「暑さ寒さも彼岸まで」の言葉どおり、彼岸明けを迎えた村はすっかり春模様。
朝晩の冷え込みはあるものの、昼間は眠りを誘うほどの暖かさ。
北登もこの陽気に誘われたのか、気持ちよさそうに眠っている。眠りすぎて心なしかふくよかになった気もする。でも蕾のように膨らんだ北登もまたかわいい。

 もう一方でうたた寝をしているのは、生まれて3週間の仔山羊。さっきまで元気に小屋の中で動きまわっていたのに、今はもう気持ちよさそうに眠っている。




 そんな仔山羊の姿を見ていると、なんだか温かい気持ちになる。
でも、もっと温かい気持ちになる姿がある。それは、リンダの母親としての姿。
 肌寒い夜は、体全体で仔山羊を包み込むように眠り、起こしてでもちゃんとミルクをあげる。初産にも関わらず、しっかりした母親ぶりは祖母マサヨに似ているのかもしれない。

 こんな微笑ましい姿が見られるのも、春ならでは。植物に関わらず、動物も春は命の誕生の季節。やっぱり春はいいな。
でも、いつまでもそんな姿に見とれているわけにはいかない。
 お母さんになったリンダに負けないよう、私も頑張らなければ。

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