墨とは・・・
墨は、煤(スス)と膠(ニカワ)を練り合わせて作られるもの。
膠とは、動物(牛や鹿)の皮や軟骨など煮た汁を固め、一定の厚さに切り取り乾燥させたもの。墨には欠かせない材料で、紙や木に書かれた煤を定着させる働きをする。
墨は気温が高く湿気の多い夏場は膠が腐りやすく、墨づくりに適さない。そのため墨づくりは毎年10月中旬から翌年4月下旬までの寒期に行われる。
墨の歴史は、紀元前に始まり日本には、飛鳥時代に伝来したと言われている。
墨は大きくわけて3種類ある。

<墨の種類>
松煙墨(しょうえんぼく)・・・・松の木やその樹脂を燃やした煤で作られた墨。黒味の奥に青味があり、光沢がやわらかい。油煙墨よりも歴史が古く、正倉院に保存されている日本最古の墨も松煙墨である。

油煙墨(ゆえんぼく)・・・菜種油・大豆油・椿油・ゴマ油などの植物油を燃やして採った煤から作られた墨。黒味の奥に赤みがあり、粒子の伸びが良いのが特徴。

洋煙墨(ようえんぼく)・・・・鉱物油(軽油・重油などの石油系の油、石炭系の油)から採った煤から作られた墨。現在、一般的に、広く使用されているのは、この洋煙墨である。

この中でも今回村では、里山でアカマツの古材を採取して松煙墨を作った。



2月中旬 煤集め
かまど・登り窯の掃除をし、墨づくりに必要な煤を集める。墨を作るには少なくともd200gの煤が必要。しかし、掃除をした分の煤だけだと足りない。そこで、里山に入って松の古材探しをした。
枯れて倒れた松は長い年月をかけて朽ちていく際、松ヤニの部分だけが残り、それが脂がのっていい煤が採れる松材となる。松ヤニが多い古材を明雄さん指導のもと探した。


2月下旬 煤づくり
拾ってきた松を天日干しにして、小割りにして燃やす。昔ながらの障子炊きの要領でかまどで煤を採る。良い煤を採る為には酸素を抑えて少しずつ燃やすのがコツ。
じっくり10時間燃やし続けて、ふわふわの黒い煤が50g採れた。


3月下旬 墨づくり
1.膠を溶かす
膠と同量の水と一緒に湯煎で溶かす。約3時間で液状になる。

2.膠と煤を乳鉢に入れて混ぜる
煤の中に含まれた空気を抜くために、乳鉢に入れてよく練る。そこに、湯せんで溶かした膠を少しずつ混ぜて、煤の中に練り込む。

3.金属の板の上で練りこむ
温めた鉄板の上で、墨を伸ばして折り曲げ、伸ばしては折り曲げてを繰り返して練りこんでいく。
膠は18℃以下になると固まるので、鉄板が冷えないように、鉄板の下を七輪で温める。

4.型入れ
丸い球状にし、型に入れ、蓋をして圧縮する。

5.型出し
型に入れてから20分ほどしたら型から出す。この時点では、まだ墨は柔らかい。これが乾燥すると徐々に硬くなる。

6.乾燥
急に乾燥させると割れてしまうため、木箱に灰を入れて、新聞紙で挟んで乾燥させる。
1週間ほどは乾燥具合を確かめながら毎日ひっくりかえす。このまま3ヵ月は木箱の中で乾燥させる。


4月上旬 硯・竹筆づくり
墨で文字を書くためには、「硯」と「筆」も必要。
日本の古い硯は、陶器や磁器、瓦など焼き物の硯ということもあり、磁器で硯を作った。墨が擦りやすいように、表面には釉薬を塗らずに仕上げた。
また、竹筆は、村の里山から細い竹を採取し、お湯につけ、竹の先を細かくさき、穂先に仕立てた。その後、叩いて柔らかくし、使いやすくした。




トップへ戻る