10月14日(水)深夜2:29〜3:29

指 揮 井上道義
演 出 茂山千之丞
管弦楽 読売日本交響楽団
合 唱 新国立劇場合唱団 
児童コーラス TOKYO FM少年合唱団
司 会 古市幸子(日本テレビアナウンサー)

G.プッチーニ作曲:
歌劇《トゥーランドット》(アルファーノ版)前編

※2009年7月25日 東京芸術劇場にて収録



「深夜の音楽会」10、11月は、2回にわたってプッチーニのオペラ「トゥーランドット」をお送りします。今回の公演は、東京芸術劇場と読響による「シアター・オペラ」の第4弾として行われました。さらに、狂言師の茂山千之丞(しげやませんのじょう)さんが、能や歌舞伎の手法を取り入れた演出でユニークな舞台を作り上げ、「和」と「オペラ」の融合が実現しました。指揮は井上道義さん。「シアターオペラ・シリーズ」には2回目のご登場です。
《指揮者 井上道義 インタビュー》
Q、「シアターオペラ」とは?
演出過剰にならないこと。オーケストラをピットの中に入れない、音楽を中心にまずは楽しもう、と。
Q、今回の演出について・・・
今回は、茂山千之丞さんにお願いして、“和風”でやろう、となったんです。そして“和風”でやるんだったら、このやり方はきっと上手くいくんじゃないかと思って。中でも「ピン・パン・ポン」の場面は、これはもう狂言そのもので、オペラ用語では“ブッファ”というんですが、そういうふざけた部分がとても多く、そこで千之丞さんに何かやってもらえるんじゃないか、という直感がありました。

オペラ《トゥーランドット》・・・・
プッチーニの遺作。プッチーニは、リューの死の場面を作曲したところでこの世を去り、友人のフランコ・アルファーノが補筆し、完成させた。大合唱と管弦楽を駆使した、プッチーニの作品の中でも、最もスケールの大きいオペラである。

― あらすじ ―
物語の舞台は、古代中国の北京。絶世の美女トゥーランドット姫は、結婚を申し込んでくる男に3つの謎をかけ、答えられなければ容赦なく処刑する、残酷な心を持っていました。戦いに敗れて放浪していたダッタン国の王子カラフは、たどりついた北京で、生き別れになっていた父ティムールと、父に仕えるリューに再会します。しかし喜びもつかの間。カラフは垣間見たトゥーランドット姫の美しさに心奪われ、父や3人の大臣ピン・パン・ポンが止めるのも聞かず、3つの謎に挑戦する決意を固めるのでした。


〜DIGEST〜
《第1幕》
北京の役人が、群衆に布告している。
「我らがトゥーランドット姫は 3つの謎を解いたお方にお興し入れなさる。
しかし その謎が解けなかった者は 打ち首に処す!」



戦いに敗れて放浪していた、ダッタン国の王子カラフは、
北京で、生き別れになっていた父ティムールと、父に仕えるリューに再会。
喜びを分かち合う。



カラフは、中国の皇女である、絶世の美女トゥーランドットを垣間見る。
そして、その美しさに心を奪われてしまう。
カラフは、父親とリューの反対も聞かず、トゥーランドットへの愛に苦しむ。



処刑人プーティンパオが、姫の謎を解けなかったペルシアの王子を処刑。
周りにいる群衆は、まだ少年のようなその王子に同情し、慈悲を乞う。



トゥーランドットに仕える、3人の大臣、ピン・パン・ポンが現れ、
姫の出す3つの謎に挑戦することが、どれだけ無謀なものであるかを
カラフに教える。



密かにカラフに好意をよせる、女奴隷のリューは、
過去に1度だけ、カラフ王子が自分に微笑みかけてくれたことが忘れられず、
カラフの運命を思い、挑戦に反対する。リューのアリア『お聞き下さい』を歌う。


《第2幕》
来る日も来る日も、処刑の仕事に嫌気がさしてきた、ピン・パン・ポン。
故郷に帰ってゆっくり暮らしたい、と夢を語る。
3人とも、トゥーランドットの幸せな結婚と、国の平和を願っている。



いよいよ、トゥーランドットが姿を現す。
自分がなぜ、そのような残酷な行為を行うようになったのか、きっかけを語る。
先祖であるローリン姫が中国を治めていた時代、戦いに破れ、
異邦人から辱めを受けた、その怨念を受け継いでいる、という。



今まで何人もの若者の処刑を見てきた、トゥーランドットの父親・皇帝アルトゥムは、
もう血を見たくは無い、とカラフの謎解きに反対する。
しかし、カラフは聞く耳を持たず、挑戦の決意を固める・・・・。


この続きは、次回の放送 11月25日(水) をお楽しみに!

