記憶に残る映画の世界観創出で定評のある美術監督。武蔵野美術大学油絵科卒業。在学中に寺山修司監督作品『上海異人娼館』に参加、映画界に入る。その後、相米慎二監督作品などに美術助手として参加。1986 年、石井聰互監督『ノイバウテン: 半分人間』で美術監督となる。以降、『スワロウテイル』『不夜城』(1998年、香港電影金像奨・最優秀美術監督賞)『キル・ビル Vol.1』(米国美術監督協会最優秀美術賞ノミネート)『THE 有頂天ホテル 』『フラガール 』(2005年、毎日映画コンクール美術賞)『ザ・マジックアワー』『空気人形』『ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~』(2010年毎日映画コンクール美術賞、日本アカデミー賞最優秀美術賞)『悪人』、舞台では『ベッヂ・パードン』など話題作を多数手掛ける。「再現ではなく表現を、模写ではなく創造を」という取り組みが評価され、平成21年度[芸術選奨文部科学大臣賞] を受賞した。映画の他CM・舞台美術・映画美術展・アートブック など幅広い分野で活動。著書に『THE HOT SET』(メディアファクトリー)、『TRIP for the FILMS』(角川書店)、自伝的絵本『どこか遠くへ』(小学館)などがある。また、2008年5月から1年間三鷹の森ジブリ美術館で展示された「小さなルーヴル美術館展」の美術監督もつとめた。(同展は2010年4月17日から12月5日までメルシャン軽井沢美術館で開催された。)
「実在の空間に迷い込み、アトモスフィアに浸ってもらいたい」
映画美術の仕事のおもしろさは「世界観づくり」と「セットづくり」だと思う。
『借りぐらしのアリエッティ』はその「世界観づくり」においてリアリステックであると同時にファンタステックだ。
そのアリエッティの世界を「三次元に、つまり現実のセットにつくりあげて展示したい」というお話を鈴木敏夫さんから頂いたとき、
僕の仕事は、アニメーション映画の美術と実写映画の美術の融合だ、と理解した。
アニメーション映画でも実写映画でも、美術のつくった世界はあくまでもスクリーン上で登場人物たちとともにあり、
お客さんに「観られること」で完結する。
しかし、今回の展覧会では、スタジオジブリが創造した世界をスクリーンから引き出し、実写美術の技術で建ち上げる。
美術館を訪れた人に、実在の空間に迷い込み、に浸ってもらうことができる。ディテールに触れ、
バーチャルな世界ではなく実在する空間を楽しんでもらうことができる。
スリリングな展覧会になるぞ、と思った。
アニメーション映画と実写映画の美術、すなわち「映画のための美術」というテーマのもと、種田陽平展のパートでは、
僕が関わってきた様々な実写映画の美術の仕事を展示させて頂くことになった。
お客さまに「映画美術の世界」を楽しんで頂く機会を得たことは、映画美術の仕事をする者として、大変光栄なことだと思っております。