パスタとは
パスタとはスパゲティーやマカロニなどの総称であり、分類的にはロングパスタ、ショートパスタ、そしてその他(ラザニアなど)の3種に分けられる。本場イタリアでパスタという言葉は、練りもの全般の事を指し、食べ物のパスタだけでなく歯磨き粉なども意味する。
1967年にパスタの食味・食感の品質レベルを維持するためパスタ法律が施行され、乾燥パスタはデュラム小麦を粉にしたデュラムセモリナ粉と水で作る事が義務づけられた。生パスタの場合はデュラムセモリナ粉を使わない場合も多い。
パスタ自体の発祥は明らかになっていないが、乾燥パスタの起源は、アラブの商人が砂漠を移動する際に食用として小麦粉を携帯していたのが始まりという説がある。小麦粉が腐り易いことに悩んだ商人たちは、あらかじめ水で練ってから乾燥させる方法を考案した。
日本でのパスタの歴史は幕末、横浜の外人居留地からと言われ、明治5年(1872)に発刊された「西洋料理指南」には、「竹筒のようなうどん」と、マカロニが紹介されている。




デュラム小麦とは
他の小麦と異なり、粗挽きで硬質な小麦。良質なたんぱく質(グルテン)を多く含み、弾力性に富んでいるため、ゆでてもコシが強く形が崩れにくいという特長がある。
デュラム小麦は高温で乾燥した気候に適しているため、日本の土壌や気候などに適さず栽培する事が出来ない。DASH村では新しい小麦の品種、南部小麦で手作りパスタを目指した。



南部小麦とは
南部小麦は準強力粉に分類される。パンやうどん、南部煎餅など幅広く使用されている。小麦本来の香りが強く、強力粉に近い性質を持つ。

2009年11月 種まき
動き始めたのは一年前。僕がまだ村人になる前からだった。温暖で乾燥した地域で作られるデュラム小麦は、これから厳しい冬を迎えるDASH村では育てられない。そこで、明雄さんが持って来てくれた新しい小麦の品種、南部小麦を植える事になった。

2010年2月 雪解け
雪が降る日が多かったこの冬。小麦の若葉たちは厚く積もった雪の下逞しく、青さを失っていなかった。雪が解けるのを待っていたかのように急成長を遂げた。



2010年7月 南部小麦収穫
青々と生長した小麦が出穂後、徐々に黄金色に変化し始めた。
一面黄金色に変化した小麦たちは、実の成りも量も良好でどれもしっかりと詰まっていた。早速、収穫に取りかかり、はせ掛けに干し、しばらく乾燥させた。




にたきこま(調理用トマト) ナス科ナス属
一般的に、生食用のトマトは水分が多く、加熱すると色が悪くなり、型くずれして焦げ付き易いので調理には向いていない。そこで、加熱調理用のクッキングトマトとして開発され生まれたのが、にたきこま。生食用のトマトより酸味は強いが、同等の糖度があるため味のバランスがいい。実は堅く水分が少ないので加熱しても煮崩れしにくい上、風味がしっかり残るのでトマトソースなどに向いている。体の酸化を防ぐ抗酸化物質「リコピン」が生食用のおよそ2〜3倍、グルタミン酸などの旨み成分がおよそ3倍含まれていると言われる。

2010年7月
今年の夏、毎年作っている生食用トマト、桃太郎と共にハウス栽培をしていた調理用トマト・にたきこま。桃太郎と比べると細長い。
まだまだ青いが、赤く変化したらこのトマトを使って、パスタ用のトマトソースをつくる。パスタが大好きな僕は、赤くなる前からワクワクしてしまっていた。

2010年8月 にたきこま収穫
にたきこまは生食用とは色も違い、まさに真っ赤。見るからに美味しそうなので穫れたてをかぶりついたら、実は硬く水分も少ないのでどこか物足りなかった。けれど、細かく刻み火にかけた途端、一気にトマトの香りが辺りに広がった。その香りを嗅いで真っ先にトマトソースのパスタが頭に浮かび、行った事もないのにイタリアにいるような気分に浸ってしまった。さらに、そのトマトソースにバジルを加えたら、今度は味を想像してしまい、生唾を飲み込んでしまった。