指揮:井上道義  Michiyosi Inoue
1971年グィド・カンテルリ指揮者コンクール優勝。1983〜88年新日本フィル音楽監督、1990〜98年京都市響音楽監督・常任指揮者、2000年〜新日本フィル首席客演指揮者。シカゴ響、ロイヤル・フィル、ミュンヘン・フィル、スカラ・フィル、レニングラード響、マルセイユ歌劇場等にも客演。1999年よりBunkamuraオペラ劇場≪トゥーランドット≫を3年間にわたり指揮。エディンバラ公演も現地の聴衆に新鮮な衝撃を与えた。近年では、新日本フィルとともにマーラー・チクルス、3年にわたるコンサート・オペラ・シリーズなど意欲的な活動を展開しており、各方面から絶賛されている。2007年東京・日比谷公会堂にてショスタコーヴィチ交響曲全曲演奏プロジェクトを開催、音楽・企画の両面で大きな成功を収めた。2008年12月に上演された東京芸術劇場シアターオペラ、マスカーニ歌劇「イリス」で指揮、演出を務める。23年ぶり2度目の日本上演となったその公演は第6回三菱UFJ信託文化財団奨励賞受賞した。現在オーケストラ・アンサンブル金沢音楽監督ならびに石川県立音楽堂アーティスティック・アドバイザーに就任。
井上道義オフィシャル・サイト https://www.michiyoshi-inoue.com/
演出:茂山千之丞 Sennojo Shigeyama
3歳の時、狂言「以呂波」のシテにて初舞台以来、戦後、兄の千作と共に、狂言の普及に努める。古典の狂言だけでなく復曲・新作狂言、オペラ「魔笛」や「瓜子姫とあまんじゃく」等の演出も多数手掛ける。1948年、能楽会の数百年来のタブーを破って能狂言師としては初めてラジオ・ドラマに他のジャンルの俳優と共演。それ以後武智鉄二氏を中心とする新しい演劇運動に積極的に参画。保守的な能楽界で物議をかもし狂言界の異端児と呼ばれる。その間、廃絶狂言の復活上演や古典狂言の新しい演出、新作狂言の演出・出演にも努める。60年頃よりオペラ・新劇などの作・脚色・演出を始める。代表作として万博協会委嘱によるオペラ(三島由紀夫原作)「地獄変」がある。76年(昭和51年)より新劇「夕鶴」の山本安英「つう」の相手役「与ひょう」を演じ続け、500回を越えた。長年にわたって鍛え上げた芸に加え、生まれ持った声量、美声を武器とし年齢を感じさせないその舞台は観客を魅了してやまない。平成8年芸術選奨文部大臣賞受賞。他数多く受賞。著書に『狂言役者−ひねくれ半代記』(岩波新書)、『狂言じゃ、狂言じゃ!』(文集文庫)。CDに『ハイパー「室町歌謡組曲」「BASARASARA」』(fintec)などがある。
トゥーランドット姫:マリアナ・ツヴェトコヴァ Mariana Zvetkova
ブルガリア、ソフィア出身。ソフィア音楽院を優秀な成績で卒業。国内でイル・トロヴァトーレ、アイーダ、タンホイザーの主要な役柄でキャリアを始めるとともに、ローマ音楽院やインディアナ大学で学ぶ。その後、ミラノ・スカラ座、バイエルン州立歌劇場、ベルリン・ドイツ・オペラ、新国立劇場、リヨン国立歌劇場、ドレスデン国立歌劇場などでG.シノーポリなどのマエストロと共演する。録音はシノーポリとのドヴォルザーク「スターバートマーテル」(独グラモフォン)やE.スヴェトラーノフとチャイコフスキー「フランチェスカ・ダ・リミニ」、「アレコ」、ソフィア放送交響楽団とのマーラー交響曲第4番などがある。その間、1998年にはトゥールーズ国際コンクール(グランプリ)、1999年ニューヨークでのプッチーニ財団主催のコンクールで第2位などを受賞している。レパートリーは、トスカ、マノンレスコー、トゥーランドット、アンドレア・シェニエ(マッダレーナ)、仮面舞踏会(アメーリア)、アイーダ、ナクソス島のアリアドネ、イル・トロヴァトーレ(レオノーラ)、ドン・カルロ(エリザベス)、タンホイザー、さまよえるオランダ人(センタ)、カヴァレリア・ルスティカーナ(サントゥッツァ)などがある。近年では「トゥーランドット」のタイトル・ロールとして2008年ザルツブルクやストラスブール、東京(ソフィア歌劇場公演)で出演した。現代を代表する最高のトゥーランドット歌いの一人。
