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探せ本物の味 シメジ
第758回 2004年11月28日


 秋はキノコの季節。その中でもシメジは、「香りマツタケ味シメジ」と言われる様に、マツタケと並びキノコの代表格です。しかしこのシメジですが、私達の食べているシメジは本当のシメジではないというのです。
ブナシメジとホンシメジ  実は、普段私たちが食べているシメジは、ほとんどがブナシメジヒラタケというキノコ。このいずれもシメジ属にも属さないのです。昔から美味しいと言われている味シメジとは、シメジ属のホンシメジのことだったのです。しかもこのホンシメジ、現在ではほとんど市場にも出回らない幻のシメジなのです。
 そこで矢野さんが幻のホンシメジを求め、岩手県に向かいました。そしてキノコ狩り名人と一緒に、クマが出るという山で大捜索。長時間の命がけの捜索の後、奇跡的にホンシメジを発見したのです!

所さんのポイント
ポイント1
私たちが普段食べているシメジは、ブナシメジかヒラタケだった!
本当の味シメジは、ホンシメジ!


 しかしホンシメジはなぜ幻のキノコなのでしょう。キノコは大きく2つに分けられます。シイタケやエノキタケやブナシメジなどの腐朽菌という種類と、マツタケやトリュフやホンシメジなどが属する菌根菌という種類です。
 腐朽菌は、木から一方的に栄養を摂取し木を腐らせて育つ菌なので、死んだ木など栄養分を与えれば人工的に栽培することが可能です。しかし菌根菌は、生きた木と栄養をギブアンドテイクして共生関係のもと育つ菌なので、人工的な栽培がとても難しいのです。
 さらにホンシメジはアカマツやコナラの木に寄生するのですが、これらの木は貧困な土壌に育ちます。かつて林業が盛んだった頃にははげ山が多く、これらの木が育ちやすかったのですが、林業が振るわなくなった今では、はげ山もなく、山は豊かでこれらの木が育ちにくいのです。
 というわけで、栽培が困難なホンシメジの代わりに、栽培が簡単なブナシメジが広く普及したというわけなのです。

所さんのポイント
ポイント2
ホンシメジはマツタケやトリュフ同様、生きた木に付く菌根菌なので、人工栽培が難しいのだ!

 ホンシメジはどれ位美味しいのでしょう?キノコの王者マツタケや普段私たちが食べているブナシメジと味を比較してみました。するとホンシメジがマツタケやブナシメジに比べて、キノコの主なうまみ成分であるグルタミン酸やグアニル酸が圧倒的に多かったのです。またホンシメジは、食感も程良い堅さで弾力性も一番であることが判明しました。味シメジとは本当だったのです。

 しかし、私達がホンシメジを手に入れるのはかなり困難。そこで目がテンでは、ブナシメジをホンシメジに何とか近づける方法を考えました。
 そのヒントになったのは、干しシイタケ。実はシイタケは、干すことでうまみ成分グアニル酸が10倍近くも増えるのです。その理由は、乾燥させることで細胞の壁が壊れ、グアニル酸の素・核酸と、これをグアニル酸に変化させる酵素が結び付きやすくなるからなのです。さらにこれを水を加えて加熱すると、グアニル酸を分解しようとする酵素の働きも弱くなり、さらにグアニル酸が増えるんです。つまり、ブナシメジも干して水で戻して加熱すればいいはず。

乾燥前と乾燥後  そこで干しブナシメジを作り、生のブナシメジと比べてみると何と約2.5倍もグアニル酸が増えていたのです。大成功!
 さらに、干しブナシメジをホンシメジの味に近づけるためには、トレハロースという甘味調味料を加えます。このトレハロースは、細胞を強固にする働きのあるもの。そして、いよいよ干しブナシメジとトレハロースを使って究極のキノコ丼を作ってみたところ、所さんもビックリ。「ホンシメジより旨いかも」と大絶賛でした。


「干しブナシメジ」の作り方と「干しブナシメジ丼レシピ」はこちら




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