演奏レビュー

日時

2016年7月21日(木)午前2:29~3:29(水曜深夜)
BS日テレでは2016年7月30日(土)朝7:00~8:00に放送

出演

指揮 下野竜也
ソプラノ エヴェリーナ・ドブラチェヴァ
ゲスト 田村博文(読響ヴァイオリン奏者)
管弦楽 読売日本交響楽団
司会 松井咲子

曲目

♪モーツァルト作曲
交響曲第41番 ハ長調 K.551 「ジュピター」 から第1楽章、第2楽章、第4楽章

♪ベルク作曲
歌劇「ヴォツェック」から3つの断章 からⅡ:変奏曲、Ⅲ:終場
※2016年4月19日サントリーホール

読響シンフォニックライブ スペシャルトーク

読響在籍37年の大ベテラン団員 田村博文さんに番組MCの松井咲子さんが「読響の魅力」についてお聞きするスペシャル対談が実現!田村さんが入団した当時の読響のお話など、貴重なお話をたくさん伺いました。​

田村博文(読響ヴァイオリン奏者)&松井咲子スペシャル対談!!

田村さんが入団した当時の読響とは…?

松井 田村さんには入団当時の読響というのはどのようなオーケストラに見えましたか?
田村 昔の読響は男性だけのオーケストラでした。ですから無骨といいますか、いわゆる職人気質の方が多かったです。入団当初の新人はベートーヴェンでもモーツァルトでも全てが初めて演奏する曲なのですが、みなさんは何十回、何百回と弾いていらっしゃるので、全部練習してくれず、慣れるまでが大変でしたね。
松井 今までで印象に残っているコンサートというのはありますか?
田村 特に印象に残っているのはロリン・マゼールという指揮者です。カリスマ性のある指揮者でしたので、タクトひとつで音がどんどん変わっていくのをワクワクしながら演奏していたことを覚えています。あとは広島・長崎で原爆の日の時にモーツァルトの「レクイエム」を演奏したのですが、演奏と一緒に感銘深いナレーションがありまして、コンサートマスターの小森谷 巧さんが涙を流しながら弾いていたのを覚えています。プレイヤーもみんな本当に心から原爆に対する思いが強く、そこでメンバーの思いが一つになったのかなという気もしました。

指揮者 ロリン・マゼール(1930-2014)
20世紀を代表する巨匠のひとり。ウィーン国立歌劇場の総監督を務め、名演を残した。

大ベテランの田村さんから見る最近の読響若手メンバー

松井 最近の若手メンバーが演奏する姿を見て、どうですか?
田村 何より技術的にレベルが上がってると思います。
松井 田村さんから見て若手メンバーの皆さんはライバルになりますか?それとも仲間と感じますか?
田村 ライバルなんてとんでもないです。これからの読響を担ってもらう心強い仲間ですね。特に今、読響は若いプレイヤーたちがオーケストラの活動だけではなく、室内楽やアンサンブルの活動をたくさんやっております。外に向かって発信する一つの手段として演奏会を行っているというのはとてもいいことだと思います。

ズバリ!読響の良さとは?

松井 長年の読響生活の中で感じる読響の良さというのはどういうところですか?
田村 とにかく、読響のメンバーはみんな仲が良いです。笑顔が多いと感じませんか?
松井 確かに多いですよね!もう少しピリピリしていてもおかしくないなと思うのですが、本当に読響のみなさんは優しくて温かいです。
田村 それが音にも出ていると思いますね。

読響首席客演指揮者・下野竜也さんへの思い

田村 下野さんが最初に読響に来た時から僕はとても勉強熱心な良い指揮者だと思っていました。彼のプログラムはここ何年かはとてもマニアックな曲が多かったですね。「どこから見つけてきたの?」というような曲がたくさんありましたが、それも読響に刺激を与えたカンフル剤的な要素がありますし、彼の存在というのはここ何年かで読響の中に新しい風を送り込んだのではないかなと思います。
松井 田村さんにとって良い指揮者というのはどういう方ですか?
田村 指揮者とは指揮台に立った時すでに、オーケストラとの対話が始まっているのですね。最初何分間か音を出した時に相性というのが分かるような気がします。
松井 下野さんと読響の相性というのは?
田村 素晴らしいです。

オーケストラプレイヤーにとって大事なこととは?

