■ 織寶苑庭園 (しょくほうえんていえん)
   10月18日放送


京都の東山山麓、南禅寺界隈の別邸庭園のひとつです。近代日本庭園の先駆者で、京都の造園界に一時代を画した「植治(ウエジ)」の屋号で知られる小川治兵衛とその長男「白楊(ハクヨウ)」こと保太郎によって、明治42年(1909)頃から大正2年(1913)頃にかけて作庭されました。
当初、滋賀県出身の塚本与三次が所有し「福地庵」と称していましたが、大正時代に岩崎小弥太の所有となり「巨陶庵」と呼ばれていました。
その後、昭和23年に龍村美術織物が購入、現在の「織寶苑」となりました。その間、幾度かの改修がなされ今日に至っています。
庭園は、京都の東山連峰を借景として取り入れた池泉回遊式庭園で、見事な数奇屋建築や露地も風情を添えます。明治・大正時代の京都を代表する庭園のひとつです。




10月19日から特別公開される織寶苑庭園。
東山連峰の雄大な景観を借景とした池泉回遊式(ちせんかいゆうしき)の庭園で、明治から大正初めにかけて作られたものです。


木々の枝をやさしく揺らしながら吹き抜ける風。
色づき始めた楓に、深まる秋を感じます。



木立の中、風情ある佇まいを見せるのは、数奇屋建築の茶室「涼流亭(りょうりゅうてい)」です。
巧みに構成された蹲(つくばい)や露地に、心が落ち着きます。



茶室前には、日本庭園にはめずらしい中国原産の広葉杉(こうようざん)。
異国情緒にあふれています。


琵琶湖疎水を取り入れた、変化に富んだ水の流れ。
その先には、のびやかに鯉が泳ぐ広い池が広がります。



池を臨むように建つ客間の深い庇(ひさし)に、秋の陽射しを受けた水面の輝きが映るさまは 見事です。




織寶苑はまもなく紅葉に染まります。



これまで一般的にはほとんど公開されてこなかった織寶苑庭園ですが、今年春に初めて京都市文化観光資源保護財団の主催で特別公開されました。今回春に引き続き、秋も特別公開されることになったものです。
撮影前の下見のときも、撮影当日もお天気は快晴!
客間建物の深い庇や松の樹に映る池の水面の輝きがホントにきれいでした。頬をなでる風もここちよく、楽しく撮影できたのを覚えています。
庭だけで1500坪もあるという広大な敷地に、松150本の他、およそ70種類千余本の樹木があるそうです。
順路に沿って進むと、茶室の手前に「もみじのトンネル」と呼ばれるところがあります。
11月になれば、きっと紅葉でもっと美しくなるのだろうと思いながら歩いてきました。秋は楓だけでなく、どうだんつつじの紅葉も美しいそうです。
京都には、まだまだ知られていないこういう庭園がたくさんあるそうです。京都の奥深さを改めて知らされました。


「 自然の中で 」
作曲者:加川よしくに
演奏者:あんべ光俊