なぜ飛べる
グライダー
第765回 2005年1月23日
ある日、お子さんを連れた矢野さんが、紙飛行機を作って飛ばしてみたところ、上手く飛ばなかったために父親の威厳を失ってしまうという事態に。そこで今回は、
紙飛行機と同じ原理で飛ぶグライダーを学べば、紙飛行機も上手く飛ばせるはず
、ということでグライダーの秘密に迫ります。
早速、父親の威厳を取り戻すべく矢野さんは飛行場に向かいました。しかし、肝心のグライダーは見当たりません。実はグライダーは、
普段分解して収納されてあり、組み立ててから乗る
のです。しかも、その機体はビックリするほど軽く、なんだか大きなプラモデルみたい。本当にこれで飛ぶのでしょうか?
そもそも、
グライダーはどうやって飛ばすのでしょう?
紙飛行機と原理が同じグライダーには、他の飛行機とは違い、
動力であるエンジンがついていません
。
実は
グライダーは、エンジンのついた軽飛行機とロープで結び引っ張りあげてもらう
か、もしくは
地上からワイヤーで引っ張って凧揚げの要領で宙に浮かしてもらう
のです。そして、
ある程度の高さまで来ると、その引っ張っていたロープを切り離す
のです。
さあ、いよいよ高所恐怖症の矢野さんがグライダーで初フライトに挑戦。軽飛行機に引っ張られ、グライダーが宙に浮きます。そして上空600メートルの高さで、ついにロープが切り離されました。
しかし、ロープが切り離された後、すぐに下降していくものと思いきや、普通に空を飛び続けています。その時速、なんと80キロ。なぜグライダーはエンジンも無いのに飛行を続けられるのでしょう?
そもそも飛行機が飛ぶ原理とは、
翼の上側と下側で空気の流れるスピードが変わるため、翼の上側と下側で圧力の差が生じ、翼を持ち上げる方向に揚力という力が働きます
。その揚力を利用して、飛行機は飛ぶことが出来るのです。
普通の飛行機の場合、
エンジンで機体を前に進め翼に風をあてることで、この揚力を発生させて浮き上がります
。一方、グライダーの場合は、
機体が前に下降していくときに翼に風があたり揚力が発生する
のです。つまりグライダーは、
少しずつ落ちていきながら前に飛んでいく
のです。これを
滑空
と言います。
翼を持たない動物のムササビが飛べるのは、グライダーと同じ原理を使って、高い木の枝から滑空しているのです。
グライダーは少しずつ落ちながら前に飛んでいる。
紙飛行機も上手く飛ばすには、少しずつ下降するように前方を重くした方が良いのだ!
実は、グライダーだけでなく
軽飛行機やジャンボ・ジェット機でも滑空することはできる
というのです。そこで、こんな実験。高所恐怖症の矢野さんに
軽飛行機に乗ってもらい、上空でエンジンを切る
という、まさに
命がけの実験
を決行しました。もし本当に、軽飛行機でも滑空が出来るのであれば成功するはずですが、万が一滑空できなければ矢野さんの命はありません。
さあ緊張の一瞬、矢野さん自らの手でエンジンを切ります。その瞬間、軽飛行機は急速に下降しながらも、前進しながら飛んでいました。滑空実験は大成功。
実は、
軽飛行機は1m下降する間に9m、ジャンボ・ジェット機なら15m滑空できるように設計されている
のです。
しかし、滑空専門の
グライダーは、1m落ちる間に30mから50m進むことができる
のです。何故グライダーは滑空が得意なのでしょうか?
その秘密は翼の大きさにありました。
グライダーは、軽飛行機やジャンボ・ジェット機に比べて、機体の重さに対する翼の面積が大きい
のです。グライダーは、大きな翼で沢山の風を捕まえられるから、揚力が大きくなり遠くまで滑空することができるのです。
これは鳥の場合でも同じで、大きな翼を持っているトビやカモメは滑空が得意で、翼が小さいスズメなどは滑空が苦手なのです。
グライダーは翼が大きいので揚力も大きくなり、遠くまで滑空できる。つまり紙飛行機の翼も大きい方が良いのだ!
さあ、グライダーから紙飛行機作りのヒントを学んだ矢野さん。そのヒントをもとに、巨大な紙飛行機を作りました。そして公園のなるべく高いところから巨大紙飛行機を飛ばしてみると、なんと
飛行距離44m23cm
の大記録。無事、父親の威厳を取り戻すことに成功しました。
よく飛ぶ紙飛行機の折り方ダウンロード!
この回で紹介したよく飛ぶ紙飛行機の折り方がこちらからダウンロードできます。
【紙飛行機の折り方ダウンロード】
(PDFファイル/1.68MB)
PDFファイルをご覧いただくためには、アドビ社のAdobe® Reader ® が必要です。
Adobe Readerのダウンロードはこちら