カウラ事件について─
オーストラリア・カウラは、シドニーの西320キロにある小さな街です。
1944年8月5日、この街で日本人捕虜たちが暴動を起こしました。
1104名の捕虜による、史上最大の大脱走。
オーストラリアでは誰もが知っている有名な事件です。
しかし、日本の歴史教科書には登場しません。なぜでしょう。
『生きて虜囚の辱めを受けず、死して罪禍の汚名を残すこと勿れ』
この戦陣訓にしばられ、当時の日本政府はこの事件を隠蔽し、当事者のほとんどが口をつぐんだからです。
事件の夜、暴動に賛成か反対か、日本人捕虜全員による投票が行われました。
トイレットペーパーのミシン目で切った紙切れに、
○は賛成=「死」
×は反対=「生」
8割が「死」を意味する○をつけ、暴動は決行されました。
武器らしい武器もないまま、食事用に支給されたナイフやフォークを手に、自殺志願としか言いようのない大暴動でした。
私は伯父から、この事件の話を聞きました。
伯父はニューブリテン島で餓死寸前のところを捕らえられ、暴動までの4ヶ月間をカウラ第12捕虜収容所で過ごしました。
しかし、長い間、伯父は自分が捕虜だったことを家族にさえ打ち明けられなかったそうです。
暴動の夜、伯父はかけがえのない戦友を何人も亡くしました。
彼らはカウラの日本人墓地に今も「偽名」のまま眠っています。
書かなければいけない、と私は思いました。
平和の時代を生きる若い人たちに、どうしても伝えたい。
64年前、なぜ伯父たちは生き延びるためではなく、
「死ぬための脱走」をしなければならなかったのか─
彼らの友情、青春、恋愛、そして、生命の重さを─
中園ミホ
朝倉憲一(過去)…小泉孝太郎
嘉納二郎…大泉洋
松島勇…光石研
木下金太郎…袴田吉彦
小原庄助…近藤公園
原一平…六角精児
池山保…永堀剛敏
知念亮吉…不破万作
金井一男…東根作寿英
南川忠司…弓削智久
黒木章…阿部サダヲ
菊地孝…田島亮
桜田進…関戸将志
朝倉久江…市毛良枝
嘉納正子…根岸季衣
嘉納静子(過去)…戸田菜穂
朝倉舞(現代)…加藤あい
嘉納静子(現代)…淡島千景
朝倉憲一(現代)…山﨑努
脚本
中園ミホ
プロデューサー
次屋尚、内山雅博(オフィスクレッシェンド)
演出
大谷太郎
制作協力
オフィスクレッシェンド
製作著作
日本テレビ