松井 オーケストラプレイヤーとして大事に思っていることはなんですか?
田村 コミュニケーションがとても大事だと思いますね。周りと音を合わせていく、作っていくという作業を100人が同時に行うというのがオーケストラです。オーケストラは決して団体の行動ではないです。

読響メンバーから見る田村さんの印象

今年8月で読響を卒業される田村さん。
読響を37年間、温かい目で見守ってきた田村さんのことを仲間の読響メンバーはどう感じているのか、
ヴァイオリンパートの中でも特に親交の深い赤池瑞枝さんに田村さんには内緒でお話を伺いました。

赤池瑞枝さん(読響ヴァイオリン奏者)
とても面倒見が良い方です。地方公演に行った時なども、ご飯の美味しいお店の手配など全て率先して行ってくださいました。
オケの中でソロがある時など、とても緊張して「うまくいかなかったな」と思うことがありますが、そのときに「よかったよ」と一言いただけると、とてもホッとします。支えてくださったなと思いますね。

松井 赤池さんからのコメントはいかがですか?
田村 本当にありがたいです。
松井 田村さんの空気感や温かさが読響の雰囲気の良さにつながっているのかなとすごく思います。上司にいていただきたいくらいの空気感ですよね。

プログラム・1
モーツァルト作曲
交響曲第41番 ハ長調 K.551「ジュピター」から第1楽章、第2楽章、第3楽章
指揮:下野竜也

モーツァルト作曲
交響曲第41番 ハ長調 K.551 「ジュピター」
全4楽章で構成されており、交響曲39番、40番と共に「3大交響曲」と呼ばれているモーツァルトが最期に書いた交響曲。たった2週間で書かれたこの曲はモーツァルトが書いた交響曲の中でも最高傑作といわれている。

プログラム・2
ベルク作曲<歌劇「ヴォツェック」から3つの断章>から Ⅱ:変奏曲、Ⅲ:終場
指揮:下野竜也 ソプラノ:エヴェリーナ・ドブラチェヴァ

ベルク作曲
歌劇「ヴォツェック」から3つの断章

ドイツの劇作家ゲオルク・ビューヒナーの未完の戯曲「ヴォイツェック」を基にして作られたオペラ「ヴォツェック」。その中から演奏会用の楽曲を抜粋し、ソプラノと管弦楽のみで演奏できるようにされたのがこの作品である。

演奏者の略歴

下野竜也(指揮)

下野竜也(指揮)
Tatsuya Shimono(conductor)

1969年鹿児島県生まれ。鹿児島大学教育学部音楽科、桐朋学園大学音楽学部附属指揮教室、イタリア・シエナのキジアーナ音楽院で学んだ後、大阪フィルの指揮研究員となり朝比奈隆氏ら巨匠たちの薫陶を受けた。文化庁派遣芸術家在外研修員としてウィーン国立演劇音楽大学に留学中、2000年の東京国際音楽コンクールと01年のブザンソン国際指揮者コンクールで優勝を飾った。
 国内の主要オーケストラはもとより、チェコ・フィル、シュトゥットガルト放送響、ローマ・サンタチェチーリア管などと共演し国際的に活躍するほか、上野学園大学教授として後進の指導に当たっている。また、出光音楽賞、渡邉暁雄音楽基金音楽賞、新日鉄音楽賞・フレッシュア-ティスト賞、齋藤秀雄メモリアル基金賞、芸術選奨文部科学大臣賞、東燃ゼネラル音楽賞洋楽部門奨励賞など受賞も数多い。14年9月には読響とカレル・フサの〈この地球を神と崇める〉を日本初演し、読響をミュージックペンクラブ音楽賞に導いた。

エヴェリーナ・ドブラチェヴァ(ソプラノ)

エヴェリーナ・ドブラチェヴァ(ソプラノ)
Evelina Dobračeva(Soprano)

ロシア生まれのドラマティック・ソプラノ。ロシアで指揮などを学んだ後、ベルリンのハンス・アイスラー音楽大学で声楽を修めた。これまでにバイエルン国立歌劇場でムソルグスキー〈ホヴァンシチナ〉、ヴェルビエ音楽祭でモーツァルト〈コジ・ファン・トゥッテ〉などに出演。2014年にはラフマニノフの歌曲を歌ってロンドンのウイグモア・ホールにデビューした。
 ベート―ヴェンからショスタコーヴィチまで幅広いレパートリーを誇り、特にブリテンの〈戦争レクイエム〉の独唱で高い評価を得ている。読響とは初共演。

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