冬こそ季節
日本酒
の謎
第768回 2005年2月13日
冬は日本酒の季節
。昔から
「寒造り」
と言われ、寒い季節に手間をかけて仕込んだ日本酒は美味しいと言われています。また冬は、昔から伝わる日本酒の飲み方
「お燗」
が、とても美味しい季節でもあるのです。
日本酒は、主に
米
と
水
と2種類の微生物
麹菌
と
酵母
から造られます。まず、タンクの中に蒸した米と水を入れ、さらに麹菌を繁殖させた
こうじ
と言われるものと酵母を入れて造られます。するとタンクの中で、
こうじが米のデンプンを糖に変える糖化作用
が起こり、さらに
その糖を酵母がアルコールに変えるアルコール発酵
が起こって、お酒が造られます。この糖化作用とアルコール発酵が同じタンクの中で行われることを
並行複発酵
と言い、
日本酒独特の造り方
なのです。
また
日本酒は、その多くが冬に作られ
、更には暖かい地方ではあまり造られません。なぜなのでしょう?
実は、高い温度だと酵母の働きが活発になりすぎて、タンクの中のアルコール度数が急激に上がってしまいます。すると、
酵母は自分が作り出した高濃度のアルコールで死んでしまう
のです。よって、低温で酵母の働きを抑え、少しずつアルコール度数を上げていかないと、最後まで米をアルコールに変えることができないのです。
このように日本酒は、
並行複発酵をゆっくり低温で行う
ので、様々なうま味成分を残しつつ、
醸造酒としては世界一高い約20%のアルコール濃度
になるのです。
最近は、日本酒を「冷や」で飲む人が増えています。しかし
江戸時代には「お燗」で飲むのが主流だった
そうなのです。時代劇などでもそうですよね。なぜなのでしょう?
そこで20歳以上の大学生20人に集まってもらい、
同じ日本酒を「冷や」と「お燗」(人肌燗)で飲み比べ
をしてもらいました。すると、
お燗したお酒の方が甘く感じる
という人が18人に上りました。しかし「冷や」と「お燗」では、温度が違っても同じお酒なので成分は変わっていなかったのです。一体どういうことなのでしょう?
その理由は、日本酒の甘みの成分であるブドウ糖と人間の舌に秘密がありました。実は、
ヒトの舌は30度〜40度の温度帯が一番ブドウ糖の甘みを感じやすい
のです。また、日本酒に多く含まれている
グルタミン酸などの旨み成分も、温かい温度の方が感じやすい
のでした。
昔の人がお燗をしていたのは、日本酒がより美味しく飲めたのも理由だったのかもしれません
。ちなみに近年、日本酒造りの技術も進歩して、
冷した方が美味しく飲める吟醸酒
というタイプの日本酒も登場してきています。
一般的に、日本酒はお燗した方が、甘みと旨みがより感じられるようになる!
よく
「冷や酒は後で効く」
と言いますよね。果たして本当なのでしょうか?そこで、「お燗」と「冷や」の酔い方の違いを調べるために、2人2組に分け、300ccのお酒を10回に分け3分おきに、それぞれ「お燗」と「冷や」を飲んでもらいました。
すると燗酒チームが実験終了前に酔い始め、実験終了後10分くらい経つと、今度は冷や酒チームが酔い始め、一方、燗酒チームは回復し始めているという結果になりました。やはり、わずかな時間ではありますが
燗酒の方が早く酔いがまわり、冷や酒の方が遅れて酔いがまわってきた
のです。
その理由は、
燗酒の場合はお酒の温度と体温が近いので、飲むとすぐに胃腸からアルコールが吸収されていくから
。しかし
冷や酒の場合は、冷たいので胃の血行が悪くなり、燗酒よりアルコール吸収速度が遅くなってしまう
のです。
冷や酒は、燗酒よりも遅れて酔いが回ってくる!
その間についつい飲み過ぎてしまうので、要注意!