なぜ首振る?
ニワトリ
第763回 2005年1月9日
新年1回めの「目がテン!」は、
毎年恒例の今年の干支
シリーズ。今年は酉年ということでニワトリを科学します。今回の主役は矢野さん一家。昨年、卵の値段が急上昇してしまい、家計を圧迫された矢野さん一家が、なんと
家でニワトリを飼い、卵を産ませる計画
に乗り出したのです。
早速矢野家で、通常私達が口にする卵を産む
白色レグホン
という種類のニワトリをつがいで飼い始めました。そしてエサには、野菜の切れ端やお米、トウモロコシなどを与えることにしました。
しかし、早速問題が発生。それは、毎朝
オスのニワトリが朝も明けぬうちから大声で鳴き出す
のです。観察してみると、ニワトリは朝4時半に起きて、夕方4時半には寝る生活を送っていました。実はニワトリは、天敵などから身を守るため、
日の出の2時間前になると他の仲間たちに朝を知らせる習性がある
のです。
しかし、これにより矢野家は寝不足状態。そこで、なんとか
ニワトリを寝坊させようと、ニワトリに夜更かしをさせる作戦
を決行しました。夜の庭を昼間と同じ程度の明るさにして、寝ようとするオスのニワトリを、いつもより6時間も遅い夜10時半までむりやり夜更かしさせました。
すると次の日、ニワトリはいつもの起床時間の朝4時半になっても起きません。結局そのまま寝続けて、なんと朝8時40分に起床し鳴いたのです。夜更かし実験は大成功でした。
皆さんもご存知の通り、ニワトリは歩く時に首を前後に振って歩きますよね。この行動はハトなどの他の鳥でも見られます。しかし、矢野さんがニワトリを
自転車のかごに乗せ、ゆっくり走ったら
、なんとこれでもニワトリは首を振り始めたのです。
自分は全く歩いていないのに首を振る
、これは一体どういうことなのでしょう?
実はニワトリの目は、敵から身を守るために、左右の側面についていてかなり視野が広くなっています。つまり、
それぞれ片方の目で左右両側の景色を別々に見ている
のです。ヒトでいうとバスや電車の車窓から景色を眺めている状態。普通、
ヒトの場合、車窓の外に通り過ぎていく対象を見るときは、眼球を動かしてその対象を追います
。しかし
ニワトリは、目の構造上、眼球を動かすことが出来ないので、眼球を動かす代わりに首を動かして対象を追っていた
のです。
ということは、逆に周囲の風景が動かなければ、歩いていても首を振らないのでしょうか。そこで、
ニワトリ専用のルームランナー
を作って、その上を歩かせてみたところ、
見事ニワトリは歩いていても首を振りませんでした
。
ニワトリが首を振って歩くのは、動いている周りの景色を目で追うため。
周りの景色が動かなければ、歩いていても首を振らないのだ!
いつになっても矢野さんの家のニワトリは、肝心の卵を産みません。そこで佐藤アナが
養鶏場
を訪れてみると、実は
ニワトリに卵を産ませるには様々な工夫があった
のです。
まずエサには、野菜などの他に
カキの貝殻
を食べさせていました。その理由は、卵の殻の材料になるカルシウムを多く含んでいるから。実はニワトリは、
エサにカルシウムが足りなくなると、自分の骨髄骨のカルシウムを殻の材料に使って卵を産みます
。しかし骨の内部がスカスカになってしまうと、これ以上卵を産めなくなってしまうのです。
さらに養鶏場では、しっかり寒さよけのブラインドをして、夜になっても明かりをつけていました。実はニワトリは、
春や初夏の日照時間以上にしないと卵を産まない
のです。この養鶏場では16時間光を当てていました。
そこで矢野さん一家は養鶏場の工夫を踏まえて、エサにカルシウムたっぷりのカキ殻を追加し、風を防ぐビニールをはり、タイマー付きライトで夏のような環境を準備しました。結果、1週間後、ついに
ニワトリが卵を1個産んだのです
。その大切な1個をゆで卵にして、家族4人で仲良く分けて食べました。
ニワトリは本来、冬には卵を産まない!
産ませるには環境を初夏のようにしなくてはならないのだ!