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 骨が無い!? 海の王サメ  #580 (2001/05/06) 

 今、最も注目されているスポットと言えば、オープンしてまだ間もない大阪のユニバーサルスタジオ・ジャパンではないでしょうか?そのUSJの名物の一つがジョーズ。映画でもすっかりおなじみになりましたが、しかしサメという魚には、実に不思議な生態が有るのです。今回はまだまだ知られていないサメの真の姿に迫ります。

 矢野明仁リポーターは沖縄に飛びました。ここにはサメの研究で日本一の水族館、国営沖縄記念公園水族館が有るのです。その沖合いでは、なんとサメ界最大にして魚類最大のジンベイザメが飼われていました。矢野さんは早速、友達になっちゃおうと一緒に泳いじゃいました。巨大なジンベイザメ君とふれあう矢野さんはあることに気付きました。なんとサメはやっぱりサメ肌だったのです。手で触れるとザラザラしています。このサメの皮は、お寿司屋さんでワサビをすりおろすのにも使われているくらいなのです。そこでサメの肌を顕微鏡で拡大して見てみると、楯鱗(じゅんりん)と呼ばれる歯みたいなウロコが、細かくびっしりと覆っていました。それもそのはず、この楯鱗は歯と同じ成分で出来ていました。サメは4億年も前から地球に棲んでいますが、実はサメのウロコが進化して歯になったと言われているのです。サメの肌はサメの歯だったのです。

楯鱗  さらに矢野リポーターが驚いた事が有りました。水族館で見た海のギャング、オオメジロザメのエサは、極上のマグロ2kg。パクッと一口で食べて、なんとこれで一日のお食事終了です。それよりも身体の小さいイルカ君は1日10kgと、オオメジロザメのざっと5倍は軽く平らげてしまいというのに、サメは驚くほど小食です。そこでサメとイルカの体温を較べてみると、イルカの36.7度に対し、サメは14.6度と大きな開きがあります。さらにサメをさっきより低い水温の水槽に入れると、体温も下がってしまいます。イルカは哺乳類なので恒温動物です。常に身体が俊敏に動くためには高い体温を保つ必要があるのです。そのためにはエネルギー補給をたっぷりしなければならないのです。一方サメは魚類で変温動物です。体温を水温にあわせるだけなので、エサをたくさん食べる必要はないのです。

サメのおちんちん  でも、サメは本当に魚なのでしょうか?そんな当たり前の事を疑わなくてはならないような不思議な生態がサメにはたくさん有ります。なんとサメにはおちんちん(交接器)があったのです。普通、魚類は交尾をしません。メスが産んだ卵にオスが精子を振りかけて受精させる行動は、良く知られています。ところが魚は魚でも、サメは交尾をするのです。哺乳類と一緒で、オスが交接器をメスの体内に入れることで、確実に受精させることができるのです。こうして産み落とされた受精卵ですが、海藻に巻きつくためのツルがついたきんちゃく状の卵や、岩と岩のすき間に入り込むためにドリルのような形をしたものなど、なんとも不思議な形をした卵がたくさんあります。さらにおかしなことにサメの赤ちゃんは、この卵の中でおよそ一年間育ってから生まれてくるんです。とても魚とは思えません。でも、まだ驚くのは早いのです!オオジロザメの赤ちゃんは、なんとお母さんお腹の中で育ってから出産されます。さらに!!ヤジブカというサメに至っては、出産するばかりではなく哺乳類の象徴であるへその緒までついているんです。サメって一体何者なの!?

 映画ジョーズの名前の由来、知ってますか?ジョーズのジョーは、英語で「アゴ」の意味だったんです。サメの特徴といえばよく見るサメのアゴの骨。しかし皆さん、サメの全身の骨格模型を見た事が有りますか?無いですよね?なんで他の魚は全身の骨格模型があるのに、サメには無いのでしょう?

 そこで矢野リポーターは動物のはく製作りの店を訪れ、サメの解体に立ち会う事にしました。すると、ろっ骨は無いものの、ちゃんと背骨も有るではないですか。しかし、その背骨に包丁を当ててみると…なんといとも簡単にザックザクと切れてしまったんです。これには矢野さんも絶句です。実はサメは全身軟骨の、軟骨魚類だったのです。通常、魚は硬い骨を持っていて硬骨魚類と呼ばれます。硬骨魚類の硬い骨は腐らないので、骨格標本を作ることができるのですが、軟骨は腐ってしまうので、標本として残っているのは石灰化したアゴと歯だけだったのです。魚類全体の中で軟骨魚類は全体の3.5%で、そのほとんどがサメとエイです。ところで普通の魚は、ヒレにも硬い骨がありますが、サメの尾ビレには背骨からつながる軟骨が一本通っているものの、全体の強度は繊維状のもので保っています。これが中華料理でおなじみのフカヒレです。私達がおいしいフカヒレ料理が食べられるのは、サメが軟骨魚類というミョーな魚だったおかげなのです。

所さんのポイント
こわ〜いサメも意外と中身は軟弱だった!

 まだまだ驚くサメの生態。昔、狂暴なホウジロザメが上がり、そのサメを解体したところ、それはそれは大きな肝臓が出てきたのです。ホウジロザメに限らず、サメは大きな肝臓を持っているのです。例えば体重16kgの小さなサメでも、その肝臓の重さはなんと4kg。実に体重の4分の1は肝臓なのです。でもなぜサメはこんな大きな肝臓を持つ必要があったのでしょう?そこでこんな実験。サメの骨と肉を用意して海水の中に入れると当然のように沈んでいきます。しかし今度は巨大な肝臓を入れると、なんとプカプカ浮くではありませんか。サメの肝臓には油がギッシリと詰まっています。これには訳がありました。実はサメには浮き袋がありません。サメが地球上に現れた、およそ4億年前にはまだ魚類の浮き袋は発達していなかったようです。そこで、この巨大な肝臓の油で浮力を得て浮いていたのでした。そしてこの肝臓の油こそが、あの懐かしい肝油なのです。サメにはこのように数多くのミョーなところがありますが、それはサメは古代から食物連鎖の頂点として君臨していたためにあまり進化せず、魚になりきれなかったためだと考えられています。

所さんのポイント
サメが浮いていられるのは脂肪肝のおかげだった!


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