2010年12月 生地づくり
はせ掛けで乾燥させた小麦を脱穀し、水車小屋で精麦したものを石臼で粉にする。さらに、それをふるいにかけたらキメの細かい小麦粉が出来た。
その小麦粉で今回作るパスタはショートパスタ。日本で言うマカロニもこのショートパスタに含まれるのだが、調理方法によって形が様々に変化するので、その種類は数えきれないほどある。さらに、長瀬さんの案でカボチャとホウレン草をペースト状にして生地に混ぜ込み、カラフルなパスタを作る事に。
カボチャとホウレン草のペーストをそれぞれ小麦粉に混ぜて、捏ねていく。ポイントは、水の量。なるべく水を少なめに、固く捏ねる事によって、コシの強いパスタの生地に近づける。水を加え、よく捏ねることでコシの元であるグルテンが形成される。表面のひび割れが目立たないほど滑らかになったら生地の完成。これをサラシで包んで囲炉裏の近くで30分間寝かせる事でグルテンの伸縮性が増し、様々な形に加工し易くなる。乾燥させるため生地は出来る限り薄く伸ばす。その目安、1mm。この作業は力仕事で意外に大変だった。



ショートパスタづくり
今回作るショートパスタは代表的な3種類。

マッケローニ

まずは日本で言うマカロニ、本場イタリアではマッケローニと呼ばれる。
作り方は簡単で、小さな四角形を切り取り、菜箸で巻いていくだけ。これで完成。

ガルガネッリ
次に、ほうれん草の生地を使ってガルガネッリをつくる。このガルガネッリは、表面に凹凸があるのが特徴で、よくソースと絡み付くのでにたきこまのトマトソースをこのパスタに使用する事にした。緑と赤でクリスマスカラーになるのでぴったりだった。本場では、この凹凸を専用の道具で巻き付けるのだが、今回は簀巻きで代用する事にした。
ファルファッレ
最後は、ファルファッレ。日本語で蝶という意味のこのパスタは、四角い生地の中心部を折りたたむので、まさに蝶の形になる。この折った部分にソースが入り込み、より味が染み込む。超巨大ファルファッレから小さいファルファッレと色々な形のものが出来あがった。
手作りショートパスタをザルに並べてみると、市販とは違って大きさも形もバラバラで少し不格好なものも多いけれど、眺めているとまさに、手作りの醍醐味な気がして嬉しくなった。これを再び囲炉裏の側に置いて乾燥させる。


クリスマスツリーづくり
まずクリスマスツリーは、コウゾで骨組みをつくり、それにアケビや藤の蔓を巻き付けて土台をつくる。そして、この土台を彩る飾り付けは、城島さんの40歳のお祝いに作ったセーターの唇ワッペンづくりでも利用したニ―ドルフェルト。フェルト針で一針一針刺しながら羊毛を絡ませ形を形成していく。出来上がったのはサンタクロースに雪だるま。これらがクリスマスツリーを彩り、さらにモミの葉を差し込み、白い羊毛を飾り付け、村風のクリスマスツリーが完成した。


パスタ料理づくり
カチカチに乾燥しきった手作りショートパスタを村でクリスマスを祝う為に調理する。
まずは乾燥パスタを茹でる。茹でる時に水量の1%の塩分を加える。そして、理想はやっぱりアルデンテ。歯応えを残すことでパスタがおいしくなるのだが、微妙なタイミングで一気に茹で上がっていってしまうので、この加減が難しい。しかも、マッケローニとガルガネッリを一緒に茹でてしまった為、薄いマッケローニの方が先に茹で上がってしまい、マッケローニだけ取り出すことになった。
茹で上がったパスタをトマトソースに和え、シチューやサラダに調理、村の食卓に洋風の料理が並び、蜜蝋のロウソクを灯し、クリスマスをささやかながら祝い、気持ちがすごく温かくなった。







【ガルガネッリのトマトソース和え】
1. タマネギをみじん切りに、ニンニクを薄切りに、シイタケを千切りにする。
2. 鍋に油をしき、ニンニクを炒める。
3. 野菜を加え、火が通るまで炒める。
4. トマトソースを加え、一煮立ちするまで炒める。
5. 茹でたガルガネッリを入れ、ソースを絡める。
6. 皿に盛り、パセリをかけて完成。


【ファルファッレの豆乳シチュー】
1. キャベツをざく切りに、タマネギを千切りに、ニンジンとジャガイモを1cmの角切りに、ニンニクを薄切りにする。
2. 鍋に油をしき、香りが出るまでニンニクを炒める。
3. 野菜を加え、軽く火が通るまで炒める。
4. 水を加え煮込む。
5. 豆乳を入れ、一煮立ちさせ、塩で味を整える。
6. 茹でたファルファッレを入れ、更に一煮立ちさせる。
7. お椀に盛り、パセリをかけて完成。



トップへ戻る