カンブルランさんは「トリスタンとイゾルデ」に描かれた愛をどう感じているのでしょうか?

トリスタンとイゾルデは正統なラブストーリーではないと思っています。なぜなら愛について愛がどうあるべきか2人は常に話していますが、お互いに「愛している」という言葉を一度も言っていないのです。最後まで全く言うことはありません。壮大な愛のデュエットと常に言われますが実は2人で愛について語っているだけなのです。しかしワーグナーが卓越しているのは、音楽を非常に効果的に用いるので聴衆は2人の会話とは一味違った印象を受けるようになるのです。私がこの作品を愛する理由は言葉では表現できないものを音楽で表現し伝達しているからです。

演奏者の略歴

シルヴァン・カンブルラン(指揮)

シルヴァン・カンブルラン(指揮)
Sylvain Cambreling (conductor)

幅広いレパートリーと躍動感あふれる緻密な演奏。
1948年、フランス・アミアン生まれ。これまでにブリュッセルのベルギー王立モネ歌劇場の音楽監督、フランクフルト歌劇場の音楽監督、バーデンバーデン&フライブルクSWR(南西ドイツ放送)響の首席指揮者を歴任し、現在はシュトゥットガルト歌劇場の音楽総監督とクラングフォーラム・ウィーンの首席客演指揮者を兼任する。また、巨匠セルジュ・チェリビダッケの後任として、ドイツ・マインツのヨハネス・グーテンベルク大学で指揮科の招聘教授も務める。
客演指揮者としてはウィーン・フィル、ベルリン・フィルを始めとする欧米の一流楽団と共演しており、オペラ指揮者としてもザルツブルク音楽祭、メトロポリタン・オペラ、パリ・オペラ座などに数多く出演している。
録音にも積極的だ。読響とのCDでは《幻想交響曲》《ペトルーシュカ》《第九》《春の祭典/中国の不思議な役人》《スコットランド》などをリリースしている。

エリン・ケイヴス(トリスタン)

エリン・ケイヴス(トリスタン)
Erin Caves (Tristan)

アメリカ・カリフォルニア生まれ。エール大学とジュリアード音楽院で学んだ後にヨーロッパに渡り、現在はドイツのフランクフルトを拠点に活躍する。これまでにベルリン国立歌劇場、チューリヒ歌劇場、バーゼル歌劇場、ライン・ドイツ・オペラほかに出演し、〈ホフマン物語〉〈ワルキューレ〉〈トスカ〉〈ドン・カルロ〉などを歌っている。カンブルランが音楽総監督を務めるシュトゥットガルト歌劇場では近年、今回の〈トリスタン〉のほか、〈さまよえるオランダ人〉のエリック、〈ナクソス島のアリアドネ〉のバッカスなどを歌っている。

レイチェル ・ニコルズ(イゾルデ)

レイチェル・ニコルズ(イゾルデ)
Rachel Nicholls (Isolde)

イギリス、ベッドフォード生まれ。2013年オペラ・アワード基金奨学金を得てデイム・アン・エヴァンズのもとで研鑽を積む。〈パルジファル〉の第3の花の乙女役でロンドンのロイヤルオペラハウス・デビュー。オペラでは、ほかにスコットランド歌劇場で〈エフゲニー・オネーギン〉のタチヤーナ、〈さまよえるオランダ人〉のゼンタなどを演じ、2013年のロングボロー・オペラ〈指環〉4部作ではブリュンヒルデ役で絶賛を博した。
最近の活動および今度の活動予定としては、ベルゲン国立歌劇場およびリトアニア国立歌劇場で〈フィデリオ〉のレオノーレ、ロングボロー・オペラで〈トリスタンとイゾルデ〉のイゾルデ役などのほか、ウェールズ・ナショナル・オペラの〈ワルキューレ〉のコンサート形式上演への出演などがある。

アッティラ ・ユン(マルケ)

アッティラ ・ユン(マルケ)
Attila Jun (Marke)

