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なぜ必要? クビ の科学
第769回 2005年2月20日


 冬真っ盛り、首筋が寒くなりマフラーも必要な季節です。そこで!・・・というわけではないのですが、今回はクビがテーマ。実はクビは、人間の進化にも関わっていた重要なものだったのです。

 私達のクビには、長かったり短かったり、太かったり細かったりと様々なものがありますよね。一体、この違いはどこにあるのでしょう?
 そこで芸能界一クビの無い男(?)、お笑いトリオ・安田大サーカスのHIROさんと佐藤アナのクビをレントゲンで見てみました。そもそもクビの骨とは、頭蓋骨の下の部分から、肋骨とつながっている胸の骨までの間のことで、頚椎(けいつい)と言います。
クビの骨7個  レントゲン写真でクビの骨の数を数えてみると、佐藤アナの骨の数は7個。一方、HIROさんの骨の数は、やはり同じく7個ありました。さらに、首長族として知られるカレン族の女性のクビの骨の数を数えてみると、やはり同じ7個でした。首長族の女性のクビが長く見えるのは、クビが長くなっているわけではなく、肩がうんと下がっているからだったのです。
 実は、ヒトのクビの骨の数は、生まれる前から7個受精してわずか2週間後には形成されるのだそうです。

 では、動物ではどうなのでしょう?クビといえば、クビがとても長いキリン。実は、あれほど長いキリンのクビも、骨の数は7個なのです。一方、クビが短かそうなゾウも骨の数は7個。イヌもウサギも7個で、ほとんどのほ乳類のクビの骨の数は7個なのです
 ちなみに鳥類は10個以上と多く、は虫類はカメが8個でヘビは2個、両生類は1個で、魚類にはクビの骨がありません。実は、動物が水中から陸上に生活の場を移したことで、頭を動かして周りを見たりエサを食べたりする必要が出てきたため、進化の過程でクビが誕生したと言われているのです。

所さんのポイント
ポイント1
ヒトのクビの骨はすべて7個。ほ乳類もその大半が7個だった!

 クビが使えなくなると、ヒトは一体どうなってしまうのでしょう?そこで、佐藤アナにクビの動きを固定する器具を装着してもらい、クビ固定生活を送ってもらいました
 するとクビの代わりに目を動かさないといけないので、すごく目が疲れ、振り向くのもひと苦労で、体ごと振り返らなければならず、さらに歩く時には体の動きに合わせて頭も左右に動き目線が定まらず、すっかり気持ち悪くなってしまいました。
 さらにクビが固定されるとバランスがとりづらいのです。足元が傾きバランス力を測る機械に乗ってみると、クビを固定しないと30秒もつのに対し、クビを固定すると程なく倒れてしまったのです。所さんもスタジオで挑戦しましたが、30秒もちませんでした。なぜでしょう?その理由は、クビが自由に動く場合、体が傾いてもクビで角度を調節し、頭を地面に対して垂直に保つことができます。でもクビを固定した場合は、体が揺れた分だけ頭も大きく傾いてしまいます。すると、耳の奥にあるバランス感覚をつかさどる三半規管という器官が、安定しないので体のバランスが保ちにくくなるというわけなのです。

所さんのポイント
ポイント2
クビが固定されると、生活にいろんな支障が出てくる!
体のバランスをとるのにもクビは必要なのだ!


 そして男性のクビで気になる特徴といえば喉仏。喉仏とは、クビの骨とは別に存在する軟骨で、声を出す役割の声帯を支える役割をしているのです。ちなみに、女性にもちゃんと喉仏はあり、女性は声帯が小さいために喉仏も小さく、目立たないだけなのです。
 また動物にも喉仏はあります。しかし、ヒトに近いチンパンジーの喉仏は、ヒトよりもかなり上にあり、頭の中にあるのです。実は、ヒトが話せる理由は、この喉仏と声帯の位置に関係があったのです。
声帯・喉仏  ヒトは喉仏と声帯がクビにあるため、声帯で出した声をクビと口の広い空間を使って様々に変化させることができます。だから複雑な発音ができ、しゃべることができるのです。一方チンパンジーは、喉仏と声帯が頭の中にあるため、声を変化させるための空間が狭く、単純な発音しか出来ないのです。
 ヒトは進化し、二足歩行をするようになった時、喉仏と声帯が段々とクビの方へと下がっていき、話せる様になったのです。またヒトは今でも、赤ちゃんの時は、喉仏と声帯は頭の中にあり、段々と歩けるようになるにつれて、徐々にクビのほうへ下がっていき、話せる様になるのです。



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