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科学の力で初ヒット!
#575 (2001/04/01)
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いよいよプロ野球が開幕、本格的な野球シーズンが到来しました。そこで今回「目がテン!」も野球の科学に挑戦。なんと科学の力でバッティングを上達させようというんです。
科学の力を借りるのは、東京は台東区の少年野球チーム、サンジュニア。6年生が1人もいず、万年Bクラスに苦しむこのチームには、紅一点、小学3年生、小林あゆなちゃんがいます。しかしあゆなちゃんも未だ試合でバットに当たった試しが有りません。はたしてこのチーム、科学の力で生まれ変わるのでしょうか?
コーチ役を買って出たのは矢野リポーター。しかし矢野さんの野球歴は、中学校時代にたった1年と、何とも頼りないもの。早速バッティング練習が始まりますが、これがまた全然タイミングが合いません。
困った矢野さんが助けを求めたのが、元ダイエーコーチの手塚さん。その手塚さんが言うには“ジャンケンにヒントが有る”。皆さんがじゃんけんをする時、ジャンケンの「ジャン」で相手と一緒に手を振り下ろしますよね。これによって相手とのタイミングが合い、「ポン」のところで手が一緒に出せるのです。この行為は、“タイミング同調化行為”といい、他にも縄跳びの時に縄にあわせて首を上下に動かして入るタイミングをとったり、オーケストラの指揮者が一度指揮棒を振り上げることがこの動作です。
では、野球の場合はどうやってタイミングをあわせるのでしょうか?構えた時の前足のかかとを浮かせておき、ジャンケンポンの「ジャン」のタイミングで踏み込んでスイングします。このひと踏みで球とタイミングが合うようになります。そしてピッチャーが足を上げ、重心を沈み込ませる瞬間を「ジャン」のタイミングにあわせます。ピッチャーのモーションは、ここから先は、どんな球を投げてもほとんど変化しないのです。このジャンケン打法、昨年のプロ野球打撃ベストテンのうち、7割の選手が同様の動作をしてタイミングをとっているのです!
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ジャン・ケン・ポンでバットを振れば、どんな球にもタイミングが合うぞ!
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ようやくタイミングが合ってきたサンジュニアのみんな。しかし球のコースを見極めるのはなかなか難しく、やっぱり空振りしてしまいます。いったいどうしたらいいのでしょうか?
一般的にピッチャーとキャッチャーの中間点で球筋を見極め、バットを出さないとボールは打てないといいます。ではこの時点でボールを見るにはどうしたらいいのでしょうか?
ヒントはジャイアンツ・松井選手に有りました。テレビ中継で松井選手がバッターボックスに立つ時、カメラに真正面に向いているのに気がつきませんか?実はこれこそが、球筋を見極める方法だったのです。ヒトは左右の目の視野の違いによって距離感をつかんでいます。その時、目標物と左右の目との角度が大きいほど、距離感はつかみやすくなるのです。斜めに構えてしまうと、その角度は小さくなり、距離感は悪くなります。従って、なるべく正対した方が距離感は良くなり、得なのです。サンジュニアの選手たちも、この正対打法を試すと、今まで1m以上あった距離感の誤差が、わずか15cmに減っていました!
バッティングにもう一つ大切なこと、それはバットのスイングスピードを上げる事なのです。まずみんなのスイングスピードを計測すると、4番の中野君は51km。あゆなちゃんも同じく51kmでした。いったいどうすればスイングスピードは上がるのでしょう?そこでシドニーオリンピックの日本代表、飯塚選手に教えを請いました。飯塚選手のスイングスピードは、なんと113km!まずはあやなちゃんと、飯塚選手でバットの握りの強さを比較してみました。すると驚くことに、飯塚選手よりもあゆなちゃんの方がバットを強く握っていたのです。飯塚選手は軽く握り、インパクトの瞬間だけ強く握っています。バットを軽く握っていると、余分な力が働かないので、バットを振るのに使う、上腕二等筋がスムーズに動きます。逆に手をギュッと強く握っていると、強く握るための筋肉が余計に働き、本来使いたい筋肉の動きを邪魔してしまうのです。さっそくみんなでバットを軽く握って振る練習をしました。すると驚くべき結果が・・・練習前に比べて、4番中野君は35kmアップの86km、あゆなちゃんも12kmアップの63kmとなりました!効果は絶大!
いよいよ試合です。相手は同じ地区の強豪、ロジャース。これまでサンジュニアが、てんで歯が立たない相手でした。果たして科学的な練習の成果が出るのでしょうか?先攻はサンジュニア。1番バッターはあゆなちゃんです。けれど、緊張のせいか、これまで学んだことをすっかり忘れてしまい、あえなく三振。続くバッターも皆ボロボロです。そしてロジャースの攻撃になると打つわ打つわの猛攻撃。噂にたがわず強いチームです。ここで矢野コーチは、みんなの落ち着きを取り戻すために、相手ピッチャーのフォームをチェックして、みんなとジャンケン打法の確認をしました。すると効果は現れはじめ、サンジュニアの打線がつながりはじめました。あれほどバットにボールが当たらなかったチームに、奇跡が起きました!あゆなちゃんもしっかりボールを見てフォアボールを選びます。なんとこの回サンジュニアは3点を奪いました。しかし相手は強豪ロジャース、そうそう甘くはありません。再び猛打が爆発してまたもや点差は開いてしまいました。そしてついに迎えた最終回。2アウトランナーなしの場面でバッターはあゆなちゃんです。1球目はストライク。その後2球ボールが続いて4球目、振り抜いたバットに見事ボールが当たりました!あゆなちゃん、試合で初めて打ちました!記録は残念ながらセカンドゴロでしたが、あゆなちゃんにとってはホームランにも匹敵する、記念すべきセカンドゴロでした。
試合は12対5で負けてしまいましたが、次があるさ、頑張れ!サンジュニア!!
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