再び注目!
石炭
の科学
第770回 2005年2月27日
昔の燃料というイメージの石炭。しかし最近になって、また石炭が注目を浴びているといいます。それは、
石炭は石油よりも埋蔵量が多く世界中にまんべんなく分布している
から。実は、
日本国内での使用量も、30年前から毎年伸び続けている
のです。
そもそも石炭とは、一体どういう物なのでしょう?実は、
石炭とは大昔の植物が変化してできた物
だというのです。
石炭ができたのは、主に約3億5千万年の
石炭紀
と呼ばれる時代。水辺で枯れた植物や流木が水の底にたまり、水の中だとそのまま腐らずに残ります。その上に徐々に土が積み重なり長い間地熱で温められると、植物の中には炭素が残りそれ以外の成分は抜けて、石炭が出来上がるのです。
石炭が作られるには、高い圧力と高温、そして長い時間が必要
なのです。
しかし、
短時間で人工的に石炭が出来る特別な機械
を矢野左衛門が発見しました。これに木の枝、落花生、ニンジンなどの身近な植物を入れ、500kgの圧力と250度の熱を20時間加えました。すると、35gの材料から12gの石炭がちゃんと出来たのです!
石炭は、植物に高温と高い圧力を長時間かけて、自然が作り出した化石燃料だった!
石炭がにわかに注目を浴びるようになったのが、
製鉄
が盛んになった時代。
元々は木炭が使われていた
のですが、鉄の需要が増えてくると木が足りなくなって木炭が不足。そこで代わりに石炭が使われるようになったのです。
そもそも鉄とは、原料の
鉄鉱石
に含まれている酸化鉄から作られます。これを木炭と一緒に燃やすと、
木炭の炭素が酸化鉄から酸素を奪い、後に純粋な鉄が残る
というわけなのです。
しかし木炭の代わりに登場した石炭ですが、実は
石炭そのままでは、鉄は作れなかった
のです。それは
石炭を燃やして作った鉄には、石炭から出たイオウが混ざってしまう
から。不純物が混ざった鉄は、加工できないほどもろくなってしまうのです。
そこで製鉄には、
石炭を一度1200度の高温で蒸し焼きにして、石炭の中の炭素以外の不純物を揮発させた
ものを使用します。これを
コークス
と言います。コークスの成分はほぼ炭素と灰分だけなので、燃やしても煙が出ないのです。
つまり
石炭から不純物を取り除いたコークスを使えば、鉄に余計な成分が混ざることなく純粋な鉄を作り出すことが出来る
というわけなのです。
石炭を蒸し焼きにして不純物を取ったのがコークス。製鉄には不可欠なのだ!
埋蔵量も多く、手に入れやすい石炭。しかし
石炭を燃やす際には大きな問題が2つあります
。まず1つは
「煙」
の問題。
石炭を燃やすと、石炭に含まれる硫黄酸化物や窒素酸化物が大気中に放出され、酸性雨の原因になる
のです。
確かに、石炭は他の化石燃料に比べて大気汚染の原因になる物質が多いことがわかっています。しかし最近では、研究が進み、例えば窒素酸化物はアンモニアと反応させ窒素と水に分解するなど、
有害物質の90%以上を取り除くことが出来る
ようになっています。特に
日本では、火力発電所の排気などで、現在、排気中の有害物質の少なさに関しては、世界でもトップクラス
なのです。
石炭を燃やす際の大きな問題のもう1つは、
「灰」
の問題です。なんと石炭を燃やすと、
石炭の重さの約1割も灰が出てしまう
のです。
しかし最近では、そんな石炭灰を使って、環境に役立つ
人工ゼオライト
というものを作る研究も進められています。人工ゼオライトは、表面に細かい穴を無数に持つ
多孔質
という構造で、この細かい穴で
色々なものを吸収する特徴
があります。なんと、その威力は
オレンジジュースを透明にしてしまう
程なのです。
これを使い、水や空気の浄化が出来ないか、現在研究が進められています。
さらに石炭灰は、他にもビルの建材(コンクリート)などにも利用されていたりと、有効に活用する研究が現在も進められているのです。