2月16日

いつも役場の前で、季節や天気の移り変わりや人の動きをよく見ていた北登。
小屋は古民家の玄関先に移したのですが、もう慣れてきたようで落ち着き、元気に暮らしています。


山に入ると北登は、積もった枯葉の上をかさかさと音を立てながら歩きます。
枯葉は、薄暗いときに見ると、今にも腐りそうでじめじめとしているのですが、日が射すと、ふかふかとしていて、こんもりと積もっているところを見ると、寝転びたくなるほどです。そして、茶色いものから黄色いものまで色とりどりで、それがまたいい具合に散らばっていて、あたたかみのある風景となっています。
葉の美しさは、若葉のころのみずみずしさや、紅葉のころの色鮮やかさなど、季節によってさまざまですが、この季節の、落ちて腐っていくときを静かに待っている姿も、何か、思うところがあります。散ったあとにもそれなりの美しさはあるものです。



枯葉の上を歩く北登は、なかなか先へ進みません。ところどころで止まっては、枯葉の中に顔をうずめて何かを探しています。
北登があるところで顔をうずめて、ずっとがさがさやっているので、しゃがみこんでそれを見ていると、北登は、どんぐりを見つけました。
これはコナラのものでしょうか。手にとって日に当ててみると、色つやも、形も、手触りも、硬さの感じも、とても味わいがあって、愛着が湧いてきます。


ずいぶんと長く感じられる冬。
枯葉の山に埋もれたひとつのどんぐりは、地に落ちて転がり、枯葉の山に埋もれ、人に踏みつけられながらも、ひっそりと黙って、鈍い光を放っています。
私はこの、小さいけれども簡単には割れないほどに硬いどんぐりをポケットに入れ、山を下りました。



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