夕方になると村中に響き渡るカエルの鳴き声。雨がよく降った今週は、一段と大きく聞こえた。いつもくらいの音量なら、聞こえていても聞こえないふりをするのだけれど、この大音量ではそうはいかなかった。


 主に両生類系を苦手とする僕だけど、その中で最も苦手なのがカエル。いつからこれ程までにカエルが駄目になったのか、自分自身でも全く分からず、どんな理由で駄目になったのかも分からない。もの心ついたころには既にカエルを恐れていた。しかし、ここで暮らしている以上カエルは避けて通れない。カエルが囲む古民家の中で怯えながらそんなことを思っていた。そして、理由が分かれば好きになるかもしれないと閃いた。


 まずカエルの姿を思い浮かべ、すぐに気付いたのがあの両生類独特のヌルヌル感。じっくり触ったことがないから実際にヌルヌルしているのかどうかは分からないけれど、ツルっとした表面と濡れている感じが苦手。そして次に気付いたのがあの動き。ピョコピョコと自由に跳ねているのを見ていると、次のジャンプで僕の体に上ってきそうで怖い。そして、最後にあの表情。妙にかわいらしく愛嬌のある顔が僕には苦手となる要素の一つ。かわいらしい表情の裏側では何か企んでいそうだと思ってしまう。まるで僕が苦手だと知っているかのように。


 僕はこれらの理由全てを大したことないと自分に言い聞かせた。ヌルヌル感はコンニャクだと思えばいいし、かわいらしい表情はいつも見ているこうめと思えばいいし、ピョコピョコ跳ねるのはこうめの顔をしたこんにゃくが飛びついてきたと思えばいい。想像すると逆に怖いけれど、苦手ではないもので似たようなものはたくさんある。そう言い聞かせた。

  そんなに意気込んでも、昼間カエルに遭遇することはまだあまりない。しかし、ため池や、畑のわきの沢では大量のおたまじゃくしが着々と大きくなっている。僕のタタカイはまだ始まったばかりだ。

 

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