皇帝アルトゥム:鈴木寛一 Kanichi Suzuki
東京芸術大学卒業。モンテヴェルディ「オルフェオ」のタイトルロールの初演をはじめ内外の数多くのオペラのプリモとして出演している。宗教曲の分野でも不可欠の存在で、バッハ「マタイ・ヨハネ受難曲」等古典か現代の作品までの幅広いレパートリーを演奏している。著名な指揮者との共演も多く、マタチッチ、サヴァリッシュ、シュタイン、ライトナー、小澤征爾等と共演している。2006年には3回目のリサイタル、ドナウディ歌曲全曲のレコーディングを松本美和子と共演している。日本音楽コンクール、日本声楽コンクール、日本歌曲コンクール、藤沢オペラコンクール審査員。
ティムール:ジョン・ハオ Zhong Hao
中国沈陽出身。2001年に中国中央音楽学院卒業後、中国中央オペラハウスに入り、オペラ歌手として「アイーダ」(ヴェルディ作曲)のエジプト国王、「ドン、カルロ」(ヴェルディ作曲)のフィリッポ二世、「フィガロの結婚」(モーツァルト作曲)、のバルトロ、「セビリアの理髪師」(ロッシーニ作曲)のバジーリオ、「トスカ」(プッチーニ作曲)のシャルローネ、「森の歌」(ショスタコーヴィチ)など重要な役を演じた。2001年から2004年にかけて、北京、香港、マカオの国際音楽祭に参加。2001年には東京、長野でコンサートを開催した。2005年4月に来日、2008年3月東京芸術大学大学院音楽研究科声楽(オペラ)専攻修士課程終了。在学中、2007年10月、芸大創立120周年記念オペラ定期公演「ラ・ボエーム」(プッチーニ作曲)のコッリーネ役で日本におけるオペラデビューを果たし、一躍脚光を浴びた。11月には、芸大フィルハーモニア・合唱公演「レクイエム」(ヴェルディ作曲、小林研一郎指揮)においてソリストを務めた。2008年12月東京芸術劇場シアターオペラ「イリス」父親役で出演。 2007年、第38回イタリア声楽コンクール(毎日新聞社、日本イタリア協会主催)シエナ部門において第1位シエナ大賞受賞。これまでに、趙登瀛、長谷川顕氏に師事。
名を秘めた王子(カラフ):アレクサンドル・バディア Alexandru Badea
ルーマニア出身。わずか20歳でブカレスト国立歌劇場の一員として注目を浴び、その後ザルツブルク歌劇場の出演も果たす。これまでに世界の主要な歌劇場に出演。ワシントン歌劇場で、その芸術監督であるプラシド・ドミンゴの招きにより、ベッリーニの「清教徒」に出演する。その他、ヴェルディ「椿姫」のアルフレード、オッフェンバック「ホフマン物語」のタイトルロールなど、オペラやコンサートに多数出演し、活躍している。
リュー(若い女奴隷):小林沙羅 Sara Kobayashi
東京芸術大学音楽学部卒業。同大学大学院修士課程修了。 これまでに〈魔笛〉パミーナ、〈こうもり〉アデーレ、井上道義の上り坂コンサート〈バスティアンとバスティエンヌ〉バスティエンヌ、第58回芸大〈メサイア〉ソリスト、大野和士のこころふれあいコンサートのソリスト、サントリーホール成人の日コンサート〈フィガロの結婚〉スザンナ、〈第九交響曲〉ソリストなどを務める。11月には日生劇場に〈ヘンゼルとグレーテル〉グレーテルで出演予定。 千住明と松本隆のオペラ〈隅田川〉、同両氏の詩篇交響曲〈源氏物語〉ではソリストとして初演を務める。現代詩表現グループ「VOICE SPACE」メンバー。谷川俊太郎、佐々木幹郎、覚和歌子、小室等らと共演するなど、詩の朗読や新曲演奏にも力を入れている。日本声楽アカデミー会員。
ピン(宰相):萩原潤 Jun Hagiwara
東京芸術大学声楽科卒業。同大学院声楽科修了。二期会オペラスタジオ41期修了。修了時に優秀賞受賞。平成15年度五島記念文化財団オペラ新人賞受賞。文化庁派遣芸術家在外研修員、五島記念文化財団奨学金を通してベルリンで学ぶ。2000年よりベルリン・ハンス・アイスラー音楽大学大学院にてKonzert-Examenを最優秀の成績で取得。03年ラインスベルク音楽祭において500名の中から『セビリャの理髪師』のフィガロに選ばれ脚光を浴びた。その後は01年ベルリンでのガラコンサート(ベルリン州立歌劇場管弦楽団)やハイデルベルクにおいて『こうもり』ファルケ役を演じるなどドイツを中心に活動。最近では05年東京二期会公演『魔笛』パパゲーノ役、06年東京二期会公演『フィガロの結婚』伯爵役で好評を博したのは記憶に新しい。二期会会員。
