今から遡る事9年前。 築200年以上の日本家屋を復活させるべく、縄文時代から1万年も続いている茅葺きの屋根づくりに挑戦した。茅葺き屋根は、外の温度に左右されず、夏に涼しく冬に暖かいので、日本の気候風土に適していた。現在では、材料や人手の確保が困難で新たに作られる事がほとんどない茅葺き屋根。DASH村では、色々な方にご協力頂き、見事、完成させた。 |
2010年9月 古民家の雨漏り 茅葺き屋根に挑戦し、築200年以上の日本家屋を復活させてから、すでに9年の歳月が過ぎた。その9年という時間の経過と共に傷みも生じる。古民家の傷みは茅葺き屋根の雨漏りをきっかけに発覚した。雨漏りしていた部分は、屋根の頂部・大棟。ここが一番雨風にさらされやすいので、傷みやすく、最初に症状が現れる。 |
茅葺き屋根の点検 雨漏りの具合を屋根に上がり確認してみると、屋根の表面が腐敗し、それを肥やしに松が生え、幼虫が孵っていた。現状を確認し、話し合った結果、茅葺き屋根の補修を決行する事にした。しかし、修復といっても時間がかかるので、とりあえず秋の台風に備え、すでに雨漏りしている大棟の修復から始める事にした。 |
茅葺き職人 金沢重一さん(76) 昭和9年6月13日 御年76歳とは思えない身のこなしで、不安定な屋根の上を身軽に移動して、てきぱきと作業をこなしていた。聞いてみると15歳から茅葺き職人として働き始めたというから、職人歴は60年以上にもなる。 |
茅葺き屋根の補修工程 1.傷んだ茅や杉皮を取り除き、燻しの入った丈夫な古茅は土台にする。 2.新しい茅を切り揃える。 3.古い茅と新しい茅を交互に4層重ね合わせる。 4.茅を押しぼこで固定し、骨組みに結びつける。 5.雨除けの杉皮をのせ、竹簀(たけす)で固定。 6.茅をハサミで切り揃える。/杉葉で雨や雪を防ぐ。 |
工程@ 傷んだ部分の除去/古茅の再利用 金沢さんにご指導頂きながら、茅の補修を開始した。 腐敗した茅は取り除き、まだ芯のしっかりした茅を土台として再利用する為、引き下げる。作業に取りかかると、とたんに舞い上がる9年分の煤や埃。9年前、僕がまだ高校生だった頃、この屋根は完成した。月日は当たり前のように過ぎていたけれど、こういった何気ない事でこの屋根の時間の堆積を実感した。 |
工程B 新旧の茅を交互に4層重ね合わせる 丈夫な古茅の上に切り揃えた真新しい茅を敷き詰める。更に、その上に古茅を敷き、最後に再び新しい茅を敷く。こうする事で、茅を節約しつつも、全て葺き替えた時と同じ強度を保つ事が出来る。 |
工程C 茅の固定 敷き詰めた茅を押しぼこで固定し、玉縄で骨組みに結びつける。この時、玉縄を持った手を針のように茅の絨毯に突き刺して骨組みに通す。最後に、結んだら解けないという「とっくりしばり」で留める。最終チェックは、家の中から。茅の葺き方が甘いと再び雨漏りしかねないので、入念にチェックした。 |
茅補修(棟部分)完了 雨漏りした大棟部分の補修が完了した。葺き直した屋根は色つやが全く違い、本当に見事だった。慣れない部分は多かったけれど、日本の古来から伝わる茅葺きを教えて頂き、実際に作業できた経験は本当に貴重なものになった。 しかし、これで終わりではなく、直すべき箇所はまだまだある。補修した部分の高さに合わせる為に、他の部分を15cm厚で今後、葺いていく予定。 |