派遣社員の愛子(香里奈)はある日、老人ホームに入居している老女・瑞枝(市原悦子)から、自分の若い頃の話を文章にまとめて欲しいという依頼を受ける。
瑞枝は愛子の亡くなった父・陽一と古い知り合いらしい。戦前、樺太(現サハリン)に移り住んだ事から彼女は語り始めた―――
昭和16年、樺太の都市として栄えていた真岡(現ホルムスク)に当時15才の瑞枝(福田麻由子)は母のカネ(名取裕子)に連れられてたどり着いた。
一家は貿易商の山田(遠藤憲一)という男の家に住む事になる。
瑞枝は粗暴な山田を嫌悪しつつも、隣に住む中島家の娘・桜(市川由衣)とも仲良くなり、山田の部下・野田(向井理)に淡い恋心を抱くなど、青春期の希望に満ちた日々を樺太で過すようになる。
とある日、桜と入った真岡郵便局で颯爽と働くミサ(白石美帆)ら電話交換手たちの姿を見て憧れるようになり、桜と共に交換手に採用されるまでになる。
時あたかも太平洋戦争下、樺太は比較的穏やかながらも日本は暗い時代を迎えつつあった。そんな中でも瑞枝は交換手仲間のヨシ(佐藤仁美)、キミ(渋谷飛鳥)らと共に日々、通信を確保し市民生活に寄与する職務に邁進していた。
一方、カネは山田の子を身ごもっていた。母のつらさも理解し、女としても職業人としても日一日と大人への階段をのぼっていく瑞枝。
―――現代。父の陽一は瑞枝とどんな関係だったのかと疑問を持った愛子は北海道・稚内に住む瑞枝と同年代の一人の老女・栄子(草笛光子)にたどり着く。栄子の語った言葉は愛子を絶句させた。そして再び瑞枝は語り始める。
昭和20年8月8日、ソ連が日本に宣戦を布告。真岡郵便局ではソ連軍の南下に備え「逓信女子特攻隊」が組織され、最後まで交換台を守り抜く事を誓い、もしもの際は、と交換手たちには青酸カリの包みが配られた。
8月15日――終戦。戦争は終った筈だった。しかしソ連軍は南下を続け真岡に迫っていた。しかし交換手たちは交換台から離れようとはしなかった。
そして8月20日、真岡の朝は深い霧に包まれていた。
その霧の中に瑞枝ら交換手たちが見たものは―――