ソウル生まれ。ソウル国立大とケルン音楽大で学ぶ。1998年にシュトゥットガルト歌劇場の〈リゴレット〉でヨーロッパ・デビューし、1999年にシノーポリの指揮で〈ワルキューレ〉に出演。同年、〈ローエングリン〉でバイロイト音楽祭にデビューして以後、同音楽祭の常連として活躍し、ワーグナー歌手としての名声を確立した。2014年にはキリル・ペトレンコ指揮の〈神々の黄昏〉でハーゲンを歌っている。また、ミラノ・スカラ座、ウィーン国立歌劇場をはじめとする欧米の主要歌劇場で〈さまよえるオランダ人〉〈トゥーランドット〉などに出演している。

クラウディア・マーンケ(ブランゲーネ)

クラウディア・マーンケ(ブランゲーネ)
Claudia Mahnke (Brangäne)

ドイツ生まれ。ドレスデン音楽大で学び、1996年から2006年までシュトゥットガルト歌劇場に所属した。2005年、ミュンヘン・オペラ音楽祭の開幕公演で注目を集め、2006年からフランクフルト歌劇場の専属歌手を務めている。〈トリスタンとイゾルデ〉〈パルジファル〉などワーグナーを得意とし、2013年には〈ラインの黄金〉〈ワルキューレ〉でフリッカほかを歌ってバイロイト音楽祭デビューを飾り、2014年と2015年も主要な役を歌い好評を博した。ベルリン国立歌劇場、バイエルン州立歌劇場、サンフランシスコ・オペラにも出演している。

石野繁生(クルヴェナル)

石野繁生(クルヴェナル)
Shigeo Ishino (Kurwenal)

チューリヒの国際オペラスタジオで研修し、1994年、オトマール・シェック声楽コンクールで優勝。1997年にスイスのバーゼル歌劇場と専属契約を結び、1998年にはドイツ語圏の新進歌手部門における“シンガー・オブ・ザ・イヤー”に選ばれた。その後、ハノーファー歌劇場を経て、2006年よりシュトゥットガルト歌劇場の専属。〈ドン・ジョバンニ〉〈魔笛〉などのモーツァルトのレパートリーを中心に、〈トリスタンとイゾルデ〉〈エフゲニー・オネーギン〉などを歌う。2013年にドイツのバーデン・ヴュルテンベルク州より宮廷歌手の称号を与えられた。

アンドレ・モルシュ(メロート)

アンドレ・モルシュ(メロート)
André Morsch (Melot)

ドイツ生まれ。アムステルダム音楽院などで学んだ後、2007年にシュトゥットガルトの国際リートコンクールで優勝して、一躍注目を集めた。現在はシュトゥットガルト歌劇場の専属歌手を務め〈フィガロの結婚〉のフィガロ、〈ドン・ジョバンニ〉のレポレロなどを歌っている。ライプツィヒ、リヨン、パリ、チューリヒなどの歌劇場やレザール・フロリサン、ル・ポエム・アルモニークといった古楽オーケストラやオランダ放送管からも招かれている。指揮者ではクリスティ、ルセ、メッツマッハー、デ・ワールトらと定期的に共演を重ねている。

与儀 巧(牧童・舵手)

与儀 巧(牧童・舵手)
Takumi Yogi (Ein Steuermann,Ein Hirt)

国立音楽大学卒業。同大学院修了後、ボローニャに留学。第6回東京音楽コンクール第1位及び聴衆賞受賞。輝かしく伸びやかな美声と堅実な音楽性で近年目覚ましい活躍を見せており、紀尾井ホール主催によるリサイタル、準・メルクル指揮二期会〈イドメネオ〉タイトルロール、「NHKニューイヤーオペラコンサート」への連続出演など、その勢いは留まるところを知らない。今秋の二期会〈ウィーン気質〉では初の本格的オペレッタ作品に挑む。読響とは2012年にカンブルラン指揮〈第九〉で共演し好評を得た。二期会会員。

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