パン(内大臣):与儀 巧 Takumi Yogi
沖縄県出身。国立音楽大学音楽学部声楽学科卒業。国立音楽大学大学院音楽学部声楽学科修了。1994年第47回全日本学生音楽コンクール高校の部福岡大会第1位、2002年、第71回日本音楽コンクール声楽部門入選、2006年、第42回日伊声楽コンコルソ入選、2008年第6回東京音楽コンクール声楽部門第1位及び聴衆賞。これまで、オペラをモーツァルト「コシ・ファン・トゥッテ」フェランド、「フィガロの結婚」ドン・バジーリオ、ドン・クルーツィオ。モンテヴェルディ「ポッペアの戴冠」ネローネ、ドニゼッティ「愛の妙薬」ネモリーノ、ヴェルディ「椿姫」アルフレード、フンパーディング「ヘンゼルとグレーテル」魔女、2006年国立音楽大学創立80周年記念オペラ公演「イドメネオ」でタイトルロール、イドメネオ役で出演。オペレッタ「メリーウィドウ」カミ―ユ。また、ベートーベン「第九」、バッハ「カンタータ」、モーツァルト「レクイエム」等の宗教曲もレパートリーとしている。これまでに声楽を田口 興輔氏、ジュリアーノ・チャンネッラ氏の各氏に師事。平成15年 6月よりイタリアボローニャへ1年間留学。現在、国立音楽大学大学院オペラ科演奏補助員。
ポン(総料理長):牧川修一 Shuichi Makikawa
武蔵野音楽大学卒業。1980年ローマに留学。平成5年度文化庁派遣芸術家在外研修員。 『リゴレット』マントヴァ公爵でデビュー以後『魔笛』をはじめ数々のオペラに出演し高い評価を得ている。90年には二期会創立40周年記念公演『春琴抄』及び同オペラのフィンランド・サヴォンリンナ・オペラ・フェスティバル公演に出演。その後も東京二期会公演や新国立劇場などで『蝶々夫人』『運命の力』『ジャンニ・スキッキ』等に出演。99年には『トゥーランドット』でエディンバラ国際フェスティバル公演にポン役で出演。オペラには欠くことの出来ないテノールの一人として活躍している。コンサートでは、ヘンデル「メサイア」、モーツァルト「レクイエム」等の宗教曲の他、ベートーヴェン「第九」、オルフ「カルミナ・ブラーナ」等でも出演を重ねている。二期会会員。
役人:小林大祐 Daisuke Kobayashi
富山県富山市出身。東京芸術大学声楽科卒業。同大学院修士課程在籍。「コジ・ファン・トゥッテ」グリエルモ、「フィガロの結婚」フィガロ等オペラに出演する他、「第九」公演などのソリストも務める。2008年3月、オーケストラ・アンサンブル金沢のオペラ「カルメン」公演にてダンカイロを務める。
ペルシアの王子:中村順一 Junichi Nakamura
石川県出身。1993年からプロダクションアーニング在籍、地元CM、VP、エキストラ、ステージなどに出演。エクラン演技集団在籍。イベント活動では、2000年福井県での「恐竜エキスポふくい2000」フクリュウのクイズ&セミナー、2001年金沢市での「夢みどり石川2001」 森のシアター忍たま劇場チームリーダーを務める。 2000年から劇団KAZARI@DRIVEに所属。 オペラでは金沢歌劇座において2007年歌劇「カルメン」、2008年「ボエーム」に助演で出演。 2006年から代々木アニメ−ション学院金沢校 声優タレント科講師として指導。
プーティンパオ:風李一成 Kazunari Kazari
1962年生まれ、俳優・作家・演出家。 劇団KAZARI@DRIVE(カザリドライブ)を主催し、演劇人として地域文化の振興に努める一方、TV、ラジオなどでナレーターとして活躍中。 ナビゲーターを務めるラジオプログラム「That's Music」(エフエム石川、毎土曜午後7時〜)は、放送開始よりおよそ10年にも及ぶ人気番組である。 これまでに関わってきた舞台、イベントステージは数え切れない。 また、短編映画やTV番組の監督演出も行っている。日本劇作家協会会員。