「芸術の冬」

 年末の雪は、徐々に溶け始め、時折春のような陽射しが役場の中に差し込む。
正月疲れかこの陽射しが眠りを誘い、最近ついつい昼寝をしてしまう。
 昼寝というのは驚くほどに気持ちがいい。夜眠るのと変わらないはずなのに、なぜこんなにも気持ちがいいのだろうか。特別な感じがいいのだろうか。

 そんなことを思いながら、目を閉じる瞬間、この上ない幸せを感じる。ずっとこのまま眠ることができればいいのに。そう思うとなんだか冬眠している里山の動物達が少し羨ましくなった。




 夕方、そろそろヒツジ達を小屋に入れようと、重い腰をあげ外に出てみると一瞬で目が覚めるくらいの寒風が吹き付けた。
 冬の風は本当に驚くほどに冷たい。この寒さで回っていた水車もいつからか凍りついていた。その姿は今まで見たことがないくらい綺麗だった。
 水輪につく氷から、地面にできる氷、1つ1つがすべて違う氷。それらは自然だからこそできる形と輝きなのだと、改めて感動した。
 これは冬にしか味わえない芸術。

そんな姿に見惚れている私の横で、ヒツジ姉妹は地面にはった氷を飴玉のように美味しそうになめていた。ヒツジ達は芸術より、食欲らしい。

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