■ 鞍馬寺(くらまでら)5月17日放送

鞍馬山は1年を通じて雲が沸き、雨が降り煙る深山幽谷ゆえに古くから霊山とされてきました。この地に初めて庵が結ばれ、毘沙門天が祀られたのが平安遷都以前の1200年も前のことと言われています。以来、この地は王城鎮護の道場とされ、修験の地でもありました。今なお鬱蒼と杉の巨木が生い茂る寺域は、往時を偲ばせます。
その信仰の中心にあるのは平安時代に造立された毘沙門天像。右手に錫丈を持ち、遠く京を睨むかのような表情は北方の守護尊にふさわしい姿です。また、両脇に並ぶのは毘沙門天の妻という吉祥天と、その子供という善膩師童子(ぜんにしどうじ)。いずれも国宝に指定されています。また、この地は牛若丸伝説の地。牛若丸がのどを潤したという「息継ぎの水」や背丈を測った「背比べ石」など、その遺跡が残されています。




都の北にまします鞍馬の山々は芽吹く新緑にも、霊気が宿るよう。



その山懐に抱かれた鞍馬寺は1200年も前に創建されました。



太古から崇められてきたこの山は鬱蒼とした修験の地。
その奥深いところには神が降り立った姿という巨木が祀られています



都の守りとして睨みを利かせてきた国宝の毘沙門天は、鞍馬の信仰の象徴。




脇に居並ぶのは、その妻という吉祥天。
さらに、二人の息子という善膩師童子(ぜんにしどうじ)です。



そして、この山の霊気が滲みだしたかのような清らかな水。



鞍馬寺ゆかりの雍州路(ようしゅうじ)は、その水が育んだ山の幸が名物です。


コゴミ、タラの芽、ユキノシタなど、鮮烈な山の香りに清められるような精進料理。
その一皿ごとに鞍馬に立ち上る息吹を感じます。



いまどき鞍馬と聞いて鞍馬天狗を思い浮かべる人はどのくらいいるでしょうか?
鞍馬天狗と言えば嵐勘寿郎・主演の無声映画が知られていますが、もとは「能」のひとつ。鞍馬山で修行していた牛若丸に大天狗が兵法を授けるというストーリーです。
この話の元になったのが、牛若丸こと源義経の伝承。保元の乱で源氏方は平氏に敗れたのですが、義経は乳児だったため一命を救われ、鞍馬寺にその身を預けられたと言います。
その伝を裏付けるように奥の院への道すがらには「息継ぎの水」や「背比べ石」などの遺跡があり、寺には義経所用と伝わる刀剣や武具が残されています。
仁王門のすぐ脇にある雍州路(ようしゅうじ)で頂く山菜の精進料理は牛若丸も食べていたかと想像が膨らみます。


「 Autumn.Interlude 」
作曲者:aphelion
演奏者:aphelion