「雪積もり 北登は喜び 村駆け回る」

朝方に相当冷え込んだ日があった。あまりにも寒かったので温度計を確認したら、−15℃を差していた。ここまで温度が下がると寒いというより、寒過ぎて痛い。顔などどうしても露出しなければならない部分には寒さが突き刺さり、露出していない部分もいつもの服装では事足りずもう一枚重ね着する。普段凍らない物まで、村全体が凍てついた。物を洗ってもその瞬間に凍ってしまうし、水滴さえ垂れたその場で氷になった。

縮こまりながら歩いていると視線を感じたので見てみると、こんな寒さ厳しい環境の中で何にも変わった様子なくキョトンと見つめてくる北登がいた。北登の瞳に映るのは、着膨れするほど厚着をしている僕・・・。思えば、北登が寒そうにしている様子を見た覚えがない。むしろ、雪が大好きだ。

  雪やこんこ 霰やこんこ。
  降つても降っても まだ降りやまぬ。
  犬は喜び 庭駈けまはり、
  猫は火燵で丸くなる。


この歌詞で有名な童謡「雪」。その中の歌詞にある通り、村のわんぱく坊主「北登」もまだ厚く残る雪の上を元気いっぱいに走り回る。むしろ、雪が降るといつも以上にテンションが上がり、雪の中に鼻を突っ込んだまま歩き回ったり、新雪をわざと選んで歩き感触を楽しむ。さらに、牧草地に放すと喜んで跳び回る。はしゃぐ北登を見て、「寒くないのかなあ」といつも不思議に思ってしまう。




気になったので調べてみると、そもそも厳しい冬がある日本の犬種は寒さに強いらしい。ただ、冬毛に換わる時期には寒さに当て、充分な冬毛を生やしてやらなければいけない。暖かい部屋でぬくぬくしていたら、寒さから身を守る冬毛が十分に生えてこない。そう考えると暖房器具がない村で過ごしている北登は冬に入る前に寒さに当たり、充分な冬毛をこしらえていたみたいだ。やっぱり生き物は環境に適応していくモノで、「寒い寒い」と言いながら厚着をしている僕は少し北登を見習った方がいいかもしれない・・・。

そして、寒さが厳しく雪が舞う日に生まれたふぶきも満1歳になった。極寒の中、弱々しくも生き抜いたふぶきもこの寒さを諸ともせずに元気まんまん。
雪も融け始めた日、小屋の外に出し、久しぶりに母親であるリンダと一緒に放牧した。生後3ヶ月以降、別の小屋に入れていたが、すぐにリンダの後をずっと付いて回っていた。一緒の小屋に入れている時もふぶきはリンダの後を付いて回っていたけれど、一年経っても変わらないなあ。

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