麦わら帽子
麦わらで編まれた帽子。
断熱性・通気性に優れている。麦わらはカビにくく、中が空洞になっているので帽子の素材として最適。一方、同じワラの稲わらは内部が多孔質のスポンジのような構造になっているのでカビやすく腐りやすいので、帽子の素材としてはむいていない。
「ストローハット」と呼ばれることもあるが、ストローハットとはヤシの木などの天然繊維で編まれた帽子の総称になる。


2010年7月 大麦収穫
黄金色に輝く大麦畑。例年、この実の部分を色々な事に利用していたが、今年は実だけでなくワラも活用して「麦わら帽子づくり」に挑戦することにした。麦わらは若すぎるとまだ青く脆いが、逆に熟れすぎるとワラにカビが繁殖してしまい、麦わら帽子がくすんだ色になってしまう。大麦の収穫は稲刈りもまだやった事の無い僕にとって、稲刈りの予行練習を一足早くやっているようだった。束ね方も教えてもらい、束ねたワラは馳せ掛けで乾燥させた。




【三平編み】
乾燥させている間、僕は岡山県浅口市にある『かもがた町家公園』に麦わら帽子の作り方を習いに行った。色々と学べたのだが、それと同時に僕たちの手で本当に完成出来るのか一気に不安になった。
まずは山本敏夫さんに「麦稈真田」という麦わらの編み方の中でも2本のワラを三つ編み状に編んでいく三平(さんぴら)編みの編み方を教えてもらった。山本さんは小学生の頃、夏休みの宿題としてこの真田編みが出されていたらしい。
麦わら帽子の縫い方として、1本の紐を頭頂部から一気につばの先まで縫っていく。なので、なんと35mもの長さの紐が必要になると言うのだ。1本が大体20〜30cmのワラ2本を編むと、半分以下の10数cmになってしまうので、35mも編まなければならないとなると一体どれだけ編めばいいのか想像もつかなかった。


【ミシン縫い】
見学させていただいた工場では、35mの真田編みを麦わら帽子専用のミシンを使って縫っていた。しかし、備え付けのこのミシンを借りる事は出来ず、村で使えるのは近隣の方からお借した一般的な足踏みミシンだった。しかし、足踏みミシンだと帽子を立体的に縫う事は出来ないので、話し合った結果、頭頂部・側面部・ツバとパーツごとに作り、最終的に一つに繋ぎ合わせる事にした。こうすれば平面に縫っても大丈夫だし、一人が35mも編むのではなく、みんなで分割して編めるようになった。形も今、流行のかんかん帽に似たものになった。なんとか目処がたったので、早速作り始める事にした。





【編み込み】
1 乾燥させたワラを水に浸し、水分を含ませ編みやすいようにする。
2 ワラの節を取る。*節は折れやすい
3 繰り枠という器械でワラを束で押しつぶし、平らにする。
4 押しつぶした2本のワラを使って編む。
5 合計35mになるまで編み続ける。
35mも編むと考えると遥か遠く感じてしまうが、少しずつ編み進めていくしかない。しかし、慣れて来ると早くなるし、無心になれるので途中からは楽しんでいた。僕は、明雄さんと協力しつつ進め、最終的に10mの麦稈真田を編み込めた。こつこつと地道だけどしっかりと進めていくと意外にあっという間だった。





【型作り】
帽子を作るには型が必要という事で、型を作る事になった。そこで一般的なサイズの帽子を作ろうと、僕の頭で型を取る事になった。
和紙とコンニャク糊で塗り固めていくのだが、全て頭の上で行われている為、何がどうなっているのか全く分からなかった。固まって取り外したとき、見事に型が出来上がっていたので、感心した。

【側面部】
1 約70cmに切った麦稈真田編みを横に重ねながら縫い合わせていく。
2 型の側面を覆えるようになるまで縫い合わせる。
3 出来たら、両端を縫い円筒型にする。
通常、布を縫う一般的な足踏みミシンで二重の真田編みを縫うのはなかなか大変。足踏みミシンに慣れるまで時間がかかった上、凹凸があるため真っすぐ縫えず、二本を重ねている部分からズレて穴あき状態になってしまう所も出きてしまった。
ここは慎重かつ、スピードをあげて出来るように早くミシンに慣れる必要があった。



【頭頂部】
1 1本の真田編みを丸めながら、重なり合った部分を縫う。
2 側頭部の円筒と組み合うまで縫っていく。
頭頂部は岡山県で見たものと同じ方法だけど、村の場合は頭頂部のみ。円周がまだ小さい最初の段階では丸めるのも、それを縫い込むのも難しかった。
一針一針確認しながらゆっくり縫っていった。円が徐々に大きくなるにつれて縫いやすくはなったが、やはり時間はかなりかかってしまった。


【ツバ】
1 側面部の下部を少し折り、そこに新たに真田編みを重ねて縫う。
2 好みのつばの長さまで縫う。
この部分を縫い合わせると、今まで筒のような物がやっと帽子になる。ここまで来ると足踏みミシンにも大分慣れ、そこまで時間もかからなかった。

【完成】
今回は本当に長い道のりだった。
しかし、ワラ1本から編み込んで35mにまで到達して、それをまた一針ずつ地道に縫っていき、少しずつ一歩一歩完成にこぎ着けた僕らの麦わら帽子。
多くの麦わら帽子が出回っているけれど、どれも1本の紐のような物を職人の技術があって出来たもの。今回も作ってみて初めてそのありがたみがわかり、いい勉強になった。
今回できた帽子が一番似合うのは明雄さんだけど、まだまだ暑い日が続くので僕も借りて暑さを凌いで頑張りたいと思います。



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