太平洋戦争が終わって61年が経過した2006年8月。若者らが平和と繁栄を謳歌する中、戦争の悲惨な現状をその目で見、実際に体験した人たちの高齢化が進んでいる。
この作品は、日本で唯一民間人を巻き込む地上戦が行われた沖縄本島を舞台に、かつて戦場を駆け巡った経験のある一人の年老いた助産婦の回想として展開していくドラマである。

当時、女学校の卒業直前だった一人の女生徒に、学徒看護婦として動員令が出たのは、昭和20年の春。有名なひめゆり学徒隊や白梅学徒隊をはじめ数隊に、16歳から19歳の400名を超える女生徒が、“お国のため”という美名の元に半強制的に戦場に駆り出される。

学徒看護婦となったこの女生徒は、うら若き看護婦長や仲間たちと一緒に、戦争の悲惨な現実を目の当たりにするのである。悲鳴や唸り声が響く病院壕の実態、家族親戚単位で自決に追い込まれる悲劇、軍人の地元民や民間人に対する理不尽な差別、鉄の暴風と呼ばれた米軍による猛攻の様子―。

この作品は、こういった絶望的な阿鼻叫喚の状況、決して風化させてはならない地獄絵図を描きながら、人を鬼に変えてしまう戦争の本当の恐ろしさを伝える“映像の語り部”として制作された女の視点の女の鎮魂ドラマである。

ハワイ真珠湾への奇襲に端を発した太平洋戦争で、米軍の反撃が激化した昭和20年3月、沖縄本島の女学校に通う照屋サチ（成海璃子）は、同じクラスの平良安子（市川由衣）、仲根悦子（サエコ）、玉城冨美（岩田さゆり）らと共に、学徒看護婦として負傷兵であふれる軍の病院壕に配属される。

何も分からないサチらを指導してくれたのは、養護室の代理教員で、助産婦の婦長・新城美智子（長谷川京子）。サチら4人は、この美智子と一緒に戦争の悲惨な現実を目の当たりにしながら、各地の病院壕を周る。だが、上陸した米軍による猛攻で、サチらは次第に追い詰められて―。

新城美智子…長谷川京子
照屋サチ…成海璃子
平良安子…市川由衣
仲根悦子…サエコ
玉城冨美…岩田さゆり

山崎軍曹…柄本明
小泉中尉…斎藤洋介
森少尉…泉谷しげる

老人…植木等（特別出演）

負傷兵・橋本…そのまんま東
負傷兵・永田…梶原雄太（キングコング）
負傷兵・野村…モト冬樹

照屋サチ（現在）…八千草薫（特別出演）
新垣信一…椎名桔平

ほか

企画プロデュース
遊川和彦

脚本
武田樹里

音楽
羽毛田丈史

プロデューサー
大森美孝、佐藤敦、高橋秀明

演出
猪股隆一