第9章 王妃の私的な離宮:トリアノン

 

クロード・ルイ・シャトレ
《ライトアップされたトリアノンの岩場とベルヴェデーレ亭》

風景画家クロード・ルイ・シャトレは1776年スイスに滞在し、その翌年ヴィヴァン・ドゥノンとともにイタリアを旅行した。帰国後、イル・ド・フランスの城や庭園を描いた情景で一躍有名になった。マリー・アントワネットが画家に水彩画集『プチ・トリアノンの風景と平面図』を注文したのもこの頃である。
王妃のお気に入りの隠れ家を主題に、画家は数点の油彩画も制作した。それらのうちの1点に、1781年8月3日王妃の兄、ヨーゼフ2世に敬意を表して催された祝宴の際、庭園がライトアップされた記憶が留められている。ヨーゼフ2世はファルケンシュタイン伯爵の偽名を用いてフランス国内を旅していた。深い青の闇の中、建築家ミクによって1777年に造られた庭園の中央で、ベルヴェデーレ亭と岩場が光の輝きに包まれて姿を現している。照り返しを受けた湖の水面が夢幻的な魅力をもたらしている。

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