磁器とは・・・・
美しい白色で鮮やかな絵付けが特徴の磁器。1300〜1400℃の高温で焼かれ、陶器に比べ、硬くて、軽く、半透光性。また、表面は硬質のため水を通さない。
安土桃山時代に朝鮮から伝わり、肥前周辺(佐賀・長崎)を中心に各地に広まっていった。


土づくり
長橋さんから磁器を作る土は、陶器の土とは違い、「陶石」という珪砂の多く含まれた石を原料に作られているということを教わり、その「陶石」を求めて、長橋さんの知り合いの窯元へ出かけ、村でつくる分の陶石を掘らせてもらった。
まずは、掘ってきた陶石をハンマーで細かく砕く。そして、「水簸(すいひ)」して白いところだけを残して、粘土にしていく。

「水簸(すいひ)」とは・・・
陶石を細かくつぶして水を混ぜて攪拌する事で、陶石に含まれる不純物などを取り除き磁器づくりの土として良質なものにしていく作業。

大きな陶石を1つ1つ細かくし、ふるいにかける。ふるい終わったサラサラの陶石に水を入れていく。水を入れてかき混ぜることで、不純物が浮き上がり、よりきめ細かい土に仕上がる。
そして、つなぎとして村の土を陶石に混ぜていく。この作業を5〜6回は繰り返えす。
2週間が経過し、土の状態を見てみると、トロトロに混ざり合った状態に変わっていた。

次に、水分を抜き磁土にする為、布袋に土を入れていく。これに重しをすれば徐々に水分が抜けていく。
布袋を触り、ある程度水分が抜けたら、さらに水分を抜くため、板に土をのせていく。水と粘土を分離させるために3日ほど天日で乾燥させていく。冬の寒い時期に乾燥させることで、夜に土が凍み、昼間は融けてというように、凍った水分がゆっくりと抜けていく。
耳たぶくらいの固さまで水分が抜けたら、ひとまとまりにし、手でこね、濡れたさらし布で磁土を包み、保管する。これで磁土は完成。



成形
陶器の時は、役場の片隅でロクロをまわしていたけれど、今回は、役場の隣にできた新しい工房での作業となった。
磁器は陶器の土よりも固いため、強い力で土を上げ、均等に伸ばしていくことが重要。
土が固いため、なかなか思うようには出来なかった。
長橋さんの指導の下、初歩の湯のみから茶碗、お皿と色々な形の器を作った。


そんな中、達也さんは、高度な技術が必要となる「急須づくり」に挑戦。
一方、太一さんは大物で成形が難しい火鉢に挑戦した。あまりの細かい作業に私は、驚くばかりだった。そして、この時初めて、急須は4つのパーツからできていることを知った。

素焼
工房の中で充分に磁器を乾燥させ、さっそく窯場へと運ぶ。素焼き前の磁器は割れやすいということもあり慎重に運んだ。窯詰めはじめから4時間で、ようやく280個の磁器が詰め終わり、窯を塞いでいく。
いよいよ火入れ。火もしっかり吸い込み始め徐々に温度をあげていく。素焼き開始から8時間後、煙突からは煙が立ち上がり、窯の中の温度も明るく変化してきて800℃となる。2の間を覗くと、炎はしっかりとあがっており、その後も薪を焼べ、素焼きは無事終了した。




米糊修復
素焼きが終了し、2日後、冷めたレンガを外していく。素焼きはうまく行き、白く焼き上がった状態、しかし中にはヒビが入ったものが出てきた。大きく割れているものから小さくヒビが入った状態のもの。達也がつくった急須には底に小さくヒビが入っていた。
そこで、その壊れた箇所を補修するため、素焼きで大きく割れてしまった磁器を砕いて、粉状にしたものと、米糊を混ぜて、底の割れた部分に塗った。
1週間後、底を見てみると、ちゃんと割れ目が見えなくっていた。



絵付け
磁器の特徴の1つでもある鮮やかな絵付け。村では手づくりの絵具を作った。
1つは「銅」。半鐘で使った銅を囲炉裏で温め、水につけて一気に冷やし、そのサビを取り出した。長橋さん曰くこの銅は、本焼き上げるとは、赤色に発色するとの事。
2つめは「鉄」。農具についたサビを削り取り、さらに細かく擦った。この鉄は本焼き後は、黒色に発色する。この2種類に加え、長橋さんが持って来て下さった。「呉須(ごす)」の青色の3色を使って絵付けをした。
絵付けもそう簡単にはいかず、なかなか上手くは描けなかった。



釉薬づくり
釉薬とは、耐水、耐久性を強化するため、磁器の表面をコーティングさせる薬。
陶器の際も2の間、3の間のものには釉薬を施した。しかし、今回は、磁器の白さを生かすために、透明な釉薬をすべてに施す必要がある。
そのためには、ケイ素を多く含んだ石と、熔融剤としての灰が必要となる。今回は透明の釉薬にするため、鉄分の少ないナラの木だけの灰を使った。ふるいでふって、鉄分を取り除き、水簸(すいひ)を行った。それに素焼きの際に割れてしまった磁器を粉にして作ったものを混ぜて作る。この透明釉薬を使用すれば、本焼きの際、ガラス状に融けて光沢ができ、絵付けした模様もはっきり見える。
絵付けが終わった磁器をこの釉薬に浸し、乾燥後、サヤにつめていく。1日かけてようやく窯詰めが終了した。



本焼き
1・2日目と徐々に窯の温度をあげていき、3日目から4日目にかけて窯の温度をピークの1300℃に持っていく。この時、しっかりと3日目に温度を上げないと釉薬がうま くかからない。
勝負の3日目の夜、窯の温度は950℃になり、ここからは薪を絶やさず焼べ続けなくてはいけない。炎の色は赤みがかった色から白さを増してきた。しかし釉薬はまだ溶けてこない。さらに温度を上げ続け、窯を覗き込むと、うっすらと目印の磁器の釉薬が溶けてきているのが分かった。この時、窯の温度は1200℃ほど、後はゼーゲルコーンが倒れるのを待つのみ。
4日目の日中、4時間遅れで、ようやくゼーゲルコーンが倒れた。この時窯は1300℃近くになっていた。これで、1の間は終了。続いて2の間にも薪を焼べて、2の間の炎は順調に上がり、無事本焼きは終了した。


こうして緊張の4日間は終わり、窯を開けてみると、絶句してしまうほどの綺麗な磁器が出来上がっていた。
少し割れてしまったが、小さいものも含め、計231個の磁器が完成した。





トップへ戻る