演奏レビュー

日時

2020年1月16日(木)2:59~3:59(水曜深夜)予定
BS日テレ 1月25日(土)朝7:00~8:00予定

1月放送プログラム

シベリウス作曲  ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47
チャイコフスキー作曲 交響曲第5番 ホ短調 作品64

指揮
ユーリ・テミルカーノフ
 
ヴァイオリン
エマニュエル・
チェクナヴォリアン

(2019年10月15日 サントリーホールにて収録)


【1月の演奏・聴き所】
音楽プロデューサー 新井鴎子の演奏レビュー

新井鴎子プロフィール
読響シンフォニックライブの構成を担当
クラシック音楽のコンサート・テレビ・ラジオ番組の構成を多数手掛け、長年にわたりその楽しみや魅力を親しみやすく伝えてきた。
音楽祭のディレクターやオペラ・ミュージカルの脚本、執筆活動など〈クラシック音楽〉の分野で幅広く活躍している。
現在、東京藝術大学特任教授。

【シベリウス作曲 ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47】
シベリウス国際コンクールで「ベスト・シベリウス演奏賞」を受賞した気鋭の若手ヴァイオリニスト、エマニュエル・チェクナヴォリアンさん。ロマンティックで粘り気のある音で息の長い旋律を歌い上げ、シベリウス独特の土臭さも加味され、さすが「ベスト・シベリウス」な演奏でした。1995年生まれですが、若い演奏家に時折ありがちな奇をてらったところはなく、巨匠テミルカーノフを相手にしながら物腰もおっとりとした余裕の印象。アルメニアの名指揮者ロリス・チェクナヴォリアンを父に持つ二代目の余裕かもしれません。

【チャイコフスキー作曲 交響曲第5番 ホ短調 作品64】
冒頭、これ以上ないほど遅い足取りで始まる「運命の動機」。チャイコフスキー自身が「運命への完全な服従」と呼んだこの楽章は葬送行進曲だったのだと思い知らされます。第2楽章の序奏も重く垂れ込めた暗雲のようで、そこからホルンのメロディが一筋の光のように射してくるコントラストの鮮やかさ。
81歳の巨匠テミルカーノフさん、旧ソ連時代を生き抜き、チャイコフスキーが暮らしたロシアの風土やスピリットを肌で知っているからこそ描ける音楽でしょう。甘美なメロディは歌いたいだけ歌い上げ、軽快なところはブンブン飛ばし、その大きな伸び縮みが19世紀後期ロマン派のロシア音楽を作り出します。そんな起伏の幅広い音楽ながら、マエストロは体を大仰に動かしたりせず、最小限の動きで豪快なサウンドを読響から引き出していました。

演奏者の略歴

ユーリ・テミルカーノフ(指揮)
ユーリ・テミルカーノフ(指揮)
Yuri Temirkanov
1938年、旧ソ連・コーカサス地方のナルチク生まれ。66年に全ソ連指揮者コンクールで優勝し、レニングラード・フィル(現サンクトペテルブルク・フィル)でムラヴィンスキーのアシスタントに任命された。その後、レニングラード響の首席指揮者、キーロフ劇場(現マリインスキー劇場)の音楽監督などを経て、88年から現在までサンクトペテルブルク・フィルの芸術監督・首席指揮者の任にあり、充実した活動でロシア音楽界を牽引している。
欧米では、ロイヤル・フィルの首席指揮者、ドレスデン・フィル、デンマーク国立放送響の首席客演指揮者、ボルティモア響の音楽監督などの要職を務めたほか、ウィーン・フィル、ベルリン・フィル、ロンドン響、ロイヤル・コンセルトヘボウ管、ニューヨーク・フィル、フィラデルフィア管、ボストン響、シカゴ響、クリーヴランド管など、世界中の一流楽団と共演を重ねている。BMGレーベルから多数のCDをリリース。2015年春の叙勲で、日本・ロシア間の音楽を通じた交流及び相互理解の促進に寄与したとして、旭日中綬章を受章した。
読響には2000年に初登場し、楽団員と聴衆の双方から絶大な支持を得て共演を重ねた。15年6月から名誉指揮者の任にある。
エマニュエル・チェクナヴォリアン(ヴァイオリン)
エマニュエル・チェクナヴォリアン(ヴァイオリン)
Emmanuel Tjeknavorian
1995年ウィーン生まれ。父はアルメニア人の名指揮者ロリス。2015年シベリウス国際コンクールで第2位に輝いて注目を集めた。これまでにテミルカーノフ、シャイー、M.ザンデルリンク、ビシュコフらの指揮で、ウィーン響、ベルリン・ドイツ響、フランクフルト放送響、チューリヒ・トーンハレ管、サンクトペテルブルク・フィル、ロンドン響などと共演。今後も、フィルハーモニア管、ロンドン・フィルなどとの共演が予定されている。ラインガウ音楽祭、メクレンブルク=フォアポンメルン音楽祭などにも共演。17年には、欧州の権威ある新人賞“エコー・ライジングスター”に選ばれ、デビューアルバム『SOLO』はオーパス・クラシック賞を受賞するなど絶賛された。今回が読響初登場。
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