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虫取り名人カメレオン
#579 (2001/04/29)
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科学の素浪人、矢野左衛門(矢野明仁)のところに、また不思議な生物が届きました。その名はカメレオン。様々に色を変え、また舌を伸ばしてエサを捕らえるという、何とも不思議な生き物です。いったいカメレオンは何物?どうしてこんな姿になったのでしょうか?矢野左衛門がその謎に迫ります!
カメレオンは、は虫類トカゲ亜目、しっかりトカゲの仲間です。しかしその体は、トカゲが、平べったいのに対して、たて長の体になっています。さらには指も、トカゲが5本なのに対して、カメレオンは2本しかありません。
そんなカメレオンと、トカゲとカメで、かけっこをしてみました。スタート直後からニホントカゲが飛び出し、そのままぶっちぎりでゴール。残る2選手は接戦でしたが、段々カメレオンを引き離し、結果は大差でカメレオンの負け。ノロマの代表と言われるカメよりも歩みの遅いカメレオンは、もともと木の上で生活しているため、陸上を進むのはとても苦手なのです。その代わり木登りは得意中の得意で、太さわずか3mmの棒も、鍋つかみのような手足でガッチリとつかみ、するすると登っていきます。さらに枝と枝の間も、あのクルクルと巻いたしっぽを巧みに使い、難なく渡っていきます。その木につかまる力の強さは、街路樹が根こそぎ倒れる風速30mの強風でも、びくともしないほどなのです。
カメレオンが棲んでいるのは、マダガスカル島を中心としたアフリカなどの森の中ですが、ここにはハリネズミやネコ科の動物、フクロウなどの猛禽類といった天敵がたくさんいます。そのため地上にいると狙われやすいため、比較的安全な木の上で身を隠す必要があるのです。その上、カメレオンの棲む地域は、12月から3月にかけてサイクロンという熱帯低気圧が猛威を振るいます。過去には風速67mも記録したこともあるような暴風雨の中では、木につかまる力も強くないといけないんです。
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カメレオンの「鍋つかみ」の手は、「枝つかみ」の手だった!
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カメレオンといえば、やはりあの舌。生きたエサしか食べないカメレオンは、舌を伸ばして鮮やかに虫を捕ります。その舌の長さは、頭の先からしっぽの付け根までの長さが14cmのカメレオンで約30cmと、体長の1.5倍もあるのです。さらに舌の引っ張る力は体重27gとほぼ同じ24gを記録しました。これは体重90kgの矢野さんが、自分の舌の力だけで77kgの重さを引っ張っていることになるのです。それではいったいどうやって舌を伸ばしているのでしょうか?その仕組みは弓と矢の関係によく似ています。口の中に舌骨という骨があり、その周りにアコーディオンのように縮められたゴムのような舌が巻きつき、筋肉でノドの奥に引っ張っています。獲物を見つけると舌の筋肉を働かせて矢にあたる舌骨を、弓を射るように放つのです。
カメレオンが暮らしているのは木の枝の先。ここはエサとなるチョウなどの昆虫が集まってくる場所でもあります。しかし昆虫は動きが素早く、カメレオンが枝先を走って追いつくのは不可能です。そこで離れた場所から捕食できるように、長く伸びる舌を持つようになったのです。
カメレオンの目は、左右違う方向を向いてしまうのでも有名です。丸く突き出した目をキョロキョロさせて、獲物がどこに隠れていようとも、目ざとく見つけ出すのです。そして獲物に気付いた瞬間、左右バラバラの動きをしていた目が、両方でしっかり捉え、距離感をつかむのです。その視力はというと、7m先のエサの昆虫を見つけることができるほどのものです。一説には30m先まで見通せるとも言われているカメレオン。その目の威力は驚きです。
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カメレオンの目は、左右別々に動く全方位型レーダーだ!
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でもなんと言ってもカメレオンの最大の特徴は、身体の色を変えることでしょう。木につかまっているカメレオンの身体は、葉の色や形と同じ保護色となります。けれど不思議なことに、あまり光が当たらない脇の下などは色が薄くなっています。つまりカメレオンの色の変化は、光の強さによって起こるのです。そこでカメレオンの身体に「目がテン!」文字をかたどった紙をのせます。すると1時間後、カメレオンの身体には、見事に「目がテン!」のロゴが浮かびあがりました。カメレオンの皮フは3層構造になっていて、まず黄色の層、続いて光を反射するグアニン層、その下に白い層があります。そして3つの層を横断するように黒いメラニン色素を持った細胞の袋があります。ポイントは反射体となるグアニン層です。この層を通すと、メラニン細胞が集まった黒い部分は青く見え、白い層の部分は赤く見えます。しかしこの上を黄色い層がおおうことで、皮膚の色は緑色とオレンジ色に見えるのです。森の緑と砂漠の赤土の色に合わせたこの2つの色の組み合わせにより、カメレオンは身体の色を変化させるというわけです。つまり、光が強いとメラニン細胞がグアニン層の下に集まって緑色になり、影の部分はメラニンが白い層の下まで移動するので、オレンジ色になるというわけです。
更にカメレオンは、感情の変化によっても身体の色を変化させます。敵と遭ったときに威嚇したり、メスに対して求愛するときなどにも皮フのメラニンを動かすことができるのです。感情によって身体の色を変えるカメレオンは、皮フでしゃべる動物なのです。
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