和傘とは・・・・
竹、和紙、のり、油など自然素材だけで作られている傘。柔軟性があり修理も利く。
傘にもいろいろな種類があるが、竹と紙で出来た雨傘は平安時代には使われていたと見られ、昭和の最盛期を迎えるまで和傘は日本人の生活には欠かせないものだった。
和傘づくりの工程は100を超えると言われる。
2008年 12月 骨組みの竹探し/骨づくり
和傘の骨に使われるのは真竹という種類の竹加工しやすい竹。
まっすぐな真竹を1本選んで伐採し、必要な長さに切って、加工しやすいよう水につけておいた。
1週間後、竹は加工しやすいように柔らかくなり、さっそく和傘の骨づくりにとりかかる。
骨づくりを専門とする職人の一色さんの指導のもと、骨づくりはスタートし、まずは骨の長さに竹を切る。
和傘は長短2種類の竹の骨をつないで作られている。長い骨は親骨と呼ばれ、それを支える短い骨は、小骨(コボネ)と呼ばれる。番傘の場合、それぞれ48本で、計96本ほどの骨が必要になる。
和紙を貼る部分は糊が着くように竹の皮を削る。
親骨は、全面に和紙を貼るため皮の部分はすべて削る。竹の形にぴたりとハマる専用のカンナで、竹を足で転がしながら削るのだが、なかなか上手く削れなかった。
次に、削った竹に傷をつける。これは、竹を後で元通りに並べる為の印。竹を細かく割って骨にする際 バラバラになった骨をつけた印を目安に元の順番に並べ替える事で元の竹と同じきれいな筒にする事が出来る。これは、傘を閉じたときにぴったりと骨が揃う為の工夫。開いて花、閉じ て竹が理想の和傘の姿だと言われる。
最後に、印を付けた竹をナタで割り、細かく削る。 親骨の幅は3ミリ、小骨はもっと細くなり、なかなかうまく削れず、何回もやり直した。
2009年 1月 ロクロづくり
太さはバラバラであるけれど、なんとか骨が完成し、骨を放射状につなぐ「ロクロ」と呼ばれる部品をつくる行程にとりかかる。
資材置き場で、ろくろの木材を探す。通常「ロクロ」にはエゴノキが使用されているということで、エゴノキで「ロクロ」をつくることに。「ロクロ」は頭と手元 で2個必要になる。
現在和傘用のロクロを作っているのは全国でも1軒のみで、しかも機械で製造。そこで、お椀づくりでお世話になった紀さんに相談し、手引きロクロで「ロクロ」を作る事に。
作業は夜までかかり、ようやく「ロクロ」の形にはなったものの、それから骨を入れる溝をつくり、糸を通すための穴を作るのがとても大変な作業だった。
2009年 2月 紙漉き
和傘問屋の3代目の坂井田さんに手づくりのろくろを見てもらい、どうにか「ロクロ」も完成した。
そして、和傘の材料の1つ、和紙の紙漉きにとりかかる。
今年は、傘に張る為にも少し厚めに、均一にと注意しながら紙を漉いた。晴れた日に天日干しを行い、無事和紙は完成。
次にとりかかったのは、傘を開いたときにロクロを柄に固定するための部品「ハジキ」づくり。
昔は木製の木ハジキで、竹のバネが柄の内側に当たって跳ね返る力になっている。
中にはハジキが2つついているものもある。それは雨や風の強いときにすぼめてさせるようにとの粋な心配りの工夫。それを見習い、ハジキも取り付けてやっと傘の姿が見え始めた。
2009年 2月 つなぎ/手だめ/間くわり/紙張り
和傘づくり開始から3ヶ月が経過して、次は「ロクロ」と骨をつなぐ「つなぎ」作業にとりかかる。
まだ修行中という職人の高橋さんに教わりながら骨と「ロクロ」をつないでいく。慣れない作業ということもあり、かなりの時間がかかった。
ロクロと骨が繋がったところで、最後に親骨と小骨をつなぎ、ようやく骨組みが完成した。
さらに、この骨のゆがみを直し形を整えるために火であぶって手で矯正する。
これは、「手だめ」という作業。こんな作業もこなす張り師の大橋さんのOKがでたので、骨広げてみると、無事丸みを帯びた骨のラインになっていた。そしていよいよ張りの行程へとりかかる。
まずは、骨のバランスを「間くわり」という作業で整え、その間隔を決定する軒紙張り、補強の中おき紙をはる。
ようやく本体の天井張りにとりかかる。張りの作業の中でも最も難しい部分。天井部分は骨の動きに対応するよう作られていて複雑かつ頑丈な作り 何重にも巻き付ける。細かく、正確さが要求される仕事で、とても神経を使う作業だった。
紙張りの糊はわらび粉を炊いたものを使用した。最後に手元紙を張って後は乾燥するのを待つ。
2009年 4月 たたみ
「たたみ」の工程にとりかかる。
骨ひとつひとつに折り目を付けて閉じた状態で輪っかをはめて、たたみ癖をつける。
2009年 5月 渋引き/油引き/天日干し/カッパつけ
骨の上の部分は破れやすいので糊を塗って強化し、更に渋を塗る。
柿が多く実った年に青い柿を事前に収穫し、擦りおろし、搾った液をカメに入れて1年寝かせた「柿渋」。今までは木材に塗って防水、防腐剤として使っていた。
柿渋が乾いたら 人肌に暖めた油に天井を浸す。天井にしみ込ませた後、さらしで作ったモップに油をしみ込ませて全体にまんべんなく油を引く。1日置いて油をなじませ、天日干しする。
天日干しから1週間後、無事和傘が完成。
完成した傘を試しに使ってみたら、綺麗に水を弾いていた。