2008年5月 定植 株分けして頂いたマコモを定植する。場所は田んぼの南側、ぬかるんだ土壌を利用する為、かつてレンコンを植えた池に植える。マコモを栽培する上で、最も気をつけなければいけない事は水温管理。黒穂菌の活動が活発となる15〜25℃を目安に水温を保つようする。 |
2008年6月 生長様子見 空梅雨で晴れ間が多かった一昨年の6月は葉が大幅に伸びた。明雄さんから分けて頂き、一緒に栽培していた食用のマコモは生長が早く、二週間で95cmにまで達する勢いだった。食用のマコモは、マコモズミを採取するマコモと同じ植物だが、食用に黒穂菌の繁殖が少ない株を選別した栽培用の品種。 |
2008年10月 野生種マコモ様子見 生長の遅れていた野生種のマコモは葉が枯れ始め、これが枯れきる頃に収穫する。膨らみ始めたマコモを切り、断片を見てみると黒い粉状の物が。野生種マコモの生長も進んでいるようなので、もう少し様子を見る事にした。 |
2008年12月 収穫 野生種マコモは完全に枯れきり、いよいよ収穫。収穫した野生種マコモは合計18本。これを概ね半年間は乾燥させ、水分を完全に抜くとマコモズミが粒子の細かい胞子状態になり、無駄なく採取出来る。お盆づくりの準備も進めつつ気長に乾燥を待つことに。 |
鎌倉彫 カツラやイチョウなどの木を用いて生地を形成し、書きこんだ線の外側を彫刻刀で落とし文様を浮き上がらせ、文様以外の部分には各種の刀を使い刀痕(とうこん)をつける。木漆を生地にしみ込ませ、研ぎを施しながら漆を塗り重ねていき下地を作る。下地となる漆の乾燥を見極め、マコモズミを塗り陰影をつけ、磨き上げれば朱塗りの一種で、日の丸の色である本朱のお盆になる。 |
工程@ マコモズミの乾燥確認 野生種のマコモを収穫して1年が経過した2009年の11月、じっくり乾燥させたマコモの中を見てみると、完全に水分が抜け茶色く粒子の細かいマコモズミが。マコモズミを採取する準備が整ったので、いよいよ茶盆作りが始まった。 |
工程A 木地探し 塗り箸でもお世話になった漆職人の秋葉さんにご指導頂き、村の廃材で適した木材を探す。秋葉さんが薦めてくれた木材はトチノキ。トチノキは材質が均等で乾燥しても変形が少なく、木地を加工しやすいそうなので、トチノキでお盆を作る事にした。 |
工程B 木地加工 一般的な給仕盆サイズの30cmを目安にトチノキを切り、縁を5mmの幅で残し、1cm程の深さになるよう内側を彫り削る。しかし、5mm幅の縁を残し掘り進めるのはなかなかの至難の業。少し力を入れ過ぎ縁までも削り落としてしまった。 |
工程C 修復-米粉漆 削ってしまった縁は修復が可能。男米のクズ米を利用し糊にして漆と混ぜると米のデンプン質が強力な接着剤になる。米粉漆ができあがり、たっぷりと塗り、押し固める。こうする事で漆がさらに木地に吸われるので強度が増し補強される。 |
工程D 下地塗り 漆を塗り乾燥させたものを研ぐ。これを3回繰り返し、その度に漆が木地に染み込むので木地の強度が上がる。 |
工程E 色漆 酸化鉄などの鉱物の原料に漆を混ぜ、色漆を作り、3回目の下地塗りで使用する。色漆には本朱、ベンガラ、山吹、レモンイエロー、コバルト、緑、白などの色がある。鎌倉彫は中心の色が朱色になるので、朱色を軸に色漆を使用すればマコモズミが際立つ。 |
工程G マコモズミの磨き 乾かす事一週間。乾燥したお盆はさらに黒みを増していた。これを磨き砂で磨けばあの独特な陰影が出て来るはず。 丁寧にマコモを擦り削っていくと無事あの陰影が浮き出て来た。 |
工程H すり漆 ツヤ出しと補強を兼ねた仕上げに拭き漆を施す。磨き上げたマコモズミの上から漆を一塗りすると光沢と共に深みも増し、村オリジナルの特製茶盆が完成した。 |