梅雨の晴れ間をねらってせっせと働いているのは「ニホンミツバチ」。村の住人になってちょうど1年が経った。
 今年の冬は雪こそあまり降らなかったものの手が凍るような寒さが続き、ミツバチ達が全員死んでしまうのではないかと、とても心配だった。そんな気持ちが届いたのか、無事冬を越してくれ、この夏も元気に飛びまわっている。ミツバチ達は冬の間、全員がひとつにまとまる『蜂球』を作り胸の筋肉をふるわせお互いを暖めあう。また蜂蜜を分け合うことで、生き延びる。人間も一人だけでは生きて行くことが出来ないけれど、ミツバチの社会では、人間以上にお互いの協力がないと生きていけないのだと思った。

 そんな協力性あるミツバチの数も去年の倍以上になり、村の丸太の巣箱からはじめて分蜂することになった。
  「分蜂」とはどういう現象かをある程度把握していたけれど、実際自分の目で見ると 想像を超えるものだった。何千匹ものミツバチが飛び回った。巣箱からあっという間に出て行き、あっという間に真上にあるヤマザクラの木の上に蜂球を作った。その蜂球は残念ながら里山へと飛んでいってしまった。でも2回目の分蜂で無事村の新巣箱に入ってくれた。本当によかった。今年もまた新しい仲間ができた。




 そんなミツバチ達は蜂蜜以外にも私たちにプレゼントをくれた。それは「蜜蝋」のろうそく。蜜蝋とは、簡単に言うとミツバチの巣の材料そのもので、蜂蜜を取り終わった後の巣のかけら。ミツバチは巣を作るため、お腹からこの蜜蝋を分泌する。蜜蝋のもともとの原料は集めてきた「花粉」や「水」。よ−く考えると花粉や水がミツバチの体を通ったら、蝋に変わるのだからすごいことである。ミツバチの体がどんな仕組みになっているのか本当に不思議。そんなミツバチがくれたプレゼントをろうそくにし、真っ暗な風呂に火をともした。
 風呂の中でともる蜜蝋のろうそくの明かりは、なんだか暖かく、優しい光だった。また、ほのかに漂う甘い香りがなんとも言えない心地よさ。いつまでもつけていたくなる。そしていつまでも見ていたくなる金色の輝き。これもミツバチのおかげ。本当にありがとう。
 そして今年の秋もおいしい蜂蜜をお願いします。

ところで心地よさと言えば、この時期村で吹く風もこれもひんやりとして気持ちが良い。
でも今年の梅雨は少し寒すぎるかもしれない。夏を目前にして時々囲炉裏の火が恋しくなる。
寒いのは私だけではないようで、リンダと晴男も寒そうに仲良くまるまっていた。
でもどうやら2人には蜜蝋のろうそくも必要ないみたい。

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