知識の宝庫!目がテン!ライブラリー


スズムシ 鳴き声の謎
第748回 2004年9月12日


 秋になると美しい音色で鳴く虫の代表と言えばスズムシ。源氏物語にも登場し、その鳴き声は平安時代から日本人に愛されてきたのですが、実は平安時代に楽しまれていたスズムシの鳴き声と今の鳴き声は違うというのです。

 平安時代のスズムシの鳴き声を聞きたいという新キャラ佐藤式部(佐藤アナ)の願いを叶えるべく、矢野さんは日本で一番スズムシが養殖されているという兵庫県の養殖所に向かいました。そこで飼われているスズムシの数は、なんと100万匹!実はスズムシで鳴くのはオスだけメスを呼び寄せるために2枚のはねをこすり合わせて鳴いているのです。
 早速、矢野さんは電話でスズムシの鳴き声を佐藤式部に聴かせてみました。しかし電話の向こうの佐藤式部には、全くスズムシの鳴き声は聴こえなかったのです。これは、スズムシの鳴き声の周波数が高い(音が高い)から。通常、電話を通ることが出来る音の周波数帯は、人の声の高さが基準になっているので、およそ300ヘルツから3400ヘルツの間の音。一方、スズムシの鳴き声の周波数は、およそ4500ヘルツもあり、人間の声よりもかなり高いので電話では聴こえないんです。

所さんのポイント
ポイント1
スズムシの鳴き声は、人間の声よりも音が高く、電話では聴こえない!!

 スズムシはれっきとした昆虫なので、はねは全部で4枚あるはずなのに、成虫になったスズムシの背中を見ても、音を出すための2枚のはねしか見当たりません。しかし、実はスズムシも幼い時には4枚のはねを持っているのです。
 成虫になった直後のスズムシを見ると、大きな音を出す2枚のはねの下に、後ろばねがちゃんと2枚ついていて、全部ではねが4枚あります。昆虫にとって後ろのはねとは、基本的に空を飛ぶためのもの。ということは、スズムシも空を飛べるのでしょうか?そこで、虫を飛ばす実験装置でスズムシを飛ばせようとしましたが、これが失敗。スズムシのうしろばねは、飛ぶことができないほど退化していたのです。
翅がとれた  さらに驚いたことに、成虫になって3日めのスズムシを観察していると、なんと自らうしろばねを取って捨ててしまったのです。実は、スズムシには成虫になると、オスもメスも自らうしろばねをとってしまう性質があります。オスは鳴くのに邪魔だから、メスは飛ぶための筋肉を卵巣の形成に当てるから、なんだそうです。

 ある資料に、スズムシの鳴き方には一人鳴きという鳴き方があり、これは通常の飼育下では聞くことが出来ないとありました。多くのスズムシが一緒に飼育されているときには、オスは競い合って鳴く競い鳴きという鳴き方になるというのです。つまり、スズムシの飼育が始まる前の平安時代では、この一人鳴きを聴いていたに違いない!
 ということは、野生のスズムシを見つければ、平安時代の鳴き声=一人鳴きを聴くことが出来るはず!しかし、野生のスズムシは、もはや幻と言ってもいいほど数が少なくなっているのです。現在では、野外でまれに鳴き声の聴こえるスズムシですら、飼っていたものを放した場合がほとんどだとか。
 しかし、矢野さんは奈良の若草山、そして兵庫県の赤穂へと決死のスズムシ探しを展開。苦闘18時間、スタッフ総動員の苦労の末、ついに一人鳴きをしている野生のスズムシを見つけることができました。その鳴き声は「リー、リー、リー」と、聴きなれている競い鳴きに比べて断続的なものでした。

所さんのポイント
ポイント2
数が非常に少ない野生のスズムシは、一人鳴きという、飼育されたスズムシの競い鳴きと違う鳴き方をするのだ!

江戸家小猫さん大勝利  メスを呼び寄せるためのオスの鳴き声が違うということは、メスに対するモテ方も違うのではないでしょうか。そこでスズムシのどの鳴き声がメスにもてるかを実際にメスに聴かせた実験の結果、メスを呼び寄せるための本来の鳴き方である一人鳴きの方が、競い鳴きよりモテることが判明。
 そこで、動物の鳴きまねでお馴染みの江戸家小猫さんに一人鳴きをマスターして頂き、本物の競い鳴きのスズムシと勝負したもらった結果、なんと一人鳴きしている小猫さんの方にメスのスズムシが寄ってきて、小猫さんの大勝利でした。



動物(地上)編へ
前週 次週
ページトップ

ジャンル別一覧 日付別一覧