老化を防ぐ
太極拳
の謎
#556 2000/11/12
21世紀を迎える日本の最大の問題、高齢化。しかしその高齢化に思わぬ福音が有るといいます。それが
太極拳
。なんと中国では政府が国民的体操に認定しているほどの太極拳、しかし
あんなスローな動きで果たして運動としての効果が本当に有るのでしょうか?
今回はそんな太極拳を科学的に解き明かします。
矢野明仁リポーターは、東京上野公園で毎朝太極拳を行っているグループを訪ねました。そのリーダーは山本佳さん、71歳。そこで早速山本さんの体力を測定してみました。するといずれも
30代〜40代の体力
。矢野さんも、目をつぶってのバランス競争に挑戦しましたが、矢野さんが19秒でリタイヤしたのに対し、山本さんはピクリとも動きません。確かに体力は高いレベルのようです。
そこで、山本さんの筋肉の断面図を、MRIという機械で見てみました。普通のお年寄りは、だんだん筋肉を使わなくなり、筋肉が細くなっています。しかし山本さんは、ほとんど脂肪がなく、
太い筋肉が骨を覆っています
。何と山本さんの筋肉は、40歳並みのものだったのです。
いったいなぜ、あんなスローな動きで体力が向上するのでしょう?そこで、ラジオ体操と、筋肉の動き及び活動量を比較してみました。すると、
太極拳の筋肉活動量は、ラジオ体操を上回るものだった
のです。ラジオ体操は、大きな力を瞬間的に出して、その瞬間以外の時、筋肉はゆるんでいます。しかし太極拳は、
非常にゆっくりと動くために、筋肉の緊張が長時間持続している
ので、足し算をすると太極拳の方がずっと筋肉の活動量は多いのです。ラジオ体操のように筋肉を早く動かす運動を、
アイソトニックトレーニング
といいます。その一方で、負荷は軽くても、ゆっくり動かして筋肉を鍛える方法を
アイソメトリックトレーニング
といいます。太極拳のゆっくりした動きは、アイソメトリックの動きだったのです。
では
なぜこれほどまで高い筋肉活動量を生み出したのでしょう?
矢野さんはお年寄りの気持ちを理解するため、老人体験ギプスを体に付けてみました。関節を曲がりにくくし、また手足の重さを増やすのがこのギプスの主な役割。すると、普段何気なく行っていた、お茶碗やお箸を持つことなど日常生活の中の意外な所で不自由が出てきたのです。実はこれもすべてアイソメトリックな動きでのこと。筋肉を伸ばしたり縮めたりして行いのが、アイソトニックトレーニングで、反対に筋肉を収縮させずに重さを支えている時にプルプルと筋肉が辛くなるのが、アイソメトリックトレーニング。例えばお茶碗を持ち上げるのがアイソトニックで、ゆっくりと置くのがアイソメトリックなんです。日常生活でも、お茶碗を持つというようなことで
意識せずに筋肉を使っている
ことが多いのですが、歳を取ると、この筋肉が衰えて日常生活に支障をきたすようになります。かといって、あまり激しいスポーツでは関節が曲がらなくなったり、筋肉が衰えているお年寄りには、なかなか難しいものです。しかし、太極拳のようにゆっくりとした動きならば、怪我をすることなく筋肉を鍛えることが出来ます。
また、適度な運動によって骨に荷重がかかると、その荷重が骨を作る骨芽細胞を刺激して働きを活発化させます。そのため、
骨の形成が促され、骨粗鬆症にもなりにくい強い骨が作られます
。 このように太極拳は、お年寄りに最適なスポーツだったのです。
太極拳は、無理なく筋肉と骨を鍛える、お年寄りに最適なスポーツである!
太極拳といえばもう一つ不可欠なのが
深呼吸
。肺活量は、通常歳を取るにしたがって肺活量は減っていきます。呼吸は、肺の下にある
横隔膜
と、ろっ骨の間の
ろっ間筋
の2つの筋肉が伸び縮みすることによって肺を膨らませたり縮ませたりして呼吸しています。歳を取ると、これらの筋肉が衰え、肺の動きが少なくなって肺活量が減ってしまうのです。しかし先程の山本さんの肺活量を測ってみるとやはり
40代の肺活量が!
太極拳をやっている間、山本さんは深く、ゆっくりと深呼吸をしていました。通常の呼吸と比べると、
深呼吸の方が、横隔膜がゆっくり大きく上下しています
。つまり深呼吸は、呼吸のための筋肉を、時間をかけてゆっくり使うことによって筋肉を鍛える、アイソメトリックトレーニングだったのです。
深呼吸は、呼吸のための筋肉を鍛えるアイソメトリックトレーニングだった!
所さんも福岡の公開録画で是非マスターしたいといっていた太極拳。しかしその全てをマスターしようとすると、何と24か48の動きをマスターしなくてはならないとのこと。
そこで「目がテン!」では太極拳の先生に頼み、そのうちから厳選した8つの動きを取り入れた
「目がテン!」太極拳を開発!
その音楽には10月29日より「目がテン!」の新テーマ曲になった
所さんの新曲「明日にします」
を使用しました。
太極拳のポイントは、
(1)
背筋はまっすぐ、背骨が曲がらないように。操り人形のように天井から釣り下げられているような気持ちで。
(2)
中腰姿勢を崩さない。馬にまたがっているか、股に大きなボールを挟んでいるような気持ちで、足を丸く開く。
(3)
目線は遠くに、まっすぐ保つ。上下に目線を動かさない。基本的に、顔の向きは手の先を見るように。
(4)
腕は伸ばしきらず、曲げきらず。常に円を意識して。 以上のことを意識して、目がテン式太極拳体操を行ってみて下さい。
「目がテン!式太極拳」
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