演奏レビュー

日時

2020年11月19日(木)午前2:35~3:35(水曜深夜)予定
BS日テレ 11月28日(土)朝7:00~8:00予定

11月放送プログラム

R.シュトラウス作曲  メタモルフォーゼン ~23の独奏弦楽器のための習作
           組曲〈町人貴族〉 から

指揮
高関 健

(2020年10月28日 ミューザ川崎シンフォニーホールにて収録)


【11月の演奏・聴き所】
音楽プロデューサー 新井鴎子の演奏レビュー

新井鴎子プロフィール
読響シンフォニックライブの構成を担当
クラシック音楽のコンサート・テレビ・ラジオ番組の構成を多数手掛け、長年にわたりその楽しみや魅力を親しみやすく伝えてきた。
音楽祭のディレクターやオペラ・ミュージカルの脚本、執筆活動など〈クラシック音楽〉の分野で幅広く活躍している。
現在、東京藝術大学特任教授。

【R.シュトラウス作曲 メタモルフォーゼン ~23の独奏弦楽器のための習作】
このコロナ禍で、飛沫感染のリスクの少ない弦楽合奏曲の演奏の機会が突然増えましたが、中でも「メタモルフォーゼン」は23人の弦楽器奏者がそれぞれ別のパート譜を見て演奏するため、ソーシャルディスタンスが取れる曲として、にわかに注目が高まっています。もちろんこの作品を選曲した時点ではこのような2020年が来るとは夢にも思いませんでしたが。 1945年シュトラウスが81歳の時、第一次世界大戦の最終期、ドイツが敗戦する直前に書かれたこの曲にこめられたメッセージは、音楽活動が著しく制限された今年の心境に深く共鳴しました。最後に登場するベートーヴェンの「エロイカ」の葬送行進曲の旋律を、高関マエストロはことさら強調することなく、しかしじわじわと心に後から効いてくるように聴かせました。

【R.シュトラウス作曲 組曲〈町人貴族〉から】
これぞ高関マエストロの緻密なスコアリーディング極まれり!巨大な室内楽ともいえるリヒャルト・シュトラウスのこの作品を、まるでオーケストレーションの8K画像を見るかのような演奏で楽しませてくれました。オーケストラ全員がソリストのような超絶技巧満載のこの曲、読響が実力のすごさを見せつけてくれた感じです。最後の「宴会の音楽と若い料理人たちの踊り」では、ヴェルディのオペラ「リゴレット」、ワーグナーの「ラインの黄金」などのパロディが登場します。高関マエストロが、「引用された曲が料理の皿として出てくるシーンなんだよ」と嬉しそうに教えてくれました。

演奏者の略歴

高関 健(指揮)
高関 健(指揮)
Takaseki Ken
桐朋学園在学中の1977年カラヤン指揮者コンクールジャパンで優勝。ベルリンでカラヤンのアシスタントを務め、タングルウッド音楽祭でもバーンスタイン、小澤征爾らに指導を受けた。
広島交響楽団音楽監督・常任指揮者、新日本フィル正指揮者、大阪センチュリー交響楽団常任指揮者、群馬交響楽団音楽監督(現在・名誉指揮者)、札幌交響楽団正指揮者、京都市交響楽団常任首席客演指揮者などを歴任し、現在は東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団常任指揮者(2015年4月~)、仙台フィルハーモニー管弦楽団レジデント・コンダクター(2018年4月~)、静岡交響楽団ミュージック・アドヴァイザー(2018年4月~)、東京藝術大学音楽学部指揮科教授 兼 藝大フィルハーモニア管弦楽団首席指揮者の任にある。
日本のオーケストラはもとより、ベルゲン響、ウィーン響、オスロ・フィル、ベルリン・ドイツ響、クラングフォーラム・ウィーン、ケルン放送響などに客演。2013年2月と2017年4月にはサンクトペテルブルグ・フィル定期演奏会を指揮、ロシアの名門オーケストラから豊潤な響を引き出し、聴衆や楽員から再び大絶賛を受けた。
オペラでは新国立劇場公演「夕鶴」、大阪カレッジオペラ「ピーター・グライムズ」などで好評を博し、ブーレーズ京都賞受賞記念ワークショップではブーレーズから、ミッシャ・マイスキー、イツァーク・パールマンをはじめとする世界的ソリスト、特にマルタ・アルゲリッチからはシチェドリン作品日本初演等3回の共演を通じてその演奏を絶賛されるなど絶大な信頼を得ている。 第4回渡邉曉雄音楽基金音楽賞(1996年度)、第10回齋藤秀雄メモリアル基金賞(2011年)、第50回サントリー音楽賞(2018年度)を受賞。
2019年3月には、ウラジオストクとサンクトペテルブルグにおいて、『ロシアにおける日本年』の一環として團伊玖磨のオペラ「夕鶴」を指揮、日本とロシアの文化交流に大きな役割を果たした。
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